自動車販売チェーン「ONIX」を手がけるオートコミュニケーションズ。2011年にはスキャンツールをONIX加盟店に配布し、顧客との交流活性化を図った。この取り組みを進めることで浮き彫りになった課題は、国内自動車流通のいまを象徴する。加えて、国内中古車の海外輸出事業に対する考えを聞いた。
---:2012年10月に「お客様相談室」を設けましたがこの狙いは。
鄭社長(以下鄭):我々ONIXの加盟店では、個々の店舗が近隣に住んでいるお客様と顔見知りで、地域の関係性のようなものがあることでビジネスが成り立っている、という側面があります。店舗とお客様の関係が深いため、お客様が感じている不満点、改善要望を直接店舗に伝えにくくなっているという現実があると知りました。例えばクルマに小傷があった場合など、その状況を店舗の担当者に伝えきれない。そしてお客様は何も言わずにほかの店に流れてしまう。こうしたことを改善するため、我々ONIX本部でお客様の要望を一元管理する「お客様相談室」を設けました。
クルマは、大きなお金を使うため購入時に焦点が当たりがちですが、実際は買った後の方がクリアすべき課題が多く発生します。そこで我々は、購入後のアフターフォローを重視しています。そうすることで購入の3年後、もう一度買い替えを考えていただける店舗として、ONIXを思い浮かべてほしいと思っています。
アフターで、信頼を得られなければお客様が戻ってきません。リピーターになっていただいて自己循環型のシステムを構築することが必要で、そのモデルを構築するという考えは間違っていないと、今まさに自信を深めているところです。
---:お客様相談室の稼働率や体制を教えてください。
鄭:お客様相談室は自社の社員で取り組んでいます。常駐しているのは2名です。外注はしていません。すべて内製です。この構想は長く持っていました。
私たちはどんどんお客様にご連絡をいただきたいということです。弊社のホームページのトップからお客様相談室にアクセスできます。実質的に10月10日から10月末まで電話は20本ありました。メールの数はそれより多くなっています。その中身としては相談が多いですね。金融商品やクルマを買うというときによくわからないことが多いからでしょう。
---:インターネット完結型のビジネスが増えています。人の肉声がサービス品質という面で価値を生み出していくということでしょうか。
鄭:人対人のところに力を注ぐべきと考えています。インターネット上で情報を把握した上で、お客様は「これ本当ですか」と聞きたい。そしてスタッフから「その通りです」という確認のひとことが欲しいはずです。そのひとことを聞いたときの安心感はインターネットでは得られないものだと思います。
---:2011年に取り組んでいた、スキャンツールを用いたエムログとの連携に関して、その後の取り組みはいかがですか。
鄭:スキャンツールを用いたキャンペーンを行い、データは沢山とる事が出来ました。課題はその次のステップをどうするかということです。ONIX加盟店は、大型で高性能のスキャンツールを持つ店舗も多いものですから、エムログさんとの連携で利用していた簡易なスキャンツールといかに共存させていくかという点が課題です。
車検を含めて、既存の作業フローの中に新たなスキャンツールの作業を入れ込むことが難しいところです。「OBDをやる」という意識そのものにも問題があると思います。
まだまだOBDについてお客様向けにアピールすることが必要ですし、お客様からのOBD需要の声も一般的になればと思いますね。加盟店は皆忙しいので、そうしたところに新たなサービスの仕組みを組み込めるよう、私がもっと考えていかねばなりません。
---:ONIX加盟店も含め、自動車の流通についての変化と課題を教えてください。
鄭:ONIXに関して言えば、販売車両は低価格車にシフトしていますね。自動車の特に中古車の流通に関しては、中古車オークション会場を含めた流通形態は見直す必要があるでしょう。経済全体を見ても、お客様の収入についても、圧縮が続いています。中古車の価格についても中間コストの圧縮は欠かせません。
オークション会場を通して、最終的にエンドユーザーに何台クルマを売ったかという数字は出ないのですね。業者間で同じクルマを何度やり取りしても、中間コストが膨らんでいくばかりです。こうした中間の事業者が、お客様に対してメリットとなるような新たなビジネスモデルを構築することで、国内の自動車流通は一層活性化すると思います。流通の形を時代に即したものに変化していかねばなりません。
---:ONIXグループとしては今後どのような事業に注力していくのでしょうか。
鄭:グループ共有在庫台数の増加です。クルマの経歴詳細の把握とともにONIX共有在庫の数を増やします。すでに共有在庫の登録システムはあるのですが、登録は1000台弱。これを今後1年くらいの間に5000〜6000台にしていきます。
中古車の海外輸出も検討はしています。2004年くらいにテストマーケティングをした事があります。そのときは非常に良い感触がありました。
---:共有在庫1000台という規模でも海外輸出業は成り立つのですか。
鄭:成り立ちますが、我々は軽自動車を多く扱っていますから、軽自動車の輸出をどのようにビジネスにするか、というところは一つのポイントになると思います。ミャンマーなどの海外で中古車の購入者に対してアフターサービスを実施する現地企業と、我々が組めばお客様も安心出来ると思います。