【池原照雄の単眼複眼】自動車の外貨獲得にも限界が…日本の貿易赤字過去最大

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船積み風景(広島。資料画像)
船積み風景(広島。資料画像) 全 4 枚 拡大写真

原油・LNGなど燃料輸入増が元凶

2013年の貿易収支(財務省統計)は、赤字額が11.5兆円と12年に続き、2年連続で過去最大となった。昨年は円高の修正もあって輸出額が3年ぶりに増加したが、発電用を主体とする原油やLNG(液化天然ガス)などの鉱物性燃料の輸入額が増え、赤字を膨らませた。自動車は輸出額の増加に最も貢献し、品目別では昨年も揺るぎない外貨の稼ぎ頭だった。もっとも、昨年の輸出台数は小幅ながら減少しており、自動車も12年までの超円高期に、海外への生産移転が進んだことを示している。

13年の日本の貿易は輸出も輸入も増加したが、輸入額が81.2兆円(前年比15%増)と、比較できる1979年以降では最多となって、貿易赤字の最大更新につながった。原油などの鉱物性燃料の輸入は27.4兆円(14%増)と、円安で金額が膨らんだこともあり、輸入全体の3分の1を占めた。東日本大震災前の10年からは約6割もの増加となった。大震災後に原子力発電が相次いで停止、昨年秋からは稼働ゼロとなっていることが主因だ。

輸出金額はトップだが台数は減少した自動車

一方、自動車(部品や2輪車を除く4輪完成車)の輸出額は、10.4兆円(13%増)であり、輸出全体の15%を占め、品目ではトップ。それでも燃料の輸入額の3分の1強でしかない。昨年の自動車の輸出台数は12年より0.4%少ない582万台だった。最大の輸出先である米国の13年の新車市場が1560万台(8%増)と、ほぼリーマン・ショック前まで回復したのを考慮すると、日本車の供給体制(グローバル生産体制)が明らかに変化したことが浮き上がってくる。

リーマン後から12年末に至るまでの超円高期による、グローバル生産の地殻変動ともいえる動きだ。自動車メーカー各社は車両開発や生産技術開発の主体を日本に置き続けるため、トヨタ自動車が年300万台、日産自動車とホンダは同100万台を国内生産のおおまかな「維持ライン」としている。

各社はそれを守りながら、12年に至る3~4年の間に、年数千台といった比較的ロットが小さい規模の車種についても生産の需要地移管を加速させた。また、円高などとともに日本の製造業の「6重苦」に数えられた「自由貿易協定の遅れ」も、日本車の海外移転に拍車をかけることとなっている。

急がれる原発の安全確認と稼働

トヨタは「為替フリーの生産体制構築」(豊田章男社長)の一環として米国生産車の輸出拡大を戦略的に進めている。仕向け地は米国との自由貿易協定が発効している韓国向けなどだ。従来の日本からの輸出シフトであり、こうしたグローバル生産見直しの細かな積み重ねが、今後も日本からの自動車輸出を細らせていく。貿易収支での黒字稼ぎのポジションは変わらないとしても、徐々に自動車のパワーは低下する展開だ。

今年14年の貿易収支は輸出拡大で赤字幅が縮小し、国富の逸失にも一定の歯止めがかけられると見られている。そのためには原発の安全確認を急ぎ、着実に再稼働させることも重要だ。電力エネルギーの不安定さとコスト高は製造業の「6重苦」のひとつ。大震災前より万全の安全対策を施しつつある原発の再稼働が今のように遅々としたままだと、産業界の国際競争力低下を通じて貿易収支改善の足も引っ張ることになる。

《池原照雄》

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