【COTY 選考コメント】時代の空気をしっかり取り込んでいるパンダに好感…森口将之

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フィアット・パンダ
フィアット・パンダ 全 6 枚 拡大写真

フィアット『パンダ』の得票は27点。そのうち3分の1以上の10点を、ひとりで投じてしまった。もちろん確固とした理由があっての配点だ。

この種の賞典は、エントリーする企業の力関係が得票に影響することが多い。しかしその傾向でいくと、無名のベンチャー企業が素晴らしい自動車を作っても、「販売網が未整備」のひと言で片付けられる可能性がある。それではいつまでたっても時代が変わらない。よって僕は組織の規模を得票に加味することは一切しない。

そういう土俵に立って判断すると、5月に某誌の企画で、新旧3台のパンダを連ねて約1000kmを走破した体験が、心に残っている。

小さなボディからは想像できないくらい、疲れなかった。その理由がシートやシャシーの良さだけでなく、デザインとエンジンにあることも知った。デキがいいだけでは、距離を重ねるにつれて飽きてくる。しかしパンダは、イタリアらしい見る者を楽しませるデザインと、ツインエアエンジンの鼓動のおかげで、いつまでも新鮮な気分だった。

これこそ価格と燃費ばかり追求する傾向が強い国産コンパクトカーにいちばん足りない部分だ。公共交通の復権が進む現代社会においては、自動車はなによりも所有する満足感、操る喜びが大切になっている。パンダはそんな時代の空気をしっかり取り込んでいる感じがする。

現在の輸入車の主力を占めるドイツ車とも違う。ドイツ車の多くは、楽しさ=速さという呪縛から抜け出せない。環境問題が切迫しているのだから、スピードを快感に据える思考から脱却してほしい。しかも日本は100km/h制限。ゆっくり流しても楽しめるパンダこそ、この国にふさわしい。

イタリア車はとかく熱さや色っぽさという尺度ばかりで評価されるけれど、スローフードの起源がこの国にあることを思い出してほしい。そんな国から生まれたスロービークルこそ、今という時代にふさわしい1台だと感じた。

森口 将之 │ 自動車ジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得意としており、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。一方で趣味としての乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。試乗以外でも海外に足を運び、現地の交通事情や都市景観、環境対策などを取材。二輪車や自転車にも乗り、公共交通機関を積極的に使うことで、モビリティ全体におけるクルマのあるべき姿を探求している。日本自動車ジャーナリスト協会、日仏メディア交流協会、日本デザイン機構、各会員。

《森口将之》

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