ホンダが11月22日に発売した軽自動車の新モデル『N-WGN』にごく短時間試乗する機会があった。走行距離5.1km、時間にして20分程度の市街地試乗でクルマの良し悪しなど判断しようもないが、パッケージング的に近い『N-ONE』との違いなどを中心にファーストインプレッションをお届けする。試乗車は合成皮革などを用いたシートなど充実装備のカスタムで、ターボエンジンを搭載していた。
CVTの設定向上による当たりの柔らかさ
走り始めてまず印象的だったのは、コンパクト化された新世代CVT(無段変速機)のチューニングがN-ONEに比べて相当こなれてきた感があったこと。発進時にアクセル開度を大きめにとっても、エンジン回転数2000rpm強くらいでトルクを生かしてスピードを乗せるセッティング。
N-ONEの場合、加速感の演出狙いもあってか、発進時にスロットルを強めに踏むと回転がオーバーシュート気味になる傾向があった。それと比べると加速度のコントロール性がよく、スムーズに燃費良くクルマを走らせるのには好都合と思われた。
乗り心地では、比較的大きな路面のギャップを拾った時の衝撃吸収性についてはN-ONEに比べて優れている。また、路面がうねっている時のピッチング(前後方向の揺れ)もN-WGNのほうが小さく、フラット感のある落ち着いた乗り心地だ。
シートの感触は良好、ノイズには課題
シートは柔らかいタッチで、フィット感は非常に良い。N BOXに始まった軽自動車のNシリーズでは、ホンダ系シートメーカーのTSテックがいい仕事をしている。夏にN-ONEで東京~鹿児島を一般道経由で往復したが、現地での移動も含め3000km以上のドライブにも十分耐えられるほどのシートの出来で、ロングツーリング性能ではスズキ『スイフト』と並んでコンパクトカー随一と言っていい。短時間の試乗ではそのあたりの性能を確認するすべはないが、印象としてはN-WGNのシートの出来も悪くなさそうであった。
一方、荒れた舗装面のざらつきを踏んだときなどの微振動の吸収については、N-ONEが軽離れしたレベルの高さであるのに比べて明らかに劣っていた。また、ロードノイズやパワートレインのノイズの遮断についても、軽自動車としては悪くはないが、N-ONEには一歩譲る。
人によっては気になる可能性があるのは、アクセルオフの時に「キーン」といった感じの金属摺動音のようなノイズが結構大きめに出ること。N BOX、N-ONEをドライブした経験にかんがみれば、CVT自体からのノイズとは考えにくく、燃費向上のため、アクセルオフ時にジェネレーター(発電機)に集中的に発電させている影響である可能性が高い。エコ性能重視ゆえの特性であろうが、できれば年次改良で遮音を向上させたほうがいいと思われる部分だ。
新採用の機能が低燃費に貢献
最後に燃費。5km強という短距離ではあるが、暖気済み、1名乗車、エアコンOFFという条件で走ったところ、燃費計の表示は17.4km/リットル。信号だらけで平均車速15km/h台という悪条件であったことを考慮すれば、まあまあ良好な数値だ。過去の経験に照らし合わせると、アイドリングストップ機構を持たないN-ONEのターボモデルの場合、同じような走行条件だとおそらくリッター14km台。ホンダ軽のターボモデルとして初めてアイドリングストップ機構を装備したことによる効果はそれなりにあるとみることができよう。