【ホンダ フィット 新型 発表間近】ハイブリッドはアコードと同じ新リチウムイオン電池を投入

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フィット ハイブリッド プロトタイプ
フィット ハイブリッド プロトタイプ 全 12 枚 拡大写真

9月デビュー予定のホンダ・3代目『フィット』。なかでも注目度が高いハイブリッドモデルの新システム「i-DCD」の全容が明らかになってきた。

◆モーター出力はCR-ZのIMA比で1.5倍

エンジンは新開発1.5リットルアトキンソンサイクル、変速部は本田技術研究所と独シェフラーが共同開発したデュアルクラッチ変速機「i-DCT」に、薄型モーターを遊星ギア結合したものというのは既報のとおり。

モーターは現行ハイブリッド「IMA」と同じく、低コストが特徴の集中巻き方式だが、能力は22kW(約30馬力)と、現行『CR-Z』の1.5倍。エンジンとモーターが完全に切り離し可能となったこともあり、モータートルクだけで発進可能な、いわゆる“ストロングハイブリッド”となる。

◆アコードと同じ、ブルーエナジー製リチウムイオン電池セルを採用

モーターに電力を供給するバッテリーだが、セル自体は先にデビューした『アコードハイブリッド』に搭載されるブルーエナジー社製のリチウムイオン電池と同じもの。

正極材料はパワー、安定性、耐久性に優れる新世代の三元系(コバルト-マンガン-ニッケル)で、定格電圧は3.6ボルトだ。アコードの3分の2にあたる48セルを直列につなぎ、総電圧は172.8ボルトとなる。バッテリーパワーだが、1モーターのパラレルハイブリッドという形式上、モーター出力と同じ22kWは確実に出せる。三元系正極電池のエネルギー密度を考えると、かなり余裕のある設計と考えられる。

新ハイブリッドシステムと並んで燃費性能向上に寄与するのは、モーターの発電抗力だけで0.2G超に相当するブレーキをかけることが可能な電動サーボブレーキ。油圧ブレーキを使う急ブレーキの時以外は、減速エネルギーの多くを電力としてバッテリーに蓄えられる。

◆実燃費に効くフル電動エアコン

エアコンはフル電動式に全面変更。従来型のIMAの場合、エネルギー回生量やバッテリー容量が小さいため、電動化してもバッテリーの電力をあっという間に消費してしまい、燃費向上にあまり寄与しなかった。IMAモデルでは旧型『シビックハイブリッド』に電動・エンジン併用型のハイブリッドコンプレッサーが採用されたが、効果が薄いために後が続かなかった。

新型フィットハイブリッドの場合、バッテリー容量やエネルギー回生量がIMAに比べて格段に大きくなったことで、電動式を使う意味が生じたと考えられる。夏場でもコンプレッサーを回すためだけにエンジンをかけるというもったいない現象は、IMAに比べてぐっと少なくなるものと思われる。

◆ハイブリッドの販売比率をどれだけ高められるかも鍵に

様々な新機軸を採り入れた新型フィットハイブリッド。高価な動力用電力制御装置が1系統ですむだけでなく、シリーズハイブリッド運転も行う2モーター式に比べるとパワー半導体もより小型・安価なもので十分であるなど、パラレルハイブリッド方式のメリットを維持しつつ、性能を高めるという策に出たホンダ。「コストだけなら間違いなくホンダさんの圧勝」とトヨタの開発陣も認めるほどだったが、IMAの性能の低さからカスタマーにそっぽを向かれ、量産効果が得られずに結局コストが高止まりしてしまったという痛い経験もあってか、新システムの仕様を見ると、カスタマーに喜ばれそうなことは何でもやるという意気込みが感じられる。

一方で、性能を上げるためにリチウムイオン電池やDCTなど、今のままでは高価な部品も使われるなど、フィットハイブリッド1モデルでは利益を出すのが難しいという課題も残る。フィットハイブリッドで一刻も早く“ホンダのハイブリッドは性能が悪い”というイメージを払拭し、i-DCD搭載車種を増やして量産効果を高めるための布石としたいところだろう。ホンダにとっては、屋台骨のひとつであるフィットの総販売数を伸ばすだけでなく、ハイブリッドの構成比率をある程度以上維持することが、3代目を成功作と呼ぶ絶対条件だ。果たしてカスタマーが新型フィットハイブリッドをどう見るか興味深い。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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