【マツダ技術説明会】グローバルな常識と逆張りをするマツダのブレークスルー

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マルチフューエル対応のアクセラ
マルチフューエル対応のアクセラ 全 7 枚 拡大写真

19日にマツダR&Dセンターにて、マツダ技術説明会が開催された。商品戦略本部 本部長 工藤秀俊氏は、スカイアクティブテクノロジーを支えたブレークスルー技術についてのプレゼンテーションを行った。

工藤氏は、ゼロエミッション、CO2削減、PHVやEVなど車両への法的な構造要件、またCNG、シェールガス、バイオ燃料などマルチフューエル化など自動車における環境性能の要求は、グローバルでさらに厳しくなっていくと述べる。

マツダでは、この社会的要請に対して「ビルディングブロック戦略」を打ち立てた。この戦略は、車のボディ、シャーシ、エンジンなどの技術を刷新し、新しい時代の要求に応える車を開発し、その上で環境性能に関する技術を積み重ねていくことで、自動車全体に課せられた課題を克服していこうという考え方だ。

そのベース技術がスカイアクティブテクノロジー(SKYACTIV-CHASSIS、SKYACTIV-BODY、SKYACTIV-G、SKYACTIV-D、SKYACTIV-DRIVE)である。車のシャーシ、ボディ、エンジン、トランミッションなどすべてをスクラッチで開発しなおすことで、数々のブレークスルーを実現している。

通常、新車の開発といってもシャーシやエンジンなどすべてを図面から引き直すことは考えられない。常識的に考えればコストが膨大になるからだ。サイズの違う新型車の開発といってもシャーシ、エンジンブロック、トランスミッションなどプラットフォームを共通化するのがグローバルでの常識だ。

では、なぜマツダはビルディングブロック戦略において、ベース技術を新規開発として刷新することができたのだろうか。工藤氏(SKYACTIV-G、SKYACTIV-Dの開発プロジェクトにも携わったエンジニアである)は、「例えば、エンジンをダウンサイズするため、シリンダーブロックなど共通化部品から設計をスタートさせます。すると、排気量など異なるごとにエンジンの燃焼パターンが異なります。そして、エンジンのキャリブレーション(校正・調整)にコストがかかってしまいます。マツダは排気量が異なっても同じ燃焼パターンになるように設計し(コモンアーキテクチャ構想)、そのため開発現場と生産現場が協力しエンジンブロックを作る(フレキシブル生産構想)ことで、開発期間を半分、キャリブレーションリソースを1/3に減らすことができました。」という。

つまり、従来方式の開発はハードウェアの開発や設備投資は下げることができても、製品として仕上げるためのキャリブレーションやR&D投資を下げることはできない。しかし、マツダ方式(「モノ造り革新」と呼んでいる)なら、ハードウェアの開発コストもR&D投資も下げることができるわけだ。

設計の幅や自由度が増したからこそ、ガソリンエンジンでもディーゼルエンジンでも圧縮比が14(フェラーリ458のエンジンで12.5、一般的なディーゼルが16前後)という型破りなエンジンが実現できたといえる。このような設計をしたのは、冒頭に述べたこれからの車に求められる環境性能や燃費性能を実現させるためだ。しかも、一般の自動車メーカーでは、ガソリンエンジンなら過給器+ダウンサイジング(=低圧縮比)で、ディーゼルなら高圧縮比で排気ガスのクリーン化というアプローチがトレンドであるところ、すべて逆張りによるブレークスルーを実現している。

前述したように、ビルディングブロック戦略は、こうして作られたベース車両に、さまざまな技術をアドオンしていくことで本来の目標である環境性能を達成するプランだ。マツダでは、スカイアクティブテクノロジー車に、アイドリングストップ技術(i-stop)、減速エネルギー回生システム(i-ELOOP)、モーター駆動技術(デミオBEV、アクセラHEV)、マルチフューエル対応(アクセラHEV)を次々と実装・製品化していった。

特筆すべきは、これらの技術を実現した逆張り手法ではなく、ハイブリッドやダウンサイジングカー並みかそれ以上の実用燃費・トータルでの環境性能を内燃機関車両で達成していることだ。2020年になっても自動車の動力源の90%に内燃機関が残るという予想もあることを考えると、この意味は非常に重い。

工藤氏は最後に、アクセラHEVでビルディングブロック戦略当初の計画は達成したというが、「マツダ伝統のチャレンジスピリットでさらなる技術進化に向けた次のステージをめざしたい。」と新たなブレークスルーへの意欲を語ってくれた。

《中尾真二》

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