【インタビュー】「超小型モビリティ、新規参入促す仕組みづくりを構築」…国交省自動車局担当者

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超小型モビリティ導入の効果
超小型モビリティ導入の効果 全 6 枚 拡大写真

2012年6月、国土交通省は超小型モビリティ導入に向けたガイドラインを発表し、12月には検討中の認定制度を公表するとともに、パブリックコメントを募集した。制度の公布と施行は来年1月を予定しているという。

導入を進める同省自動車局技術政策課の永井啓文氏へのインタビュー後編では車両基準の策定について話を聞く。

様々なアイディアが具現化できるよう、軽自動車の枠を活用

----:超小型モビリティと言いつつ、外寸が軽自動車のままなのはどうしてでしょうか。

永井:寸法については、しっかりしたサイズ感がまだ定まっていないと考えているので、軽自動車のままとしました。たとえば日産のニュー・モビリティ・コンセプト(以下NMC)はコンパクトなサイズの中に前後2人乗りのシートを用意していますが、日本の高齢者には横2人乗りのほうがなじむという意見もあります。その場合に寸法を小さく規定してしまうと、コンセプトを生かしたクルマ作りが難しくなってしまいます。様々なアイディアが具現化できるように、軽枠内としたわけです。

----:定格出力8kW、排気量125cc以下という数字の経緯は。

永井:定格出力や排気量の数字は、車両重量約500kgで坂道を問題なく登れるかなど、様々な調査の結果決めたものです。定格出力という単位は、道路運送車両法では以前から使われていますし、産業用モーターなどの世界では一般的で、内燃機関の排気量に通じるものです。たしかに外寸については、現在の軽自動車枠いっぱいで作ることも可能ですが、コンセプトを考えれば控えていただきたいですし、定格出力や排気量の上限が決まっているので、あまりに大きなサイズで作ると商品として成立しないでしょう。

----:内燃機関の規格も制定していますが、やはりEV(電気自動車)が主役になるのでしょうか。

永井:現在の自動車は、ガソリンエンジンに最適化されたものです。エンジンをモーターに置き換えただけでは、多くのバッテリーを積まなければならないし、航続距離の心配も出てきます。今の電池技術で考えると、2人乗りで20〜30kmを走行するような使用パターンがEVには適していると考えます。バッテリーの容量は減らせるし、急速充電がなくても問題ありません。つまり超小型モビリティがひとつの解答ではないかと思うのです。だからこういう乗り物が増えれば、EVの普及にもつながるはずです。

◆中小の企業や新規参入を促す仕組み作りを

----:当初は大人2人乗りと言われていた乗車定員が、大人2人あるいは大人1人と子供2人に変わりましたが。

永井:当初から2人乗り程度とアナウンスしていたように、考えがないわけではありませんでした。実証実験を行ってきた中で、3人乗り自転車で2人のお子さんを保育園に預け、仕事に行くという使われ方がふさわしいと思い、コンセプトに入れました。運転席が中央で、後方左右に子供用シートという構造が成立しやすいと思います。通常の乗用車では運転席は基本的に車体の右側にありますが、超小型モビリティに関しては中央に運転席を備えることを排除はしないつもりです。

----:安全性についての規定を教えてください。

永井:基本的に軽自動車の基準を適用していますが、少量生産という定義をさせていただいているので、型式を取得して販売するというレベルにはなっていません。ですから並行輸入車のような基準を適用しています。通常は破壊試験や動的試験が盛り込まれますが、これらを盛り込むと当該車両自体が破損してしまうので、試験が免除される基準を当てはめるつもりです。つまり非破壊検査といって、構造要件や設計仕様などで基準に適合しているかどうかを判断することになります。中小企業や新規参入者で、安全性などに一定の理解を持つ方々であれば、超小型モビリティに挑戦しやすいように考慮しているのです。

----:最高速度30km/h以下の道路のみ利用する場合の特例を設けていますが、これにはセグウェイのような搭乗型移動ロボットも入るのでしょうか。

永井:最高速度30km/h以下の特例は、最近の動向を踏まえて、戦略的に示させていただきました。日本でも最近、歩行者中心のまちづくりの中で、ゾーン30を適用する都市が増えてきました。その枠内で運用する場合に限り、基準緩和の範囲を広げて参入をしやすくしたのです。ただこれには、搭乗型移動ロボットは入りません。搭乗型移動ロポットは、超小型モビリティの立場から見ると、歩行補助用具に近いという認識ですし、まだコンセプトとしてまとめている段階なので、今回の規格からは外しました。

----:現状では原付一種のミニカーやトライク規格で作られた車両も超小型モビリティと呼ばれていますが。

永井:現状では議論はしていません。ミニカーやトライクの規格は、すぐには統合や消滅の対象にはならないでしょう。ただミニカーの枠は昔からありますが、安全性や乗車定員などが理由で、あまり受け入れられませんでした。トライクはバーハンドルでドアが付けられないなど、安全性では今回の認定制度に及ばないのではないかと考えています。将来的には双方とも、ひとつのカテゴリーに収斂していくのではないでしょうか。

◆欧州のL7カテゴリーも枠内に

----:輸入車についてはどのような考えをお持ちですか。

永井:基準に合致すれば当然受け入れます。たとえばヨーロッパではL6、L7という2輪車派生型のモビリティカテゴリーがありますが、これらは条件を満たしていれば走れると考えています。日産NMCもルノー『トゥイジー』としてこのカテゴリーで走っていて、今回の認定もクリアするでしょう。一部の方は、L7の最高出力は15kWなので問題ではないかという声もありますが、ヨーロッパでは最大定格出力と称していて、出力の測り方が微妙に違うのです。ヨーロッパの15kWが日本の約8kWになるというのが我々の認識です。

----:逆に日本からの輸出についてはどうでしょうか。

日本製の超小型モビリティが軌道に乗ったら、我々としては、それを東南アジアなどに輸出していきたいと思っています。アジアは日本の交通事情に近いですし、たとえば東南アジアで作られている3輪タクシーなどより安全性能や環境性能で上回る車両が期待できます。日本発信のムーブメントとしてアピールできるのではないでしょうか。もちろん産業育成という意味でもプラスになると考えています。

----:車検や税金、保険については。

永井:軽自動車の基準緩和という考え方なので、軽自動車と同じ制度が適用されます。車庫証明も、必要なエリアについては取っていただくつもりです。このあたりは次のステップでどうするかを再び考えることになるという気がしています。任意保険についても、軽自動車をベースに運用していただくことにしていますが、事故率などの査定が進んでいく中で、最終的にどうなるかが見えてくるのではないでしょうか。駐車場については各市区町村で判断していただけるのではないかと期待しています。

----:今回の認定制度は、行政らしからぬスピード感をもった導入という印象を受けるのですが。

永井:現行の基準をベースにスタートすることで議論を早めに収束させて、実施に移したいと考えていました。いろいろアイディアが出ているときに施策を打たないと、思いが薄れていってしまいますし、ニーズにあった制度を適切なタイミングでつくれませんから。ただ国交省では経験のないコンセプトですので、安全性には細心の注意を払いながら導入していきたいと考えています。

《森口将之》

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