マツダが2012年11月に国内発表した新型『アテンザ』。マツダのフラッグシップとしてデザインや内外装の質感、そして走りの面でもクラスのトップを目指し開発したという渾身作だ。
3代目では、ボディをセダンとステーションワゴンに集約すると共に、パワートレーンには『CX-5』でも好評のクリーンディーゼルを新たにラインナップ。ガソリンエンジンモデル搭載車の公道試乗会でこの新型アテンザの開発主査を務めた商品本部の梶山浩氏にその狙いを聞いた。
電装畑出身の梶山氏は、過去に『ユーノスコスモ』『ユーノス800』『ユーノス500』そして『クロノス』、最終型『ファミリア』など、クルマ好きなら感涙にむせぶようなマツダ車を手がけ、自身でも『RX-8』を所有するというエンスー。その梶山氏が新型アテンザの開発にあたり意識したのは、“マツダのフラッグシップ”であるということだ。
「新型アテンザは、最初からフラッグシップという位置づけで開発が始まった。つまり“The Mazda”という車をつくるんだという意気込みで取り組んだ」。
梶山氏がフラッグシップとして重視したのは、走りのあらゆるシチュエーションにおける“リニアリティ”だ。とくに足回りの熟成についてはかなりの労力を割いたという。
「アテンザの開発に当たって、「走り」のリニアリティ向上はたいへん重要なポイント。SKYACTIVの根本的な考え方は、クルマとしてのベースの部分をとにかく磨くことにある。エンジンやトランスミッションだけでなく、足回りもそう。低い車高のセダン/ワゴンで、ロールをいかに上手にコントロールするかが課題だった」と梶山氏。
走りの良さを謳うのならば、ダンパー/サスセッティングを固めてロールを減らす、という方向がセオリーのようにも思えるが、そうした走りはマツダの目指すところではないという。
2010年、ジャーナリストを対象に披露した従来型ベースの「アテンザTPV(技術検証車)」の足まわりは、引き締まった足回りがジャーナリストから好評を得ていたが、梶山氏自身は「あの足は実は気に入らなかった」と笑う。というのも、「ミズスマシ的な走りでサーキットやテストコースだと気持ちいいが、通常の市街地では一体感のある動きが出なかったから」だという。
「足をガチガチに固めるという方向ではなく、ロールを恐れずに動きの良さを感じるセッティングを目指した。コーナーでロールすることが悪いのではない。ロールすることによって車の動きがわかる。とくに低速での乗り味をいかに出すかには腐心した」。梶山氏は、あらゆる速度域でリニアなハンドリングを新型では追求したと語る。
「問題は、リアの足の動き。リアのダンパーやスプリングを変えてもハンドリングは変わらなかった。そこで、リアロアアームの取り付け位置を3mm下げたところ、良く動く足になってくれた。思っていたように自然にロールすること、切り増しも切り戻しもない、リニアなハンドリングが実現できたと自負している」。