かっこいいスタイルと質のいい乗り味、その両方をしっかり作り込んでいるという点で、ボクは『アテンザ』を高く評価したいと思う。
話はいきなり脱線するが、アテンザを見たとき、初めてローマに行ったときに目の当たりにしたベネツィア広場のヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂を思い出した。付随する建造物のバランスがいいので、写真ではそれほど大きくは感じないが、実物を見ると縮尺を間違えているだろう!と思えるほどでかいのだ。
…いやアテンザの縮尺が間違っているといいたいわけではない。が、全長4860mm×全幅1840mm×全高1450mm(セダン)というサイズはメルセデスの『Cクラス』、BMWの『3シリーズ』、アウディ『A4』など欧州のDセグメントと比べても大柄といえる。しかも歩行者衝突安全要項でエンジンフードとエンジンの間におよそ10cmのクリアランスを取らねばならず、ボンネット高を高取らざるをえないのに、そのアンバランスが一切見られない。ボディとキャビンのアルミ≒ウインドウのバランスが絶妙なので、クルマがぶ厚くも背高にも見えない。このサイズだからこそ作りえたともいえるのかもしれないが、この形はよく練られていると思う。
走らせてみると、こんどはそのボディコントロールのうまさに感心させられた。足回りの動きが大きすぎも少なすぎもせず、カーブでハンドルを切り出すと、適度なロールを作り出して素直に車が曲がってくれる。クルマが余計な動きをしないのでカーブでピタッとクルマが安定している。タイヤのグリップ性能に(過度に)依存していないので、ウエット路面でも操縦性がよく、接地感があるので走らせていても安心していられる。
エンジンに関しては、排気量を問わずアクセルの踏み込み量に対するクルマの加減速が上手に作り込まれているところがいいと思った。速さや力強さはエンジンごとに差はあるが、その限られたパワーの中でアクセルの踏み込み量と加速の具合がリンクしているのだ。
無意識のうちに微妙な車速コントロールができるので、クルマが思い通りに走ってくれる。素直な操縦性と合わせて、運転操作が正確にクルマに反映されるので、まさに自分がクルマをコントロールしているという一体感が得られる。
個人的にはディーゼルの6速マニュアルミッションが楽しかった。マニュアルミッションだと低圧縮比ディーゼルのスムーズな吹き上がりと、分厚く力強いトルクがより明確に感じられ、エンジンの面白さがくっきりと浮かび上がってくる。
■5つ星評価(ディーゼルセダン6速MT)
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★