【イクリプス AVN-ZX02i インタビュー】 “できない”を実現した9型対応とDS連携

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富士通テン CI技術本部技術三部 中野雅彦氏
富士通テン CI技術本部技術三部 中野雅彦氏 全 18 枚 拡大写真

富士通テン・イクリプスの2012年モデルは、フラッグシップの「Zクラス」をはじめ、「Vクラス」「Gクラス」「Fクラス」「ライトシリーズ」と5系統のラインナップにもなる。

なかでも「Zクラス」の“ULTRA AVN”こと「AVN-ZX02i」はカーナビ最大級の9型大画面を採用した上に「ニンテンドーDS」との連携まで実現した画期的モデル。AVNは今後どのような進化を見せるのか、イクリプスの開発者3名(CI技術本部技術三部 中野雅彦氏・CI技術本部技術三部機構Gr 田中伸治氏・SS技術本部サービス技術室 平井香菜氏)に話を伺った。

◆大画面だけでなく“つながる”便利さも携えたZクラス

----:最上位モデルの「Zクラス」が加わり、イクリプスがラインナップするAVNは全5つに広がりました。これはカーナビメーカー中、もっとも多いラインナップとなります。それぞれの特徴とコンセプトをまずご説明下さい。

中野:「Zクラス」は、9型にプラスしてつながるところを強化した「AVN-ZX02i」をフラッグシップモデルとして位置付けています。ラインナップに一般的な7型サイズも用意して、サイズ面での差別化も図っているのが特徴です。さらに3Dジャイロセンサーの搭載で測位精度を高めつつ、Vivid View Processor3等による映像表現へのこだわり、音楽CDのリッピング機能も搭載しています。「Vクラス」はこれらの一通りの高機能を備えながらコストパフォーマンスの高い普及型モデルを目指して開発を行っています。

----:「G」クラスと「F」クラスになるとインターフェイスが大きく違ってきますね。

中野:はい、インターフェイスは基本的に「ライトシリーズ」のものです。ライトシリーズの持つ“使いやすさ”というコンセプトはそのまま継承し、モニターをVGA化した上で、市街地図を標準で持つようになりました。「G」と「F」はこれをベースに、それぞれクラス別の機能を追加したモデルです。ライトシリーズの上位機と位置付けられるのが「G」で、DVD再生が出来たり、地デジをフルセグ受信に対応しています。一方、「F」はインターフェイスこそライトシリーズの流れを汲んでいますが、主にiPhone連携を重視した、ある意味ターゲットを絞り込んだモデルです。

◆子どもが車内コミュニケーションの主役に

----:最近のカーナビはスマートフォン連携を重視している中、ZクラスではニンテンドーDSとの連携を特徴としています。なぜスマートフォンよりもDSとの連携を重視して商品化されたのでしょうか。企画の狙いと経緯についてお聞かせください。

平井:イクリプスは「ドライブをもっと楽しくアクティブに」をコンセプトとしています。家族をターゲットに、もっと楽しくドライブをしてもらいたい、というのが狙いでした。それを活かす一つの方法として、子供が主役になれることを第一に考えるとスマートフォンではなくニンテンドーDSではないか、そう考えたのです。

----:ニンテンドーDSを連携させる企画はイクリプスからの発案なんでしょうか。

平井:そうです。イクリプス側から任天堂さんに企画を持ちかけ、議論を重ねる中で面白い企画になるとの確信が双方で持てたことで「クルマでDS」の開発がスタートしました。

----:ナビ関連ですとこれまでゲーム機では「DS」よりも「PSP」が積極的でしたが、「PSP」「PS Vita」を選ばなかった理由はなんでしょうか?

平井:「PSP」などに比べ、「DS」は小さなお子さんでもお持ちの場合が比較的多いので、子供が主役であることをコンセプトにすると「DS」の方がマッチしていると考えました。

----:ところで今回のコードレス接続は、付属ソフト「クルマでDS」にBluetoothユニットを組み込むことで対応しています。ニンテンドーDSにはなかった機能を盛り込む形となったわけですが、その辺はスムーズに運んだのでしょうか?

