【千葉匠の独断デザイン】eK/デイズを生み出した異例のデザイン協業

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三菱・eKワゴン
三菱・eKワゴン 全 12 枚 拡大写真
◆三菱バージョンと日産バージョンを並行開発

三菱と日産が軽の協業を本格化すべく設立した合弁会社NMKV。新型『eK』『デイズ』はその最初の成果である。NMKVが商品企画や購買、開発管理を担当し、設計開発の実務はNMKVから三菱に委託された。

では、デザインはどうかと言うと、三菱と日産の協業だ。初期段階ではお互いにアイデアスケッチを描き合い、議論を重ねたという。多くのスケッチから案を絞り込むときには、例えばA案の三菱バージョンは三菱が、日産バージョンは日産が描く。候補に上がった各案について、お互いに顔違いのスケッチを描いたわけだ。そうやって「どちらのブランドにも似合うデザインか?」を確認しながら2案を選び、クレイモデルに進んだ。

クレイモデルの製作作業は愛知県岡崎にある三菱のデザイン本部で行われたが、日産の担当デザイナーが岡崎に常駐し、2案のモデルそれぞれに三菱バージョンと日産バージョンを並行して開発。1案に決めた後も、ノーマル車とカスタム系(デイズではハイウェイスター)それぞれに三菱バージョンと日産バージョンのモデルを作った。

◆世界に例のないデザイン協業

資本関係がなく、親でも子でもない2つの会社がニューモデルを共同開発することは、これまでにもあった。例えばトヨタの欧州専用スモールカーの『アイゴ』は、フランスのPSAプジョー・シトロエンとの共同開発車だ。しかしあのときはトヨタとPSAがそれぞれデザインを提案し、競作した。その結果エクステリアもインテリアもトヨタ案を選択。それをベースにトヨタがアイゴ、PSAが姉妹車のプジョー『107』シトロエン『C1』のデザインを仕上げていった。1案に決めてからブランドごとの差異化を図る、というプロセスだ。

しかしeK/デイズは違う。三菱案と日産案が競作したわけではないから、基本のボディシェルを共用しながらも、それがどちらのデザイナーの発案から生まれたとも言えない。勝ち負けのつく競作と違って、お互いに名誉を守れる。一方のデザインを決めてから、それをベースに他方を差異化しようとすると、すでに決まっている部分が制約条件になりがちだが、今回のeK/デイズの進め方ならそれもない。おそらく世界に例のない、実に巧妙なデザイン協業が展開されたのだ。

◆トリプルアローズライン

新型eK/デイズのエクステリアで、まず目を引くのはボディサイドの彫りの深いキャラクターラインだ。ヘッドランプからフロントドアへ、前輪の後ろからリヤコンビランプへ、という2本のライン。三菱ではこれにドア下端のラインを加えて「トリプルアローズライン」と呼ぶ。

2本か3本かは問題ではない。大事なのは、これらのキャラクターラインの彫りの深さだ。寸法枠に縛られたなかで室内の広さを競ってきたのが、軽自動車の歴史。全幅1475mmで室内幅を広げようとすれば、おのずとエクステリアのドア断面は薄くなり、ボディサイドが平板な印象になってしまう。それを克服して質感の高いフォルムにするのが、デザイナーたちの大きな狙いだった。

新型eK/デイズの室内幅は1295mm。ハイトワゴン系トップのムーヴの1350mmには遠く及ばないが、『ワゴンR』と同じ寸法を確保している。それでこんなに彫りの深いキャラクターラインを実現できたのは、ちょっと驚きだ。キャラクターラインの位置に合わせて、ドア内部のパワーウインドウ・モーターやスピーカーなどのレイアウトをピンポイントで工夫した成果だという。

◆拡大する軽市場の自縄自縛

今の軽市場は全高によって3つのカテゴリーに分かれる。1500mm台前半のセダン系、1600mm台前半のハイトワゴン系、1700mm台のスーパーハイト系だ。先代eKは1550~1570mmという中途半端な全高だったが、新型eK/デイズは1620mm。『ムーヴ』と同じで、ワゴンRより20mmだけ低い。売れ筋のハイトワゴン系として認知されるためには、この寸法が必要なのだ。

それはわかるが、既存の売れ筋に縛られているようにも思える。eKカスタム/デイズ・ハイウェイスターはボンネット前端の高さを上げ、厚みのあるノーズに大きなメッキグリル。押し出し感の強さを競うカスタム系のトレンドに、ぴったり合わせたデザインだ。フロントのベンチシートはハイトワゴンのお約束だし、ノーマル車は明るい内装色、カスタム系はブラック内装というのも定番の組み合わせである。

軽市場が拡大するなかで売れ筋を外せない…裏を返せば、提案性のあるデザインはできない。これはeK/デイズに限らず、軽自動車全体が抱える問題だ。今の売れ筋は過去のチャレンジが功を奏した結果。このままチャレンジを手控えていたら軽のデザインがマンネリ化し、市場の成長の足かせになるだろう。私はそれが心配である。

《千葉匠》

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