【トヨタ プリウスPHV】クルマは家族の一員、メル友にもなる…青山尚暉

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エアコン作動前のEV走行距離は8.3㎞
エアコン作動前のEV走行距離は8.3㎞ 全 14 枚 拡大写真
プリウスPHVを数日間、日常的に使った。わが家は東京郊外の一軒家で、200Vの充電設備を“屋根なしの駐車場”に設置済みだ。

今回のリポートでは夏を迎えた日常的な走行環境でどのような電費、燃費性能を発揮するかを中心に報告したい。

さて、結論から言えば、6月中旬、11日間の走行距離は250km。平日は家の近所を買い物や送り迎えでトコトコ走り、2回あった週末は高速道路を利用して往復約50kmの大型ショッピングモールやドライブに出るというパターンだ。一般的な家庭、サンデードライバーの日常的な使い勝手に近いと言えるだろう。もちろん、一般道ではEV走行、高速道路では切り替えスイッチによって制限速度内のHV走行を基本とした。エアコンも必要に応じてONにしている。

満充電時のEV走行可能距離はカタログ値ではJC08モードで26.4kmだが、実際には最大20km程度と考えるべきだ(満充電したつもりでもEV走行可能距離が20kmを切ることもある)。長い下り坂などでEV走行距離が伸びる場面があっても、過大な期待は持たないほうがいい。

最終的にはPHVシステムインジケーターによると、EV比率14%、HV比率86%。平均燃費46.0km/リットル(!)。これにより節約されたガソリン量は11.9リットル。ガソリンスタンドでのガソリン給油量は3.29リットル、450円だった(6月22日、東京文京区のガソリンスタンドの価格は1リットル137円)。

重要なのはここからだ。プリウスPHVは満充電で3.0kWhの電気を必要とするわけだが、総充電回数は6回。“すべて自宅”である。現時点での電気代は1満充電あたり約70円で、6回で約420円(深夜電力などの契約はしていない)だった。

つまり、日常的に250kmを走るのに要したガソリン代、電気代の合計は約870円である。仮にHVプリウスの実燃費が20km/リットルだとすれば(今回のプリウスPHVと同条件走行の実測値)、ガソリン代は約1712円だから、走行コストはほぼ半額ということになる。そのパターンで年間、5000km走るとすれば、プリウスPHVは1万7400円。プリウスは3万4240円だ。その絶対的な金額、差額をどう感じるかは人それぞれだろう。

ここで補足すると、東京電力と相談した結果、自営業のわが家の生活パターンでは深夜電力にすると日中の電気料金が上がるため、現在の一般的な電気料金体系のままの方がベターという結論に達した経緯がある。深夜電力を基本とした経済性を鵜呑みにしないほうがいい。

さらに今後、電気料金が値上げされたとすると、すでに東京電力が公開している値上げ後の1kWhあたりの料金は最大30円。値上げ後であれば今回と同じパターンでの電気料金は120円増しの約540円になる(250kmを走るのに要するガソリン代、電気代の合計は約990円)。それでもHVプリウスの走行コストに対して約58%で済む。

もっとも夏季、エアコンをONにすると満充電状態で10~15%程度EV走行距離が目に見えて短くなる事実も、常識とはいえ知っておく必要がある(冬場のヒーター使用時も相応の負荷がある)。おかげで、不必要にエアコンをONにしない10日間だった。逆に言えば、これまでガソリン車では窓を開ければ済む外気温でも、いかに安易にエアコンを使っていたか…と反省させられた。プリウスPHVに乗ると、そんなエコアイデアを学ぶこともできた。

ちなみに、スマホに「eConnect」なる専用アプリをインストールしておくと充電情報、エコサポート、リモートエアコン機能などさまざまなサービスを受けることができるが、笑えたのがバッテリーの充電量が減ってくると、愛称を付けられるプリウスPHV君から「お腹が空いた…」とメールがくること。もはやプリウスPHVはメル友でもある家族の一員、そんな気持ちにさせられたのだった。


青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフジャーナリスト
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。

《青山尚暉》

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