【インタビュー】市光工業 BeamAtic Premium…LED化でADBの普及を加速

自動車 ビジネス
市光工業 研究開発部 部長 オリビエ・バルトムフ氏
市光工業 研究開発部 部長 オリビエ・バルトムフ氏 全 5 枚 拡大写真

夜間の運転においてハイビームにしても対向車や先行車を眩惑させないヘッドライトの研究開発が進んでいる。

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欧州ではフォルクスワーゲンがパサートなどにADB(Adaptive Driving Beam)システムを搭載している。法的な規制の問題もあり日本ではまだ普及していないが、法改正を見据えてADBの開発をしているメーカーもある。

そのひとつが市光工業だ。同社は2000年からフランスのValeoと資本提携関係を構築、グローバルな事業展開をしているが、市光工業が取り扱っているADBシステム『BeamAtic Premium』は、Valeo社が開発し欧州で実用化しているものだ。

市光工業 研究開発部 部長 オリビエ・バルトムフ氏に、BeamAtic Premiumの特徴や今後の展望について聞いた。

---:さっそくですが、まずADBシステムについて簡単に説明していただけますか。

バルトムフ氏(以下敬称略):まず、歩行者が被害にあう自動車事故について、夜間のほうがより危険であることに異論はないと思います。さまざまな統計でも、夜間、悪天候、冬場などといった条件で歩行者事故の発生率が上がっていることを示されます。その対策として、ヘッドライトを明るくしたり、より遠くまで、より広範囲に光をあてることは効果的です。通常であればハイビームにするだけで歩道の歩行者などの視認性があがりますが、対向車や先行車を眩惑させてしまうという問題があります。

バルトムフ:ADBは、車に搭載したカメラの映像を分析し、対向車や先行車を眩惑しないようにハイビームの配光パターンを動的に調整するシステムです。

---:具体的にはどのようにして配光パターンを調整するのですか。

バルトムフ:通常のヘッドライトの配光パターンは対向車線をあまり明るくしないように、リフレクターやランプカバーなどでカットオフラインというものを作ります。さらに左右のパターンの組合せで、全体の配光パターンの形状を決めます。BeamAtic Premiumでは、プロジェクター部分が左右に動く機構を持ったHIDヘッドライトユニットを利用して、照射方向を制御できるようにしています。しかしこれだけでは、十分な配光パターンの制御ができないので、プロジェクターユニット内部の光源ランプの前に可動式のシェード(遮蔽板)を設置し、カットオフラインの形状の切り替えを可能にしています。

バルトムフ:そしてフロンガラス内側などに取り付けられたカメラの映像を画像処理することで、対向車や先行車の状況、路面の状態や先行車や対向車のある部分だけ光が届かないような配光パターンを作るようにライトの向きやシェードを制御します。

---:ライトの向きと遮蔽板の形で配光パターンを切り替えるというわけですね。

バルトムフ:はい。しかし、対向車の状況や周辺状況を適切に判断して、適切なパターンに切り替える制御は簡単ではありません。ヘッドライトやテールランプ以外の明かりを識別しなければなりませんし、近づいてくる対向車や追走する先行車との距離も判断しなければなりません。また、センターラインを識別し、カーブの状況や、道の勾配も判断しないと、眩惑させないハイビームパターンは作れません。この制御については、すでに実用化され、実車に採用されているBeamAtic Premiumの技術に先行の利があると思います。

---:ヘッドライトはHIDを利用するとのことですが、LEDヘッドライトでもADBシステムは可能ですか。

バルトムフ:可能です。ただ、HIDに比べるとLEDは光源の明るさ(ルーメン)が異なるので、まずはHIDで実用化しました。HIDはおよそ3200ルーメンあり、配光パターンを制御しても照射面の明るさ(ルクス)を確保できますが、LEDは700ルーメンほどなので、少し明るさが足りません。

バルトムフ:ただ日産『リーフ』のヘッドライトに採用されたユニットのように、LEDは光源のマルチチップ化によって明るさの問題を克服できます。また、LEDはマルチチップでもHIDより消費電力が少なく温度も低くなります。ADBのように機構部分がランプユニット内部に搭載されるシステムでは、LEDのほうが理想的な光源といえます。全体のコストダウンもLEDのほうが有利ですので、光源のLED化は必ず進んでいくと思います。

---:LED版のADBはいつごろ実用化できそうですか。

バルトムフ:具体的な商品計画はまだお伝えできませんが、2014年までには十分実用化できると思っています。さきほど述べたように、LEDならローコストなADBユニットを開発できるので、高級車や大型車だけでなく、ミドルクラスの乗用車にも採用が進むのではないかと考えています。

---:ADBについて、LED化以外の取り組みはありますか。

バルトムフ:カメラの画像解析を高度にし、対向車や先行車の検知精度を上げたり、パターン認識ソフトウェアの改良など、現状システムの延長上にある進化はさらに進めております。現在は光源の向きとシェードの形状で配光パターンを切り替えていますが、将来的にはもっと細かく、ピクセル単位で任意の形状がプログラミングできるようなシステムも考えています。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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