【プリウスPHV 3か月検証】 市街地走行で約1時間、EVモード20kmは適当か?

エコカー EV
出発時、満充電での走行可能距離は18.7kmを示す
出発時、満充電での走行可能距離は18.7kmを示す 全 12 枚 拡大写真

トヨタ自動車が2012年1月末に発売したプラグインハイブリッドカー『プリウスPHV』。1回の充電で24.4~26.4km、エンジンを使わずにEV走行することが可能(JC08モード走行時)だ。バッテリー残量が少なくなり、ハイブリッドモードに切り替わってからも、JC08モードでリッター30.8~31.6kmという好燃費で走ることができる。

EVとハイブリッドカーの両方の特性を兼ね備えたプリウスPHV。ここでとある興味が湧いてくる。バッテリー航続距離内で使う場合、プラグインハイブリッドカーはEVと同じか? また、バッテリー航続距離よりハイブリッド走行距離のほうがはるかに長いロングドライブ時のプラグインハイブリッドカーは普通のハイブリッドカーと同じか? という疑問だ。プリウスPHVに実際に乗る本サイトの三浦和也編集長、およびフリーVTRカメラマン山崎さんのこれまでの使用感から、その実態に迫ってみた。

●バッテリー航続距離内で使用すると、プラグインハイブリッドカーはEVと同じか?

まずは「バッテリー航続距離内で使う場合、プラグインハイブリッドカーはEVと同じか?」という疑問から。三浦は普段はクルマを自宅周辺での買い物や送迎に使用し、時々ロングドライブをこなすという運転パターン。

「近所でクルマを使う時は、ほとんどEV走行だけで事足ります。その環境下では、明らかにEVと同じだと感じる。ほとんど近場しか走らない妻と子供は、プリウスPHVのことを“電気自動車”と呼んでいます。プリウスPHVに乗りかえてから妻自身は一度も給油をしておらず、また燃料計もほとんど減らないため、そういう感覚になるんだと思います」

三浦自身もEVモード走行時はハイブリッドの時とは運転パターンに違いが出てきたという。

「ハイブリッドモードのときはECOモードを利用して努めておとなしく走りますが、EVモードのときにはもっぱらパワーモードです。電気走行はガソリン走行よりも1kmあたりのコストがずっと安く、距離も短ければ省電力走行の節約分はわずか。となれば、せっかくならば静かでかつ鋭い加速という、EVの側面が持つ魅力を味わいたいと思うようになりましてね」

山崎さんは片道約40kmの通勤、自宅近所での買い物や送迎、子供の野球の遠征のために月数回のロングドライブと、三浦と比べるとロングドライブ寄りの使用パターン。

「私も近場はEVと変わらないと思いますよ。プリウスPHVを買う前に、三菱『i-MiEV』と日産『リーフ』とEV2台にも試乗したのですが、フィーリングは変わらないと思います。ただ、近所のドライブでも送り迎えに買い物に…と走り回るときにはEV航続距離を逸脱してしまうし、充電も間に合わない。電費の悪かった春先など、EV走行距離がもう少し長いといいのになと感じたことはありました。ただ、その場合でもハイブリッドカーとして使えるので急速充電は必要とは思いません」

プリウスPHVの試作車を作り、公道テストを開始した07年当時、トヨタは10・15モード走行時のEV航続距離を約13kmと想定していた。もしそのスペックで出てきていたら、EV走行の満足度はかなり低かったものと考えられる。

その後、バッテリーコストの低下や性能向上が進み、09年末のリース開始時にはJC08モード走行時で23kmに、現在の市販車では欧州のCO2排出量カウントでEV認定を受ける50g/km以下を達成するためにEVレンジはさらに拡張され、同24.4~26.4kmになったという経緯がある。

●EVモードでの市街地走行は何kmでハイブリッドモードに切り替わるか

三浦がある実験を行なってみた。週末の夜、道が空いている時間帯に満充電からEVモードで何km走ってHVモードに切り替わるかという実走テストだ。出発時、満充電での走行可能距離は18.7kmを示していた。ここから多摩川沿いの平坦な道を河口側に向かって走ること21.6kmでEVモードからHVモードに切り替わった。信号のストップ&ゴーで電気エネルギーが回生し、16%ほど伸びた。今回の平均速度は交通量が少ないせいかやや速くて25km/h。外気はセ氏20度でエアコンOFF、オーディオON、ECOモードで走行した。

このような実験結果をふまえて、仮に平均車速20km/hの市街地を走行した場合、EV航続距離は約20kmというのが目安だろう。片道30分の往復で、1時間ドライブしてEV走行比率は100%になる計算だ。片道1時間の場合は帰りはHVモードとなり、2時間ドライブのEV走行比率は50%となる。ちなみに上記実験のHVモード(ECOモード)での復路は、平均速度28km/hで燃費は30.9km/リットルとなった。

ロングドライブの多いユーザーにとっては、20kmはいかにも短い数値に感じられるであろう半面、市街地走行主体のユーザーにとっては意外に長いレンジと言える。顧客満足度の観点からは、結果的に非常にいい線に落ち着いたとみることができるだろう。

ちなみに三菱が今年度中に発売予定のSUVプラグインハイブリッドカーは、大容量で急速充電可能なバッテリーパックを積み、EVレンジも50kmを想定しているとのことだが、価格もかなり高くなる模様。今後、各社からPHVが出揃ってくるにつれ、選択肢もより豊かになっていくことになろう。楽しみである。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. コメリの新洗車グッズ発売!ホースリール&ノズル、性能と価格に注目
  2. ランドローバーが『ベイビーディフェンダー』発売ってほんと? これが市販デザインだ!
  3. そのニオイ、原因はエバポレーター! 今すぐできる簡単DIY洗浄法とは?~Weeklyメンテナンス~
  4. ステランティス日本法人、「ジープ」「プジョー」など主要ブランド一斉値下げ[新聞ウォッチ]
  5. 軽オープンスポーツカー、2代目ダイハツ『コペン』が誕生!!
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
  2. “走る巨大バッテリー”の実力! BEV+家電は悪天候でも快適に遊べる組み合わせだった
  3. BYDが「軽EV」の日本導入を正式発表、2026年後半に
  4. EVシフトの大減速、COP消滅の危機…2024年を振り返りこの先を考える 【池田直渡の着眼大局】
  5. 住友ゴム、タイヤ製造に水素活用…年間1000トンのCO2削減へ
ランキングをもっと見る