【ランドローバー レンジローバー 試乗】磨きかかったクロカンのスーパーカー、ハイエンドサルーンがライバル…諸星陽一

試乗記 輸入車
ランドローバー・レンジローバー
ランドローバー・レンジローバー 全 13 枚 拡大写真

『レンジローバー』はクロカン4WDの『ロールスロイス』という表現で知られる高級クロスカントリーモデルだ。

しかし、先代途中から搭載された自然吸気で375馬力、スーパーチャージャー付きで510馬力というエンジンは、レンジローバーにたぐいまれなる動力性能を与えた。もはやレンジローバーは、ロールスロイスというよりもクロカンのスーパーカーと呼んだほうがいい存在となっている。

従来のレンジローバーはスチールのフレームにアルミボディという組み合わせだったが、新型はアルミ製のモノコックボディとなった。重量は約180kgも軽くなっている。また、ATも6速から8速へと変更されている。搭載されているエンジンは従来と基本的に同じだ。

駆動方式はもちろん4WDで、車高や駆動力配分などを走行路面に合わせてマッチングするテレインレスポンスは進化し、テレインレスポンス2と呼ばれる仕様となった。

まず自然吸気モデルの「ヴォーグ」に乗った。走り出したとたんに、そこいら中から高級車感が漂う。加速中はスムーズかつ静か。もちろん巡航モードに入ってしまえば、快適性はさらに増す。上級サルーンに負けない乗り心地を確保しながら、上級サルーンではあり得ない目線の高さが、よりイージーなドライビングを可能にしている。コーナーでは車高の高さとストロークの長いサスペンションにより、大きめのロールが起きるがけっして不安なタイプのロールではない。

さて、次は最上級グレードの「オートバイオグラフィー」だ。こちらは510馬力のスーパーチャージドエンジンを積む。加速感はかなり暴力的。もちろん、ゆっくりアクセルペダルを踏んでいけばそれなりにおっとりとした加速ができるが、それにはけっこう神経を使う。ちょっと気を緩めようものなら、怒濤の加速を味わうことになる。さすがにちょっとためらうほどの加速感。とくに発進時にアクセルペダルに力が入りすぎたときは、助手席の人がのけぞるような状況となってしまう。これは2速発進をデフォルトにするなどの工夫がほしい。

スーパーチャージドエンジン搭載車は足まわりのデバイスも異なる。とくに面白いのがアクティブスタビライザーバーと言われる装置。ようするにコーナリング中にスタビの働きを強くして、ロールを抑えるという装置だが、これがよく効いている。車線変更などの際にも作動が遅れることなく反応しているようで、ステアリング操作に対して機敏な動きをする。それでいて、乗り心地は損なわれていないのだから、デバイスとしての出来はかなりいい。

ベーシックモデルのヴォーグが1230万円、中間グレードのスーパーチャージドヴォーグが1490万円、最上級のオートバイオグラフィーが1670万円というクルマ。決定的な悪い評価が出るわけもない。各評価が高くてオススメ度が低いのは、世の中に広くオススメできる価格じゃないからだ。

5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 新型アウディ『Q3』のインテリアを公開、「コラム式シフト」と新デジタルコックピットが目玉に
  2. 21車種・64万台超、トヨタ自動車の大規模リコールに注目集まる…7月掲載のリコール記事ランキング
  3. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
  4. 2.5Lエンジンを搭載する『インプレッサ』登場、米2026年モデルに「RS」
  5. シボレー『コルベット』がニュルブルクリンクで「米国メーカー最速ラップ」樹立
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  3. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. 湘南から走り出した車、フェアレディZやエルグランド…日産車体が量産終了へ
ランキングをもっと見る