ティモール海海底ガス・油田分捕り
オーストラリアが日本を相手取って「捕鯨禁止」を訴えている国際司法裁判所(ICJ)で、世界でももっとも貧しい国の一つ、東ティモールが世界でももっとも豊かな国の一つ、オーストラリアを訴えた裁判が始まっている。
東ティモールは1999年にインドネシアから独立したが、オーストラリアは東ティモールの独立を熱心に後押ししていた。しかし、それは明るい一面で、暗い一面は東ティモール独立直後から一部のメディアで報道されていた。ティモール海の海底ガス油田に対しては東ティモールが両国の中間線を国境とすることを要求したが、オーストラリアは大陸棚と東ティモール独立前のインドネシアとの協定を根拠に国境線をはるかに東ティモール寄りにすることを主張した。結局、東ティモールはオーストラリアに寄り切られる形でオーストラリアの主張を受け入れたが、その過程でオーストラリア政府の諜報機関が東ティモール首脳をスパイしていたことが明らかになった。当時、東ティモール首脳はオーストラリア政府が用意した新居に移っていた。東ティモール側の資源も民間企業の協力で開発し、東ティモールが90%を受け取る事になっていたが現実には開発に携わるウッドサイド社がオーストラリア大陸に液化施設を設置するため、比率は50%程度に下がるとみられている。
最近になって、オーストラリア国内の諜報機関が東ティモール側の情報を盗聴していたことが、当の諜報機関の元職員の内部告発で暴露され、東ティモールはオーストラリアの不正行為を根拠に協定破棄を要求して国際司法裁判所に訴えた。その裁判の開始直前の昨年12月、オーストラリア政府の諜報機関ASIOが東ティモール側の弁護士の事務所や自宅、諜報機関元職員の自宅などを家宅捜索し、書類やコンピュータなどを押収する挙に出た。また、諜報機関元職員がハーグの裁判所で証言するのを妨害するため、同人のパスポートを取り消した。
1月23日には、「裁判所でオーストラリア政府が、元職員の証言を阻止しようとしたことを認めた」と報道されている。裁判所では、判事の質問に対して、オーストラリア側は、「家宅捜索と押収はオーストラリアの国家安全を守るため」と答えたのに対して、東ティモール側も反論、「東ティモールが告訴を明らかにしたのは2012年末のジュリア・ギラード首相時期。オーストラリア政府は東ティモールの意図を知りながら1年近く放置し、裁判間際になって家宅捜索した。裁判妨害以外に考えられない」と述べている。
東ティモールを支持する態度を取りながら、世界最貧国の東ティモール唯一の重要な収入源を狙ったオーストラリア政府の態度は、オーストラリア国内でも批判を呼んでいたが、当時の外相、アレグザンダー・ダウナー氏は家宅捜索事件後に、「オーストラリアは東ティモールに散々よくしてやったのに。それに東ティモールは資源の90%(実際には50%程度)を取ったのに何を文句をいうのか」と語ったことによく表されている。(NP)