一見、空中をのんびり漂っているだけのようだが、実際にはそこで熾烈なバトルが展開されているというエキサイティングなエアスポーツ、熱気球レース。
日本で行われている熱気球競技のシリーズ戦としては最大となる年間5戦で勝者を決める熱気球ホンダグランプリの最終戦で、世界選手権も兼ねた「2012とちぎ熱気球インターナショナルチャンピオンシップ」が11月21~25日の5日間、宇都宮市~茂木町上空で開催され、圧巻の熱戦が繰り広げられた。
世界選手権であるこのレースには日本人だけでなく、世界ランキング1位で不動産会社社長のジョニー・ペトレーン選手、同4位で旅客機機長のニック・ドナー選手など、世界の有力選手が毎年のように来日、参戦する。5日間にわたる激戦を制したのは日本のトップフライヤーで世界ランク20位の藤田雄大選手だった。
「藤田選手の風の読みや判断力は天性のもの。世界のトップレベルで戦える日本選手が出てきたことは感慨深い」
ベテランパイロットの一人はこう語る。藤田選手は来年、熱気球世界ランキングで日本人初のトップ10入りを果たす見通しであるという。
24日午前、ヒューマノイドロボット「ASIMO」をあしらったスポンサーバルーンから競技の様子を見た。強風のため、競技気球が飛行するエリアには接近できなかったが、後に発表された競技結果はまさに世界の頂点を競うレベルの接戦であった。
熱気球競技には数十種類の種目があるが、このときパイロットは与えられたタスクは4つ。フライイン(FIN:任意の場所から離陸して1箇所の目標をめがけてマーカーを落とす)、パイロットデクレアドゴール(PDG:パイロットが“ここに飛びます”と事前に宣言し、そこにマーカーを落とす)、ジャッジデクレアドゴール(GDG:離陸前に審判が指定した場所にマーカーを落とす)、マキシマムディスタンス(XDI:競技空域内で決められたポイントからできるだけ遠いところにマーカーを落とす)であった。
3つめのジャッジデクレアドゴールでは、10機以上がターゲット上にマーカーを落とし、うち4人は誤差1m以内。次のマキシマムディスタンスでは、何と基準点からの距離でジョー・ハートシル選手が1万3142.50m、ジョニー・ペトレーン選手が1万3142.44mと、わずか6センチ差。規定ではm単位の計測のため、1位タイとなった。他の選手も上位10位までが1万3000m台を記録した。舵取り装置をまったく持たない熱気球は、パイロットが風の読みを誤ると思惑とはまったく別方向に飛んでしまいかねない。その難しい競技において、13キロ以上も飛んでセンチ単位の争いとなったのは、まさに神業レベルの操縦技術。その戦いをトータルで制した藤田選手の来年以降の活躍が楽しみなところだ。
熱気球ホンダグランプリは2013年も4月上旬の渡良瀬バルーンレース(栃木・群馬・埼玉・茨城)を皮切りに、佐久(長野)、鈴鹿(三重)、佐賀、栃木の5戦が行われる。青空をカラフルな気球が飛翔し、激しいバトルが行われる様子を見物するのも一興であろう。