7月に稼働するホンダの寄居工場は、徹底した効率化と環境に配慮したものづくりをウリにした工場だ。特に環境についてはさまざまな取り組みにチャレンジしている。
例えば、ソーラー発電、天然ガスによるコジェネレーション、空蒸気流システム、廃熱の利用といった具合で、緑も非常に豊富だ。なんでも工場面積の28%、約26.7万平方メートルが緑地で、うち約1.6平方メートルがビオトープ(生物生息空間)となっている。
そこにはトウキョウサンショウウオやホトケドジョウなどの希少種のほか、モリアオガエル、ニホンアカガエル、カヤネズミなど多くの生き物が生息する。そして、夏の夜にはゲンジボタルやヘイケボタルが飛び交うそうだ。もちろん、植物も豊富で珍しいランも花を咲かせるという。
「通常の工場見学と同様、ビオトープについても地域の人たちや子供たちにとって経験の場、学びの場として常にオープンでありたいと考えています」と片山行常務執行役員は話す。
しかし、ただ見せるだけでは他社の工場と変わらないだろう。いかにホンダらしいユニークな試みをしていくか。創業者の本田宗一郎氏は年に一度、日頃の感謝の意味を込めて、近所の人をはじめ多くの客を自宅に招いて小川に鮎を放流し、「鮎釣りパーティ」を行った。
担当部署の社会活動推進室では、ユニークな案がさまざまあるそうだが、効率性を追求するあまり“遊び心”を失いつつある今のホンダが、そのうちいくつ実行できるか気になるところだ。