【CEDEC 2012】内製ツールで効率化は可能か

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左:佐々木隆典氏<br>右:髙木啓太氏
左:佐々木隆典氏<br>右:髙木啓太氏 全 26 枚 拡大写真

CEDEC2012の1日目に行われたショートセッション「内製ツールは救世主たり得るか?」では、スクウェア・エニックス、カプコンの両社の開発陣がツールの説明や運用について熱く語りました。

まず、最初はスクウェア・エニックスで「共通DCCツール環境」の保守・開発を行っているテクノロジー推進部の佐々木隆典・高木啓太両氏によるセッションが行われました。Maya、Softimage、Motion Builder、PhotoshopといったDCCツールのスクリプト(Pylon等で作業を自動化するために作成)やプラグインを社内で共有し、便利に使いやすく、開発コストを低くするために導入されました。基本的に全社で共通に使用されるのが「社内共通プラグイン」、有志により制作されたものが「DCC技術共有プラグイン」と呼ばれています。

まず2005年に導入されたのが、「社内共通プラグイン」です。それまでは、プロジェクト毎に同じようなプラグインが開発されたり、人づてに出回ったモノが改変、派生バージョンが乱立したりする問題が起こっていました。そこで社内の制作環境を整えるべくチームが発足し、今までの状態が整備されました。ところが、作者が自由にメンテナンスが出来ないなど、単に共通化しただけでは乗り越えられない問題が出てきたため、オープン化する必要が出てきました。そして2009年にコミュニティサイト「DCC技術共有」が開設されました。

「社内共通プラグイン」は社内のウェブサイトからすぐに使え、起動スクリプトを作成することで、DCC起動時に自動更新が可能になっています。また、プロジェクトごとに使うツール、使わないツールのカスタムが可能で、プロジェクトが変わっても、使用していたプラグインなどには大きな変更はないということです。

一方の「技術共有プラグイン」は、「DCC技術共有」から利用可能です。「DCC技術共有」はコミュニティサイトになっており、掲示板や共有ドキュメントも利用可能ですが、目玉は共有プラグインの機能になります。ツールの利用者は使いたいツールにチェックを入れるだけでDCC起動時に自動的にインストール、常に最新版に自動更新されます。ツール作成者は共有したいプラグインがあればアップロードが可能です。

DCCの起動時には、ツールの更新情報や不具合などの通知を表示する機能もあり、自ツールの宣伝や重要な情報の共有などが可能になっています。ちなみにRSSでも配信しているそうです。

次に実際の運用についてですが、起動スクリプト、起動ショートカット作成ツールともにWindowsの標準機能だけで作成されました。また、ツールと起動スクリプトも最常に最新版を提供し、古いバージョンの残存による互換性のトラブルを事前に回避しています。さらに必要なファイルはローカルにコピーすることで、ネットワークのトラブル時にもデザイナーは作業できるような状況になっています。

また、安定運用をするためにリリース管理には気を遣っているということで、ゲームツールの運用には向かない」と言われるSubversionで全ツールを管理しています。「あまり大きいファイルでは、いまひとつかもしれないが、ツール程度なら安定して」管理が可能だそうです。

さらに、「DCC技術共有」ではテストリリース機能もあり、「受け渡しや設定方法の説明の手間を削減し、デザイナーに余計な負荷をかけずに、テストしてもらうことが可能になっています。
また、基本的には選択式にしてもらうことで、必要としていない人の環境に余計な影響を与えないような仕組みになっています。また、自由にアップロードが可能になっているので、ガイドラインを定めて安全性を確保し、フックスクリプトで機械的にも対応しています。

各プラグインには流出防止・利用ログ収集のために、認証モジュールが組み込まれています。専用のサーバで認証をクリアしなければ使用はできません。しかし、アウトソーシング先でもツールを使用して作業をしてもらいたい場合は、プロジェクトごとに配布対応は可能です。ただし、現時点では社内環境と統合はされてないうえに、起動スクリプトや自動更新といった機能も提供していないとのこと。

なお、ツールの貸し出しについては、利用するツールが多い場合には一括提供、少なければ部分提供になります。ただし、ツール間の依存関係は管理されていません。先ほどの説明の通り、各プラグインには認証モジュールが組み込まれていますが、社外から利用するには、VPNで社内認証サーバと通信をすれば利用が可能になります。

最後に、うまくいっている点と、問題、反省点などが発表されました。現時点では、社内でも広く利用され、標準的な環境になっているとのこと。また、ツール共有の手段としても認知され活用されているそうです。また、様々な安定運用を目指した方策も上手くいっているということです。

一方で、ツール提供者からは、「アップ手順が小難しい」といった批判があり、UIを改善していく予定だそうです。また、配布ツールの更新処理などでDCCツールそのものの起動速度が低下するという不満もあったようですが、こちらは更新をスキップするオプションなどを設けて改善しました。

最後に、「DCC上の複雑な作業は簡単なスクリプトでもコストダウンになる。自分が作ったツール他の人にも便利で作業コストを低減させることは良くある。これからもそういった人のツールがたくさんの人に使ってもらえるように取り組みたい」と締めくくりセッションは終了しました。

【CEDEC 2012】内製ツールで効率化は達成できるのか? ― スクウェア・エニックスの場合

《宮崎@INSIDE》

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