平井:任天堂さんとの話し合いの中では、たくさんの課題はありましたが、企画を進めるにあたって何が面白いかという議論を中心に解決していきました。カーナビの12年モデルではBluetoothが採用されていたこともあり、それに合わせて対応チップをソフトの中に組み込む形で対応することになりました。

◆ご当地クイズが車内のコミュニケーションに

----:使って見て感じるのは、かなり深いものがありますよね。ご当地クイズはかなりマニアックなものもあって、答えが本当に分からないものも少なくありません。子供が主役という割に内容が難しい。こうした問題や機能などはどのように決めていったのでしょうか?

平井:確かに小学生が答えられない問題も数多いですね。でもそれが狙いなんです。クイズを通して家族みんなが考えを寄せ合う中でコミュニケーションが図れる、これがこの企画の重要なポイントなんです。お父さんが解説したり、お母さんがヒントを出したりして、車内での話題作りに貢献したい。そんなシーンを想定して問題を設定しているんです。出題数は1万件以上あります。

----:クイズアイコンには画面内をピョンピョン跳ねる犬のようなものなど、いろんなキャラがありますよね?あれも任天堂のアイディアなんでしょうか?

平井:ピョンピョン跳ねるのは「ここ掘れ」の犬の意味合いで、ご当地クイズが該当します。クイズアイコンは全部で4種類あって、高ポイントを取れるキャラもあったりします。

----:運転中に出題されるクイズはTTS(Text to Speech)で行われることもあり、運転に集中しているドライバーは聞き取れないって感じもありますよね。二回読み上げてもらえたりしないんでしょうか?

平井:実はそれも狙いなんです。ニンテンドーDSを持っているお子さんとか、同乗者は出題されているDSの画面を見ることができますから、家族から内容を教えてもらえます。そこから笑いが生まれ、結果としてコミュニケーションの一環につながると考えています。

----:DSから目的地設定もできますが、検索用データをDS側に内蔵しているワケではないですよね?

平井:そうです。DS用の施設情報はナビ側に置いていますので、目的地を探す際はBluetooth通信によって情報を受け取って目的地設定するようになっています。それと、DS側にはGPS機能も備えていません。現在地情報もBluetooth通信でカーナビ側を頼る形になっていて、これに合わせてご当地クイズを出題しています。

----:Bluetooth接続はこれまで設定を終えるまでハードルが結構高いというイメージがあったのですが、このDSを接続するためのメニューはわかりやすいと感じました。

平井:子供でも設定できることが大前提でしたので、とことん議論しわかりやすさを追求しました。ナビ側は接続ボタンを押すだけですし、設定方法はDSから簡単に分かるよう説明されています。一度これを聞けばすぐにわかってもらえますよ。子供でしたら、先入観なしにすぐ設定モードには入れると思いますね。

◆9型は「入るように設計した」

----:大画面化と車種専用化というトレンドが進んでいますが、他社でもおこなっている8型ではなく、更に大きい9型というサイズに踏み込んだ理由はなんでしょうか?

中野:8型よりも9型のほうが取り付けが難しいことは理解していましたが、“使いやすさ・楽しさ”を念頭に商品企画をしてきた当社としては、「クルマの中でも地デジやDVDをより楽しんでいただきたい」「業界でインパクトを与えたい」といった想いから、9型の開発に取り組みました。

田中:対象車種への搭載検討が私の担当ですが、一番ビックリしたのはアルファード/ヴェルファイアに装着すると隙間なくきっちり収まることですね。まるで9型が装着されることを予想したかのような収まり具合なんです。

----:そうそう、左右のパネルとの間がほとんどなかったですよね。ここまでのジャストフィット感はそう多くない。これ以上、大きなサイズは無理でしょうね。

中野:そうですね、もう9型でいっぱいいっぱいですね。その辺りも考慮してパネルも含めて一体感を持たせてピッタリいく搭載設計を行っています。キットも含めて他社にひけをとらない価格帯で販売できる商品にする計画でいる。現時点での対応車種はアルファード/ヴェルファイアとプリウス、フィットなどの6車種ですね。(※編集部注:2012年9月までにトヨタ『ノア』『ヴォクシー』『アクア』、ホンダ『ステップワゴン』『フリード』など10車種の取り付けキットを追加することが7月9日発表された)

----:プリウスとかフィットにも入るんですね!

