笹子トンネル事故に時間の壁…建設から40年、当時の施工管理書類なし

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上り線緊急点検で見つかった手で回すと脱落したアンカーボルト(12月・笹子トンネル)
上り線緊急点検で見つかった手で回すと脱落したアンカーボルト(12月・笹子トンネル) 全 3 枚 拡大写真

笹子トンネルの天井板が崩落した原因は何だったのか。有識者を集めた調査・検討委員会での原因究明が進む中、当事者である中日本高速会社からも原因を推測できる発言がもれている。

「現在の施工状況の確認は、接着剤があふれ出ることで、目視で十分なされているかどうかわかる」(森山陽一保全サービス事業本部担当部長)

2月1日の会見後の補足説明で、森山氏はケミカル・アンカーボルトの現状の施工状況の確認方法をこう述べた。これは、1975年のトンネル完成当時のことではなく、あくまで現状の施工確認方法の説明だ。

現状のケミカル・アンカーボルトは、コンクリートに穴を開けた後、カプセルに入った接着剤を穴に挿入する。その穴にボルトをねじ込むとカプセルが割れて、接着剤がボルト全体に行き渡るというものだ。

天井板は吊り金具などでトンネル本体とつながっている。天井板の崩落は、この吊り金具をコンクリート壁に固定するアンカーボルトの強度不足が、国土交通省の調査結果で公表されている。

森山氏は、その余った接着剤が穴からあふれ出るので、想定どおり施工が行われているということを説明したものだが、当時の施工方法がこれと同じであったかどうかは不明だ。

一方、ある工事関係者は、トンネル天井板という特別な状況での施工を指摘する。

「地面に向かって穴を開けた時は、下にたまった接着剤がボルトをねじ込むことで上へとあふれ出るが、天井に向かって上にあけた穴の場合、十分に接着剤が行き渡るか。やってみたことがないのでわからない」

笹子トンネルの天井板を吊り下げたアンカーボルトの長さは13センチ。そのボルトをねじ込む穴は、トンネルの上に向かってあけることになる。

国交省の調査では、吊り下げ金具を固定するためのアンカーボルトの約6割が、想定基準を下回る強度しかなかったという結果。笹子トンネルの場合、開通時にボルトの強度確認をどのように行っていたのか。

「当時の管理方法は、サンプリングによる引き抜き試験で耐力を確認する規定があることは確認できた」(森山担当部長)

サンプリングは実際に使われているものを抽出して試験するものだが、トンネルの天井板を支えるボルトを引き抜くことはできない。そのため同社の特記仕様書では、実際に使うボルトの横にボルトを打ち込み、サンプリングのためのボルトを引き抜くことで、規定どおりの耐力かどうかを判断していたという。

調査・検討委員会では、部材の経年劣化のほかに、当時の施工状況についても判断が及ぶ。ただ、そこには建設から約40年という時間の壁が立ちふさがる。

同社は「その時の施工管理がどうであったか、確認できる範囲では書類は残っていなかった」(同上)という。

《中島みなみ》

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