【達人に聞く! スマートなSUV購入術】消費税率アップ目前、いま本格派SUVが魅力的な理由とは…評論家座談

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高山正寛氏(左)と竹岡圭氏
高山正寛氏(左)と竹岡圭氏 全 18 枚 拡大写真

国内の自動車市場ではハイブリッドカーや軽自動車/コンパクトといったエコカー勢のマーケットが拡大しているが、かつては人気を博していたセダン/クーペは縮小傾向に歯止めがかからない状況だ。

一方で、SUVは堅調な支持を得ており、ドイツ車勢の攻勢に加え、東京モーターショーに合わせて日産が『エクストレイル』をモデルチェンジし、トヨタは『ハリアー』を復活させた。また『ランドクルーザー プラド』や『FJクルーザー』『パジェロ』といったヘビーデューティのクロカン車も根強い人気を保っている。

増税を前に財布の紐を固くする人もいれば、消費税アップを前に買いたいものを買っておこうと考える人もいるはず。今回はSUVをテーマに、自動車評論家の高山正寛氏、竹岡圭氏の2人に、これまでのSUVのトレンドと最新の動向を語っていただいた。

◆国産のビッグネームが相次いでモデルチェンジ

----:SUV関連のニュースを振り返ると、10月に日産が新型の『エクストレイル』を発表し、まさに今日『ハリアー』がモデルチェンジを受けました。ともすればコンパクトカーやハイブリッドカーに注目されがちでしたが、これらの新型車は久々のSUV関連の大きな話題です。最近のSUVに関して思うところはありますか。

高山:新型のエクストレイルはいい車だと思いますよ、新しいデザインも世界の流れを見ると“いつまでも無骨なだけでいられない”というのはあると思う。ただね、ディーゼルを止めたとか、ハイブリッドは一年後とか、先進技術がちょっと物足りないとか、“ん?”と思う部分もあるけど…。

竹岡:新しいエクストレイルはスタイリングが垢抜けましたね。日産ファミリーの一員らしいデザインで、女性にも受けが良さそうです。

高山:日産でいうと『ムラーノ』なんかは、賛否両論いろいろ言われるけど、よくよく見ると素材感やデザインなんかは頑張ってるし、イケイケで“頑張ろう!”といったいい時代の日産の雰囲気があって評価ができる。

----:北米ではカブリオレモデルもありますしね。

竹岡:デザインの面でランドローバーの『レンジローバー イヴォーク』と比べると、ムラーノはちょっと出てくるのが早かったんだよね。みんなデカいデカいっていうけどイヴォークと比べてもそんなに違いはないし、やっぱり見た目がボリューミーに見えちゃったのかな?

高山:ムラーノは北米が大事なんでしょうがないと思うけど、国内市場ではハリアーと差がついちゃいましたね。

◆ハリアー復活の影響は

----:その『ハリアー』ですが、レクサス『RX』としてではなく、トヨタブランドのSUVとして復活して発表されます。レスポンスでもハリアー関係の記事は人気です。

高山:ハリアーには“国産の高級SUV”というジャンルを打ち立てたブランド力がありますからね。レクサスの『RX』とデザインの差別化を出しつつ、トヨタブランドの高級車として、販売店のほうでもやっぱり欲しい車だったんでしょうね。

竹岡:レクサス RX も女の子からの人気は高いんですよ。レクサスという上品なブランド感と、SUVの逞しさがあって。

高山:国内のSUV市場をみると、一時期のブームは去ってしまったけど、一定数の固定客はいるんだよね。輸入車勢が新車を投入して新しい顧客を獲得しカンフル剤としての役割を果たし、スバル『XV』やマツダ『CX-5』といったライトSUVが土壌を支える構造がある。『フォレスター』は走りをイメージさせるデザインに大きく変えて成功してますよね、そういう意味で、新しいハリアーはすごくいいタイミングで投入していると思います。

高山:世界的に見ても、各社のSUVに対する注力の仕方は、顕著に出ていますよ。今回の東京モーターショーでも、三菱自動車は“会社の資産としてSUVを大事にしたい”と答えを出した。要するにそこでビジネスを作り上げようということなんですね。スバルもXVやフォレスターが予想以上に業績に貢献してますし、マツダでは今までビジネス的あまり成功できていなかったSUVカテゴリーで、CX-5が成功している。

竹岡:CX-5はチャレンジングでしたね、SKYACTIVを全面投入する新世代商品群の第一弾を“SUVで出しちゃうの?”って思っちゃいましたもの。そう言われると、ランボルギーニもコンセプトカーでSUVを出していたし、ベントレーとか高級プレミアムブランドもSUVを出してるから、これからもトレンドは続くんでしょうね。

----:SUVの成功が自動車メーカーの業績に大きく影響するのは確かに感じます。では、ユーザー心理としてSUVに乗る魅力は何があるのでしょうか?

