JAXA 宇宙航空研究開発機構は、2013年8月27日の打ち上げ予定日に中止となったイプシロンロケット初号機について、中止の原因を管制センターの地上装置がロケット搭載コンピュータから姿勢データが届くよりも70ミリ秒早く姿勢計算を開始したためと説明した。
説明会には、JAXAより森田泰弘プロジェクトマネージャ、長田弘幸打上管制体企画主任が登壇し打ち上げ中止の原因について説明した。ロケット搭載コンピュータ(OBC)が打ち上げ20秒前に起動しロケットのロール角(機軸周り)姿勢を計算しデータを送信したところ、地上管制センター側の監視装置(LCS)はそれよりも早く姿勢の監視を始めていた。データが得られないためLCSは姿勢異常と判断し、自動的に打ち上げシーケンスを中止した。
OBCの計算開始とLCSの姿勢監視との間の時間的ずれは70ミリ秒で、ロケットと管制センターを接続したネットワーク上で複数のコンピュータを介したことによる演算の遅れが重なったもの。複数のコンピュータにはOBCそのもの、また自動点検装置ROSEも含まれる。
この遅延によるエラーは再現性のあるもので、8月20日に打ち上げリハーサルを行った際にも同様のことが起きていた。しかし、リハーサルでは他の設定ミスが見つかったため、このエラーが起きても打ち上げシーケンスを自動停止しない状態で行っていた。リハーサル段階でエラーを洗い出して対応できなかったことについて、森田プロジェクトマネージャは「計算機の時間のずれに配慮できていなかった。深く反省したい」としている。
原因が打ち上げシーケンスを監視するコンピュータのソフトウェア的なものと判明したため、今後はOBCから姿勢データを取得してからLCSが姿勢監視を開始するなどの対応をとって対処するという。他にも同様の時間差の影響を受ける部分があるのか点検を行う。長田主任によれば、JAXA内の他の部署から有識者による評価チームを組織し、新たな打ち上げに向けて総点検を行うとしている。新たな打ち上げ日については、森田プロジェクトマネージャは9月30日までのウインドウ内に打ち上げたいとしたものの、総点検に要する日程もありまだ決定できないとのことだ。