中野:入るというより、入るように設計したといった方が正確ですね。画面が大きい方が後席からも見えるし、前席でも迫力あふれる映像が楽しめる。大型化はエンタメでは欠かせませんからね。画面に表示される操作スイッチも大きくなって、使い勝手の面でも大きなプラスとなっています。

◆同じ解像度でも画面サイズで表現を最適化

----:9型と7型で、地図データは同じですか?以前、大画面化で同じ画素数でも1ピクセルあたりのサイズが大きくなったことにより、表示面で工夫された点があるとお聞きしました。具体的にはどのような点でしょうか。

中野:地図データは一緒です。仰るように、表示方法でちょっとした工夫をしています。7型と比較すると一目瞭然なのですが、同じスケールでも9型の方が表示エリアを広く取っています。つまり、100mスケールで表示する実寸が7型も9型も同じとしたことで、実際に表示されるエリアが広がったというわけです。若干、地名表示でサイズは違えていますけど、せっかく9型にしたので、一度で見られる情報を増やしてあげようとしたんです。単なる拡大しただけに終わらせたくなかったんですね。

----:あ、でも画面周囲に表示されているボタンは大きくなっていますよ。

中野:そのボタンは7型で使ったものをそのまま流用したので拡大表示されてますが、これはそのままボタンの押しやすさという使い勝手の向上につながっています。

----:9型大画面にするにあたって、設計上の難しさというのはあったんでしょうか?

中野:それはとくにないです。やはり取り付けへの対応の方が難しかったですね。9型の中でもコンパクトにまとめておけば、後々より多くの車種に対応していける。これが難しさといえば難しさになったのだと思います。

----:ということはやはりミニバンユーザーへの対応が主となるんでしょうか?

中野:そうですね、あとは人気の高い車種で用意していきます。プリウスαとか、アクア、フリードなんかも対象になりますね。

田中 アクアは入るかどうか、って思われますけれど、そこに入れるのが我々の仕事。入れられるパネルを設計して見せます(笑)。

◆当初「無理」と言われたことを実現して商品化したZクラス

----:周辺機器との連携や機能追加などで、カーナビ側の負担はどんどん大きくなり、結果として体感的なレスポンスが従来よりも遅くなりがちです。そんな中、このZクラスはかなりスムースに動きます。

中野:処理能力を上げるためにチップを変えるのも一つの方法だと思いますが、ソフトウェアの使いこなしも重要です。我々はそこのところに注力して開発を行っています。それが地図のスクロールもスムーズになり、サクサクとした動きを実現しているんだと思います。それとパネルは感圧式を敢えて採用しています。

----:フリック&ドラッグ操作は静電式でないとできないわけではないと。

中野:感圧式でもこのようにフリック&ドラッグ操作はできます。むしろ、感圧式の方が押したところへ地図が移動するメリットが生まれますからね。クルマの中での使い方が大前提なので、クルマの中で使いやすいことを第一に考えたら、やっぱり感圧式の方が使いやすいとなったんです。

----:最後に「Zクラス」に寄せる思いをお一人ずつ語っていただけますか。

田中:9型を作ってくれ、と言われた時、「付かないでしょ?」と思ったりもしましたが、社内の設備、人員や知見をフルに活用し、対象車種の検討や検証をおこなったことで、完成に何とかこぎ着けました。結果として9型を世の中に先行して発売できたことに満足しています。これからも車種拡大に努めたいと思います。

平井:2年半かけて長い期間DSを担当し、イクリプスでは初めての企画でもあり、子供をターゲットに企画を進めてきたことも初めてでした。任天堂さんや社内のいろいろな部署の方とよりよい関係の中、協力し合って生まれた商品です。「クルマでDS」をたくさんの方に楽しんでいただきたいです。

中野:9型モデルと言うことで、今までにない取り組みを展開してきました。ユーザーにどうアピールするか、今までとは違うアプローチが必要でした。拡販に向け、新たな取り組みが財産となっていっています。今回、このモデルができたことを踏まえ、より上を目指して頑張っていきたいと思ってます。

イクリプス AVN-ZX02i・AVN-Z02i 製品サイト
イクリプス スペシャルサイト「退屈ドライブ撲滅プロジェクト」

《会田肇》

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