◆“クロカン”から間口を広げた“ライトSUV”

高山:昔で言うと初代のホンダ『CR-V』が異様に売れて、月販1万8000台でホンダの中で一番売れた時期があったり、2、3代目のパジェロもそうで10年乗ってもリセールバリューが落ちなくて、猫も杓子も“SUVだ!”といた時期があったのですが、それはブーム以外の何者でもなかったんだと思います。

竹岡:パジェロは一時期ブランド品みたいに憧れの対象だったもん。

高山:一方で、“あんな大きな車運転したくない”と言っていた奥さんが、乗ってみたら“結構見晴らしが良くて運転しやすい”とその魅力にハマってしまう人もいたんですが、やはりコンパクトカーや軽自動車などへのトレンドの変化もあって、大ヒットの後に続く成功作がなかったのが痛い。成熟に至る前にブームが終わったという印象がありますね。

竹岡:最近の傾向で言うとライトSUVが増えて、女の子からすると選択肢が増えましたよね。

高山:女性は、デザインとカラーで選んでるみたいだね。

竹岡:これは、スポーツカーでも共通していることなんだけど、最近の若い女子って、“かっこいい車は自分で乗りたい”っ思っているみたい。一方、男性には便利なミニバンに乗って欲しいんだって。20代の女の子にいろいろ聞いて確信したんだけど、今の女の子は主張も強いし、自分はかっこ良く見せたいし、派手なものを持つことにも抵抗がないみたい。

高山:ライトSUV系では竹岡さんの言う通りで、この間、50人ぐらいの女の子に話を聞いたんだけど、今だと“イヴォーク”にやられちゃうみたいだね。ただ、男のモテ度で言うと、ライトSUVより、本格SUVのほうが“グッ”とくるみたい、なんでかって言うと“自分で運転できないから”というのがあるから。

竹岡:確かにそれはあるかも。

◆車格と迫力で魅力度高いランドクルーザー プラド

----:本格SUVとしては、元はパジェロ最大のライバルとして登場した『ランドクルーザープラド』が先頃マイナーチェンジしました。

竹岡:パジェロは印象薄くなっちゃったけど、ランドクルーザーは男子的なイメージを維持していますよね。

高山:プラドに関して言うと、デザインを含めてユーザー層の間口を広げてますよね。エアコンは独立して動くし、電動ルーバーなんてのもあったりして、内装とか装備を見た感じでは、SUVの『クラウン』と思ってもらえるんじゃないかな。

竹岡:車高も高いし、クラウン以上の押し出し感はあると思う。乗り心地もいいし。

----:価格表見ると4気筒モデルであれば確かに300万円台前半(TX:318万円)からと、車格と迫力の割には安い印象です。この価格帯で、これだけの押し出し感がある車ってないですよね。

高山:そうそう手に入らないです。男っぽさをアピールができる車だよね。

竹岡:価格は魅力的だけど、安っぽさがないし、ブランド力もあるし、乗ってる人も良い人そうに見えるよね。本家の『ランドクルーザー』よりも確実にリーズナブル。

◆中古車相場=下取り相場を見て買うというのも、お得に乗るコツ

----:今回の座談のために国内で販売されているSUVを一通り調べたのですが、改めて見直すと、ライト系から本格派までSUVと呼ばれる車種がここ数年で非常に増えていることに気づかされました。SUVとも呼べない“クロスオーバー”というカテゴリーも登場していますし。消費税アップ前に新車の購入を考える人もいるかと思いますが、SUVを購入する上で考慮しておくポイントはありますか?

高山:私はもともと中古車雑誌の編集をやっていた経験もあって中古車相場にはうるさいのですが(笑)、話に出たSUV系で特に面白いのは、ヘビーデューティのクロカンは中古車相場で安定路線なんです。国内では言うまでもなくパジェロとプラドなのですが、とくにプラドの残価率はスゴイ。一方、国産ライトSUV系は、流行り廃りがあってユーザーの出入りが激しいので、中古車相場がガクンと落ちてしまいますが、プラドは一定の購入者層があるのに対して、中古車のタマが減っているというのがあるんです。輸入車勢では人気なのはやっぱりイヴォークですね。こちらは本格派ではありませんけど。

竹岡:男の人は下取り相場をすごく気にしますよね(笑)。女性はあまりそうでもないんだけど。

高山:“好きなら何乗ってもいいじゃん”というのは僕の中にもあるんですが、下取りに出した時に値段を聞いて、“俺、これにいくら出して買ったと思う!”とか思って、ガッカリしちゃうじゃない(笑)。本格派SUVの傾向として、買う時にちょっと高いかなと思っても損はしないですよという話です。

竹岡:そうすると、SUVの購入層には走行性能とかは気にしないで雰囲気を楽しみたい人と、本格的な走行性能が欲しい人がいて、中古車市場では本格的な走行性能を持つ車の方が高く売れるというのでしょうか?

高山:そういう傾向はありますね。それと、最近ではプラドやレンジローバーのような本格的なクロカン車でもオフロードや岩場をガンガン走る、ということもなくなってきましたので、流通している車両の状態も粒が揃っていますから相場も安定しているのだと思います。新車を買うときには、やっぱり下取り相場をある程度考慮に入れた方がお得なんです。

《構成・まとめ 椿山和雄》

《レスポンス編集部》

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