ガソリンエンジンの自己着火、課題と実現への目算…次世代SKYACTIV開発者に聞く

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ガソリンエンジンの自己着火、課題と実現への目算…次世代SKYACTIV開発者に聞く
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世界一の高圧縮ガソリン・エンジンと世界一の低圧縮ディーゼル・エンジンを現実のものとしたマツダのスカイアクティブ・テクノロジー。この技術に対する評価が世間一般的に非常に高いのは、技術達成の困難さも当然あるだろうが、誰もが「そんなことは不可能だ!」という常識に挑戦して乗り越えたという、ある種の痛快さが、その誕生に備わっているからではないだろうか。

ガソリン予混合圧縮自己着火技術へのチャレンジ

そんなマツダは、次世代のスカイアクティブ・テクノロジーでも、我々を驚かせてくれそうだ。

2013年12月に開催された「マツダ技術説明会」において、マツダのパワートレイン開発本部長である人見光夫氏は、次世代のスカイアクティブ・テクノロジーの一部を次のように紹介した。

「本当に、次のステップで大きく燃費を向上させようとすると、一様にまぜた状態のリーンバーンでないと、飛躍的な燃費改善はできません。だから、ガソリンなんですが、ディーゼルのように圧縮しただけで燃えるようなHCCIにチャレンジしています」と人見氏は言う。

HCCIは予混合圧縮自己着火(Homogeneous Charge Compression Ignition)のことだ。あらかじめ、空気とガソリン燃料を混ぜたもの(予混合)を燃焼室に導入し、ピストンの圧縮によって、自己着火させるもの。高い効率を実現できるという次世代のエンジンの燃焼方式だ。もちろんマツダだけでなく、他の自動車メーカーも、その実用化に取り組んでいる。しかし、現実のところ、研究がうまくいっているという話はなかなか聞こえない。

◆HCCIにまつわる困難な課題の数々

「HCCIは、すでにギブアップしているところもあります。何が問題かというと、非常に効率の高い領域が狭いんですね。それで諦める人もいます。苦労の割に、あまり燃費が良くならないので、やめる人もいます。また、寒いときとか、ものすごくエンジンが冷えたときは火花点火します。そこからHCCIへスムーズに運転移行させるのが難しくてやめる人もいます。あと、世界中で燃料性状がバラバラなのに、同じように燃やせるのか? というのに対して問題を感じてやめることもあります」と人見氏は、その困難さを説明した。

しかし、マツダは燃料噴射の工夫や可変バルブタイミングシステムの工夫などで、HCCI領域の拡大を実現したというのだ。また、EGRの活用により燃料性状の違いにも対応できるようにもしているという。そうした結果、すでにデビューしたスカイアクティブ・テクノロジーのエンジンに対して、HCCIを利用することで、約30%もの燃費を改善するという。

◆バッテリーEV並のCO2排出量めざす

「我々がどれくらいのレベルを目指しているのかというと、内燃機関において、バッテリーEVなみのCO2(排出量)です」と人見氏。つまり、火力発電所で(発電するために)燃料を燃やすのと同等レベルのCO2排出量を実現しようという狙いだ。

以前、マツダが世界一の高圧縮ガソリン/低圧縮ディーゼルの開発を発表したときも、あまりの志の高さに「本当に実用化できるのか?」と誰もがいぶかったものだ。しかし、彼らは、それをやり遂げて、世間をあっと言わせた。HCCIの実用化や内燃機関によりEV並の少ないCO2排出という目標も、マツダの技術陣は実現の目算があるからこそ、ここまで踏み込んだ発言ができているのだ。

《鈴木ケンイチ》

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