【トップインタビュー】柔軟性を内包する質実剛健の独ブランド…アウディ最高経営責任者 ルパート シュタートラー

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アウディ最高経営責任者 ルパート シュタートラー氏
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2012年の業績発表で好調さをアピールしたアウディ。売上は488億ユーロ(約6兆円)で2011年比10.6%増とした。プレミアムブランドとして地位を確立する一方、将来に向けた投資にも余念がない。ジュネーブモーターショー13ではCNG車『g-トロン』を発表した。

業績発表会の前夜には傘下ブランドを含めた製品披露会を実施。こうした取り組みからもブランディングへの配慮がちらつく。

アウディ最高経営責任者のルパート シュタートラー氏のインタビューでは、変化を受け入れる柔軟性と、熟慮の上でシンプルな判断を下す経営姿勢が垣間みられた。

---:VWの新型『ゴルフ』が欧州カーオブザイヤーを受賞しました。この結果の背景にVWのプラットフォームモジュール「MQB」(モジュラー トランスバース マトリックス)があると言われます。アウディもプラットフォームモジュール「MLB」(モジュラー ロンギチューディナル システム)を手がけていますが、これがプロダクトやデザインにどのように貢献しているのか、今後どのように貢献していくのかを教えてください。

シュタートラー氏(以下敬称略):VWグループの中では共生ということが大切です。共生の具体的な取り組みの一つは、お互いのメリットの共有です。この共有を進めることで、開発期間とコストを圧縮できます。また部品の購買という点でも共有は効果的です。こうした部分でMQB、MLBのメリットは非常に大きいです。一方でVW、アウディなどのブランドの個性を失わないことも両立しなければなりませんが、このモジュール戦略は大きく貢献しています。

---:PHVのe-トロン、CNG車のg-トロンを公開していますが、アウディのエネルギー戦略をお聞かせください。

シュタートラー:まずe-トロンですが、自動車業界では低燃費化が世界中で叫ばれていますね。そして自動車産業はそのニーズへの対応を進めています。低燃費化を進めることで市場のセグメントやニーズに変化があることはもちろん、法的にも変化があるなかで取り組むべきことはたくさんあります。『A3 e-トロン』は、電気で走行できるのが50km、内燃機関を使った走行が1000kmとなっており、クルマとしてまったく妥協していません。これは我々からの一つの提示なのです。

CNG車のg-トロンはまだ理解されているところが少なく、我々は戦略的にg-トロンの価値を理解してもらえるよう取り組みを進めます。

ディーゼル車に関しても、低燃費化に向けて開発を進めます。

---:2013年から2014年にかけてアウディ全体で売上増加を掲げていましたが、これは販売台数の増加も伴うと考えてよいのでしょうか。

シュタートラー:北米と中国の成長が続きそうです。欧州でも安定した販売を続けます。そういう意味で我々の成長は続くでしょう。

---:為替に関して、日本の通貨政策が他国の通貨安をあおり、他国の犠牲のもとに日本の産業回復を図っているという批判が日本国外から出ています。日本の通貨政策をどう評価していますか。

シュタートラー:為替のレートが変わるということは日々のビジネスのなかで常に起こることです。日本が円に対して考えることは、どの市場でもあることですから。我々に関していえば円に対して大きなリスクを背負っていません。

---:米国と欧州のFTA交渉が始まりましたが、このFTAが発効されるとアウディの業績にどのようなインパクトがありますか。

シュタートラー:輸入の障壁や流通など、フェアな貿易をするために課題は発生しますが、意見としてはなかなか発しにくいですね。ブラジルに関していうと、最近輸入の認可を得たばかりなので、もう少し市場が成長した段階で話をします。

---:イタリアのブランドを束ねるのはなぜでしょうか。

シュタートラー:ランボルギーニとは長い間関係を構築しており、傘下に入ってもらったのは自然な流れです。最近ジウジアーロにはデザイン面で協力してもらっています。ドゥカティに関しては、我々はバイクをラインアップしていた経験があり、再びラインアップしていきたいと考えた中で、トップブランドのうちのひとつにドゥカティがあります。結果としてイタリアブランドを束ねる格好になったということです。

---:ドイツと言えば日本人には質実剛健というイメージ、一方、アウディが束ねるイタリアのブランドは自由奔放というイメージがあります。アウディブランドのイメージに対する影響は。

シュタートラー:イタリアブランドと組むと言っても、完璧さや機能性、クリエイティビティを製品に落とし込んでいく事については、全く変わりはありません。ご存知のようにイタリアはファッションやインテリア業界も進んでおり、そうした文化を我々ドイツのブランドと融合するすることで、さらに完璧なプロダクトが生み出せるものと考えています。

《土屋篤司》

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