【インタビュー】ケーシー・ストーナー&ダニ・ペドロサ/中本修平レプソル・ホンダチーム総監督

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レプソル・ホンダ ケーシー・ストーナー選手
レプソル・ホンダ ケーシー・ストーナー選手 全 12 枚 拡大写真

4月から始まるMotoGPの2012年シーズンに向け、マレーシアのセパンサーキットで2012年の初の公式テストを終えたばかりのレプソル・ホンダチーム、ケーシー・ストーナー選手と、ダニ・ペドロサ選手が2月3日に来日した。

今年から排気量が1000ccに拡大された『RC213V』の感触と、今後の展望を語った。さらに中本修平チーム総監督が、現状を総括した。

2011年はホンダにとって5年ぶりのMotoGPチャンピオンを獲得したディフェンディングチャンピオンのストーナー選手は、テスト期間中に腰の肉離れを起こしたにも関わらず、セパンサーキットのベストラップを更新するスピードを発揮、今回のテストのトップタイムをマークした。ペドロサ選手も3番手のタイムを記録している。

---:1000ccとなったニューマシンの感触は。

ダニ・ペドロサ(以下ペドロサ):昨年までの800ccマシンからパワーが向上したので、ブレーキングやコーナーリングのフィーリングが違います。とくにブレーキングは少々ヘビーになったと感じます。

ケーシー・ストーナー(以下ストーナー):ダニの言う通りブレーキングはヘビーで、800ccより難しくなっています。加速力もアップして、トラクションフィーリングも異なります。こういった点で身体的な負担が増えているので、フィジカルトレーニングの強化を考えています。

---:昨年からテストを開始しています。進捗状況はいかがですか。

ペドロサ:昨年はもっぱら基本的な機能のテストで、現在はパワーの引き出しやフィーリングの向上を目的にしたファインチューニングの段階です。

ストーナー:昨年はレースをしながらのテストもあって大変でした。今は方向性を探っています。

---:チームで1位と3位のタイムを記録し、まずは良好な結果を残しましたが、テストを終えての手応えは。

ペドロサ:悪くないですね。とは言え、ライバルも仕上がって来ているので、さらに仕上げて行く必要があると思います。

ストーナー:フィーリングは良いです。車体もアップデートされ、正しい方向に向かっていると思います。最終的にニューマシンはもっと仕上がっていくはずです。

---:ブリヂストンが今年から新しいタイプのタイヤを投入しました。昨年まで問題になっていたウォームアップの遅さは解決しているのでしょうか。

ペドロサ:その点は改善されています。しかし、ニュータイヤにはまだ問題が残っています。

ストーナー:タイヤが早く温まるように改善された点は、大きなポイントです。現状の課題はハンドリングの向上にありますが、1000ccマシンとニュータイヤの組み合わせに問題があるように思えます。

---:マシンに対してのリクエストはどんなものでしょう。

ペドロサ:コーナー進入と立ち上がりで起きるチャタリングを解消したい。

ストーナー:とくにエンジンブレーキ時にチャタリングが発生します。ニュータイヤと旧い車体との組み合わせでは、それほど発生しないので、色々とバランスを上げて行く必要があるでしょう。また、マシンからのフィードバックが得にくい点も指摘しました。

---:ストーナー選手はトップタイムを記録したが、テストした2種類の車体ではどちらが好みだったのでしょうか。

ストーナー:トップタイムは、チャタリングの起きやすい車体でマークしています。そちらの方が、全体的に好みのフィーリングだからです。

---:気になるライバルの仕上がりをどう見ていますか。

ペドロサ:ヤマハのベン・スピースの仕上がりが良いようです。あちらも色々と大変そうではありますが。ドカティのヴァレンティーノ・ロッシ(トップから1秒2遅れの5番手)は、まだ改良の最中。開幕戦までには何とかして来るとは思います。

ストーナー:昨年のライバル、ヤマハのホルヘ・ロレンツォはシーズン中の怪我が響いてテストで出遅れていますが、マシンは強力なので油断はできません。ロッシに何が起きているのかは、よく分かりませんね。昨年同様に問題を抱えていそうにも思え、もう少し時間がかかるような気がします。

中本修平チーム総監督(HRC副社長)

---:今回の結果と手応えは。

中本中本修平チーム総監督(以下敬称略):昨年と比べるとニューマシンである分、仕上がりはまだまだです。昨年のこの時期には“勝てる”と確信していたのですが、今年はそこまでには至っていません。

中本:ライダーが指摘したように、現状ではチャタリングが問題です。タイムが上がると発生しますからね。おそらくはタイヤの構造上の問題でしょう。色々と対応はしたものの未だ一進一退の状況ですが、今後の方向性は抽出できたと思っています。

---:それでも、ストーナー選手は唯ひとり、2分を切ってトップとなりました。

中本:彼が1日目から2分を切ったのは大した事ではないのです(最速タイムは1分59秒607)。一発のタイムは問題ないけれども、実際のレースタイムではまだ不安の残る状況です。もっとも、今回は肉離れによって切り返しの動作等は、明らかにスローモーで完全には乗れていませんでした。

---:現状でライバルをどう見ますか。

中本:ヤマハは速い。2分00秒台を連発しているようにコンスタントなスピードを実現しています。ドカティはコーナーの進入などは良好なようですが、立ち上がりのアンダーステアが解決できていないようです。ヤマハ勢にもチャタリングが発生していていましたが、ドカティではあまり見受けられませんでした。

---:排気量が拡大して、燃費の問題も注目されています。

中本:その点に関してはまったく問題はありません。要は21L分の“エネルギー”、きっちり使えるエンジンにすれば良いのです。今までのレーシングエンジンとはアプローチが違い、高回転・高出力は狙っていません。1000ccの方が総じて低回転レンジを使うので、同タイムなら昨年までの800ccよりも、今回の1000ccの方が燃費は良くなっています。

《関谷守正》

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