【池原照雄の単眼複眼】動と静で発進したFRスポーツ

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トヨタ86発表会に登場した豊田社長。「スポーツの世界は絶対に無くならない」とアピール。
トヨタ86発表会に登場した豊田社長。「スポーツの世界は絶対に無くならない」とアピール。 全 12 枚 拡大写真

◆スポーツカーがもつ潜在力

先週は奇しくもスポーツカーウィークとなった。トヨタ自動車が『86(ハチロク)』を、富士重工業(スバル)は『BRZ』をそれぞれ発表し、ホンダは『NSXコンセプト』を国内で初公開した。『レスポンス』でも関連のニュースが多数報じられているが、どれもツイートの件数が飛躍的に多く、読者の方々の隠れた関心を呼び起こすスポーツカーの潜在力に驚かされる。「クルマを面白くしたい」という各社にとっても、手応え十分の発進となった。

千葉市の幕張メッセ・イベントホールで開いたトヨタの発表会は、近年の同社の新車披露では類を見ないほど派手で、コストもかけたなと思われるものだった。SNSで募集した一般の参加者86人も招待してのパーティ形式で進行し、会場横の屋外特設会場では、プロレーサーのドリフト走行に同乗するイベントも行われた。

セールスプロモートも、これでもかと徹底してさまざまな新機軸を展開する。86は全トヨタ販売店の扱いとなるが、全国283店内に「AREA 86」というコーナーを設け、計500人余りの専門スタッフが対応する。「スポーツカー好きの大人のたまり場」をコンセプトに、関連情報の提供なども行う場としていく。

◆豊田社長の危機感の裏返し

さらに、86でのドライブが楽しめる全国の峠を認定・紹介するイベントや異業種との提携によるオリジナルグッズの開発・販売、オーナー交流サイトの開設などを展開する。トヨタの関連会社による「TRD」および「モデリスタ」ブランドのパーツも当初から充実した品揃えとなる。

トヨタがこれほど、徹底して楽しんでもらう仕組みづくりを行うのは、「若者のクルマ離れ」という現象に対し、「離れて行ったのは、われわれ自動車メーカー側」と認識する豊田章男社長の危機感の裏返しでもある。昨年10月から展開している企業広告キャンペーン「FUN TO DRIVE, AGAIN.」を体現してもらうに、86は象徴的で最適なモデルという事情もある。

「動」のトヨタに対し、兄弟車BRZを投入する富士重工は、「静」で動き出した。きょう8日から放映するTVコマーシャルには、女優の黒木メイサを起用し「きょうは、どの道で笑う?」をメッセージに、淡々と運転する楽しさを訴えていく。

◆単独ではつかめなかったチャンスを……

富士重工の吉永泰之社長は、「スポーツカーで女性の起用は意外でしょう。反響をとても楽しみにしている」と、意表を突く作戦にニンマリだ。ただ、メディア向けの発表は、地味過ぎるほど地味だった。第3四半期決算の発表会場に、ポツンとBRZが1台置かれ、決算の公表後に開発責任者の増田年男・スバル商品企画本部副本部長が商品説明した。

国内での月間販売計画が450台のクルマなので、身の丈にあった発表と見れば、これはこれで好感がもてる。BRZが話題となると、吉永社長は必ず「トヨタさんとのアライアンスがあって、初めて実現するクルマ」と、言及する。

86も含め、グローバル向けに年7万台規模が見込める生産は同社が担当するだけに、事業上のメリットもある。ただ収益のことより、単独ではできなかったスポーツカー投入というこのチャンスを、「まずは『クルマは楽しい』を、広めることにつなげたい」(吉永社長)と強調する。アプローチは違っても、トヨタとベクトルは一致しており、「動」と「静」は、むしろ相乗効果をもたらすのだろう。

《池原照雄》

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