【特集 クルマと震災 2012】仙台塩釜港のモータープールに新型車

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仙台塩釜港(仙台新港)(2012年2月)
仙台塩釜港(仙台新港)(2012年2月) 全 24 枚 拡大写真

仙台駅から東へ約15km。仙台塩釜港には、自動車各メーカーのモータープールが存在する。日本最大級の大型カーフェリー3隻を持つ太平洋フェリーは、この仙台塩釜港のほか、北海道苫小牧、愛知県名古屋に拠点を持つ。

津波により、仙台港のモータープールにあった多くの新車が流された。2011年5月の取材時、仙台港のモータープールには、大量の被災車両がガソリン車とハイブリッド車に分別され、保管されていた。

何もかも流された

車両輸送の拠点となる太平洋フェリー仙台港営業所の外壁には、同事業所を襲った津波の高さが記録されている。鈴木孝朗所長によると、津波の高さは約7mに達し、事業所の1階部分は全滅。2階に避難しても足元を濡らさずにはいられなかったという。「机から何から全部流されました。窓も全部壊れました」。

鈴木所長は当時の状況を記録した資料を振り返ってくれた。地震発生は3月11日の14時46分。仙台事業所に津波が到達したのは15時30分頃だという。津波到達前の15時頃、停泊していた船を沖へ出した。津波により船が陸へ上がるのを防ぐためだ。15時15分くらいまでにはこの作業が終了し、事業所の2階に避難した。

「船は沖に出しましたが、8000tくらいある船が陸に上がったりしました。仙台塩釜港周辺でも数多くの小さな船が陸に上がってしまいましたからね。船が陸に上がると使い物になりません。津波の影響で陸に上がる船、倒れる船など多くありましたね」と振り返る。

事業所近くに並べられたコンテナもひとつ残らず津波に流された。「新車のモータープールもありますけど、クルマは2、3ひっかかって全部流されましたね。本当になにもかも流されました」。

岸壁の復旧作業は、2013〜14年まで続く

復旧に向けては宮城県と協力しながら、自社でもシステム復旧、海底に沈んだコンテナの引き上げなどに取り組んだ。船が港に入れるようになり、営業を再開したのが2011年4月末。ただ、その時点では電気が来ていなかったため、海底状況を確認するレーダーなどが使用できず、海底の安全状態は目視に頼らざるを得なかったという。電気が開通したのは6月に入ってからだった。

震災により事業環境は大きく変化した。フェリーを使用する一般客は「だいぶ減りました。震災前に比べて2〜3割減っていますね。だんだん戻ってはいますが。貨物も近辺の工場が被災したため減りました」。いまだインフラ面の補修は続いている。「今も岸壁が40数cm下がっていまして、その復旧作業がこれから1年半はかかるという計画みたいです」。

モータープールには『プリウスc』も

震災直後は被災車両が並んでいたモータープール。今では新車が輸送を待つ。『プリウスc』(日本名:『アクア』)も鮮やかに並ぶ。港周辺の工場には津波の爪痕が色濃く残るが、自動車メーカー各社の新型車がモータープールで輸送を待つ姿に、確かな光を見た。

《土屋篤司》

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