オーストラリアの科学者、アボット新内閣に懸念表明

エマージング・マーケット オセアニア

大臣の肩書きから科学の名前消える

 トニー・アボット新連邦首相(未任命)は、選挙公約でも「炭素税廃止」を掲げ、保守連合の気候温暖化政策「直接行動」計画は、科学者もエコノミストもほとんどその実効性を支持するものがいない状態で、アボット氏自身が、「直接行動予算内で2000年水準の5%という目標が達成できなくとも追加予算はない」と発言するなど、初めからやる気のない政策で、かねてから「気候温暖化は現実」と言ったかと思うと、「気候温暖化はたわごと」と言うなど転変甚だしい。

 9月16日のアボット初組閣発表でも、これまであった科学の名前が閣僚の肩書きから消えており、科学者の間からは、アボット氏の科学軽視も甚だしいと懸念する声が挙がっている。

 アボット氏は科学が苦手らしく、保守連合版ブロードバンド・ネットワーク発表でも、インターネットに詳しいマルコム・タンブル影の通信相(当時)とは異なり、かなりいい加減な知識を披露して世間の苦笑を買ったばかりか、タンブル氏が国内インターネット初期のプロバイダーに投資したことがあっただけで、「タンブル氏がオーストラリアのインターネットの創始者」と言ってさらに苦笑を買った。

 同日、オーストラリア科学アカデミーの科学政策担当幹事、レス・フィールド教授は、「大臣の肩書きから科学の文字が消えたのでアカデミーでも驚いている。これまでに発表された大臣名にも科学の名前がないので残念な思いだ。今後何日かで科学担当大臣を発表することを期待している」と語っている。

 そのことを質問されたアボット新首相(未任命)は、「連邦科学産業研究機構(CSIRO)が産業大臣に答申する。昔から科学は産業の一部門だ。科学大臣の肩書きは要らない」と答え、自らの科学観を披露している。これに対して、NSW大学の研究担当副学長補を務めるフィールド教授は、「CSIROは科学の一機関だ。科学研究や高等教育あるいは大学の一部門でもCSIROと密接な連携関係にあるならそれもいいだろう。しかし、これまでのところ、科学が産業大臣の一部門なのかそうでないのか十分に詳しい発表がない段階でもなんとも言えない」として、「高等教育部門が科学研究と密接な連携を保つことの方が論理的ではないか」と語っている。また、Science and Technology Australiaのカトリーナ・ジャクソンCEOは、「国内の科学者が、科学担当大臣はどこに消えた?と首を傾げている。今日の大臣発表に科学の名が消えているので科学者はみんなあわてている。とにかく、科学がどの大臣の下に入るのか、みんな固唾を呑んで見守っている」と語っている。(NP)

科学者、アボット新内閣に懸念表明

《Nichigo Press》

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