JALの客室乗務員の緊急脱出訓練…繰り返しが力を発揮

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いざ滑ってみると意外にスピードが出て少し怖い
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 航空会社の客室乗務員といえば、華やかなイメージが強く、昔も今も人気の高い職業。普段旅客機を利用する際は、笑顔でテキパキと機内サービスを行う姿や、国際線であれば流暢な英語を使いこなす様子を目にするが、実はそうしたサービス・語学などに関することよりも、しっかりと時間を割いて行われているのが“保安”に関する訓練だという。

 そんな、普段目にすることのない客室乗務員の厳しい保安訓練の一部を、JAL(日本航空)の施設で体験することができたので、その様子をレポートしたい。

■“保安”が第一!客室乗務員の厳しい訓練

 今回体験したのは、緊急着陸など万が一の事態を想定して実施される「緊急保安訓練」。場所は羽田空港近くにあるJALの訓練施設で、小型機から大型機まで旅客機を模したモックアップが用意されており、実際にJALの客室乗務員は一年に一度ここで訓練を受けるとのこと。定められた水準をクリアしなければ次の日から乗務できないという厳しいカリキュラムを組まれているそうで、訓練は非常に緊迫感のある中で行われている。また、新人の際はここで1週間みっちりとトレーニングされ、この訓練をくぐり抜けて初めて、憧れの制服に袖を通すことができる。

 訓練は、実際に起こり得るであろう様々なシチュエーションを想定して行われる。例えば離陸時のエンジントラブルによる緊急停止、飛行継続困難な事象発生による緊急着水など、その状況に適した基本の手順を繰り返し、刷り込むことで、いざという時に自分の頭で考えて臨機応変に動けるように訓練していく。年中同じ訓練をしているわけではなく、飛行機の型式や、トラブルの原因、起きた場所などに応じてバリエーションは無数にある。最近では、PCの持ち込み件数が急増しているため、そうしたバッテリー類からの火災を想定した訓練も行われているそうだ。

■基本手順の徹底、繰り返しが緊急時に力を発揮する

 実際にモックアップに乗り込み、教官の方に目の前で訓練を再現してもらったが、その声の大きさ、指示の正確さに圧倒された。緊急時、大勢の客がパニックになる中では、大きなシャウティングによる指示が重要とのことで、ゆっくりと大きな声を発することで、客だけでなく自分自身も落ち着けることができるという。新人は、人前で大きな声を出すということから徹底的に教え込まれ、同時に、旅客の命を預かっているという意識を持つようになるらしい。今回は取材をしながら訓練も受けるという特殊な状況だったが、「頭を下げて!」「ここへ急いで!」といった教官の迫力に押されて、取材もそこそこに必死に指示に従った。ふと小学生時代の怖かった先生を思い出したが、緊急時に冷静さを失いがちな中、あの有無を言わさぬ迫力はとても頼りになるのではないだろうか。

 打ち合わせ無しで急きょシチュエーションが変更されても、教官は一切戸惑いを見せず適切な状況確認、指示出しを行っており、その練度の高さにも驚いた。

 その後、空気で膨らむ滑り台や、海面を想定したプール上に浮かべたゴムボートなどを使って実際に緊急脱出を体験した。滑り台はドラマなどでよく目にすることもあるが、いざ体験してみると中々のスピード感で、中には怖いと感じる人もいるかもしれない。大勢の人が次々に避難する場面では、一人が躊躇してしまうと後ろがつかえてしまい非常に危険だ。ここでも、訓練された客室乗務員の適切な誘導指示が必要になる。救命胴衣に関しても、装着に意外と手間取ってしまう。適格に指示してもらわなければ焦ってパニックになってしまいそうだった。

 客室乗務員は“保安要員”としての役割も担っている。と言われても、これまでは今一つ実感が湧かなかった、というのが正直なところ。果たして、いざという時にどれだけ頼りになるのか、甘く見ていた部分もあった。今回、一部とはいえ訓練の様子を体験し、その厳しさ、意識・練度の高さに驚いた。もちろん誰も事故やトラブルは望んでいないが、100%何も起きないという保証はない。客室乗務員は日々訓練を積み、その万が一に備えている。普段感じる華やかなイメージとはかけ離れた、緊迫感ある裏の姿を見ることができた取材だった。

誰よりも頼りになる!JALの客室乗務員が受ける緊急脱出訓練を体験!!

《白石 雄太@RBB TODAY》

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