日産自動車は8月1日、ミニバンの主力モデル『セレナ』のマイナーチェンジを行った。新型セレナ最大の目玉技術は、燃費向上技術「S-HYBRID(スマートシンプルハイブリッド)」だろう。
ハイブリッドの区分としてよく知られているのは、電気自動車(EV)のようにモーターだけで発進加速が可能な「ストロングハイブリッド」、モーターをエンジントルクの上乗せに使う「マイルドハイブリッド」など。トヨタ『プリウス』や日産『フーガハイブリッド』などが前者に、ホンダ『インサイト』やメルセデスベンツ『S400ハイブリッド』などが後者に相当する。
10年後の「あたりまえ」になるとの予測も
一方、欧州を中心に、それらのハイブリッドとは考え方の異なるハイブリッドが普及しはじめている。エンジンの始動を行うセルモーターと、発電を行うジェネレーターの一人二役をこなせる小型のモーターを装備。駆動アシストは限定的にしか行わず、主にブレーキ時のエネルギー回生やアイドリングストップの再始動にモーターを使う「マイクロハイブリッド」と呼ばれる方式だ。
コストアップを最小限に抑えながら燃費を向上できることから、「10年以内にマイクロハイブリッドは自動車にとって当たり前の装備になる」(アウディ本社製品戦略担当:ハイコ・ゼーガッツ氏)という見方も出ている。
モーターはエンジンにベルトでパラレル接続、アイドリングストップと発電をサポート
新型セレナに搭載されるスマートシンプルハイブリッドはズバリ、そのマイクロハイブリッドに分類されるシステムだ。エンジンにベルトでパラレル接続されたモーターは定格出力1.8kW(約2.4馬力)と非常に小さく、駆動アシスト能力はほとんどない。モーターの主な役割はアイドリングストップの再始動と発電。得られた電力はエンジンの起動や車両のコンピュータ、電装品の作動に使われる。
実は2010年10月にデビューしたマイナーチェンジ前のセレナのアイドリングストップシステムは、すでにマイクロハイブリッドに近い形態となっていた。発電機とエンジンスターターの両方の機能を持つECOモーター(日産によればエネルギーコントロールモーターの略)が装備され、最初にエンジンをかけるときだけセルモーターを用い、走行時はアイドリングストップの再始動と発電の両方をECOモーターが行なうというものだ。
現行のアイドリングストップ車の多くはエンジン始動にセルモーター、発電にオルタネーターを使っており、エンジン始動の際にはギア駆動のセルモーターが作動し、「キュッキュッキュッ」というノイズが発生する。ベルト駆動のECOモーターを使うセレナの場合、エンジン再起動のノイズや振動はほとんどない。
そのアイドリングストップシステムの能力を拡大することで作られたのが、今回のスマートシンプルハイブリッドだ。ECOモーターの定格出力を80%増強し、ブレーキ時のエネルギー回生量を増やした。その電力を蓄えるため、鉛電池を2個に増やして回生受け入れ性を高めている。
効果は小さめ、コストは軽く
セレナS-HYBRIDの燃費はJC08モードで15.2km/リットル。進化前のセレナアイドリングストップの14.6km/リットルからの改善幅は0.6km/リットル、率にして4%弱という小さなものだが、価格もマイナーチェンジ前と比べて5万円強のアップにとどまる。また、グレード構成を見てもS-HYBRIDでないのはFWD(前輪駆動)、AWD(4輪駆動)ともベースグレードの「S」のみで、基本的に標準装備扱いだ。
効果は小さいがコストも安いことから、エンジン車の標準技術になるとも言われているマイクロハイブリッド。それをいち早く導入した日産の商品力が日本のユーザーの目にどう映るか、大変興味深い。