世界最速の天文スパコン「アテルイ」、より高解像度な超新星爆発をシミュレート

宇宙 科学
超新星爆発の従来にない精細さを持った3次元シミュレーション。国立天文台の滝脇知也氏が作成。
超新星爆発の従来にない精細さを持った3次元シミュレーション。国立天文台の滝脇知也氏が作成。 全 2 枚 拡大写真

自然科学研究機構 国立天文台所有がこの4月1日より運用を開始した、世界最速の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ」。5月29日にそのことが発表され、そして実際にシミュレーション結果も披露された。

公開された結果は、国立天文台の滝脇知也氏によって作成された「超新星爆発の3次元シミュレーション」だ。大質量星の最期の大爆発、超新星の爆心地の様子をシミュレーションしたものである。

太陽のおよそ10倍より重い星は、赤色巨星まで進化した後、中心がつぶれて中性子星(パルサー)を生み出す。このできたばかり中性子星から高エネルギーのニュートリノが吹き出し、中性子星の外側の物質を吹き飛ばす現象が超新星爆発であると考えられている。

ただし、実際にこのシナリオに従って爆発するかどうかには議論があり、シミュレーションで確かめる必要があった。今回の計算によって、太陽の13倍重い星がニュートリノで加熱され、爆発する様子を再現することに成功したという。

画像はエントロピーを可視化したもので、熱い爆風の部分に赤い色を付けている。2011年にCfCAの前システムであるXT4でも同様の計算が行われたが、その時には空間解像度が荒く、細かい対流構造を再現することができなかった。

今回の計算は前回のおよそ100倍の規模の計算資源を使用し、世界最高の空間解像度(384×144×304)を達成している。中心から吹き出てくるニュートリノに関しても、そのエネルギーごとにグループ分けし、複雑な反応式でもって計算された。さらに、前回は含めることができなかった種類のニュートリノ反応も考慮してあり、より現実的な結果が得られたのである。

今回の計算はアテルイの1368ノード(2万1888コア)を1日分使用することで、0.02秒分のシミュレーションを進めることができる(アテルイは1512ノード、2万4192コア)。爆発が起こるかどうかを判断するには0.5秒ほど計算する必要があるため、アテルイ並みの並列計算機を使用しなければ実行できない計算だ。

《デイビー日高》

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