2100年に自動車を動かすのはどのエネルギーか…ロイヤル・ダッチ・シェルが描く持続可能社会のシナリオ

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ロイヤル・ダッチ・シェルが描く持続可能社会のシナリオ
ロイヤル・ダッチ・シェルが描く持続可能社会のシナリオ 全 2 枚 拡大写真
10月28日、2013年春にロイヤル・ダッチ・シェルグループが発表したグローバルシナリオ『New Lens Scenarios』をもとに、未来のエネルギー趨勢と温暖化を議題としたシンポジウムが東京大学本郷キャンパスにて開催された。


◆エネルギーの趨勢は政府と民衆のパワーバランスのもとに

Cho Oong Khong博士 (Shell Internationalシナリオプランニング専属グループ)によると、エネルギー需給がこれからどう増減するかは二通りのシナリオに左右されると述べる。すなわち、“マウンテンズ(Mountains)”シナリオと“オーシャン(Oceans)”シナリオだ。いずれのシナリオに進むかにより、当然結論も異なるという。

マウンテンシナリオとは政府の力が強い低成長シナリオ。オーシャンシナリオとは「People`s Power」が端的に表すような、民衆が台頭するシナリオだ。後者のシナリオでは、新興国の順調かつ急速な成長により、資源問題と地球環境問題の深刻化すると予測される。

2つのシナリオの展望については、米国で行われた調査結果が興味深い。この調査ではここ数年、「政府を信頼している」人の割合大幅に低下しており、したがって政府の縮小も予想される事態だ。しかしこの傾向が反転して「人々は資本主義を信じていないため国家の保護を求める」ようになると、国家システムの復帰と同時にグローバル化の減速の可能性が示されている。また2つのシナリオを考える上では気候・人口移動・テクノロジー等様々な要素が影響し合う。例えば、テクノロジー分野では通信革命は個人の力を強め、データ革命は国家の力を強める、といったようにだ。


◆「水素・電気」はたまた「バイオ・液体燃料」か

では2つのシナリオで想定される未来の旅客輸送(World passenger transport)エネルギーはどうなるか。

Esther Bongenaar氏(Shell Internationl)によると、マウンテンシナリオでは水素と電気による発電がかなりを占めることになる。またオーシャンシナリオではバイオ燃料や液体炭化水素燃料がより大きなシェアを占めると予測している。

水素燃料に関しては藤井康正氏(東京大学大学院工学系研究科教授)が懐疑的コメントを添えており、燃料電池自動車が不要になる可能性も示唆した。現状は水素以外により良質なものは無いが、効率の良いバッテリーができれば事態は大きく変わる可能性も出てくると藤井氏は見ている。

ただ、Cho Oong Khong博士はあくまで「シナリオとは予想ではない。起こりうるストーリーであり、重要なのはエネルギーシナリオを形作る多様な視点を理解することである」と述べ、様々な外的・内的要因によって左右される長期的なエネルギー政策においては、視点の多様性が重要であると強調してディスカッションを締めくくった。

《北原 梨津子》

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