保険リベート廃止で30億ドルの節約 オーストラリア

エマージング・マーケット オセアニア

医療問題研究機関の報告書

 連邦財政赤字から「痛みを分かち合おう」と保守連合連邦政権は予算引き締めを暗示しているが、現実には企業や高所得者層の利益を保護し、中低所得者層に犠牲を強いているとは労働党や緑の党ばかりでなく、是々非々的な立場で発言するコメンテータも指摘するところである。

 先日にはトニー・アボット連邦首相の元保守系保健政策顧問テリー・バーンズ氏が「医者にかかる度に$6の診察料を課し、病院の救急病棟診察にも同様に$6の診察料」を提案し、医師団体や保健団体などが一斉に「病気にかかりやすい低所得者に犠牲を強いる提案」と批判した。バーンズ提案は国家財政にとって4年間に7億5,000万ドルの支出節減になると推算されている。

 ジョン・ハワード保守連合政権時代の1999年に、「患者を公立病院から私立病院に振り向け、公立病院の重荷を軽減する」という名目で30%の民間医療保険医療費リベート制度と保険未加入高額所得者のメディケア・レビー増率などを発足させた。しかし、現実には「リベートがなくても民間医療保険に加入する高額所得者」に「追銭」を与えるだけの制度といわれる上に、保険加入者が自己負担のない公立病院を利用する実態も明らかになっており、現実にはハワード政権の目的を果たしていない上にこのリベートが初年度の14億ドルから2013年度には55億ドルに膨れあがっている。まさしく、ピーター・ダットン保健相がメディケア制度について語った「このまま続けることはできない」状況になっている。

 グラタン・インスティチュートは、メルボルン大学の応用経済社会調査研究所のテレンス・チェン研究員が昨年7月に発表した研究報告を引用し、「リベートを廃止すれば公立病院の負担が年25億ドル程度増えるが、差し引きで年30億ドル程度の支出節減になり、$6の診察料徴収よりはるかに大きな赤字減らし」としている。また、労働党政権が2012年7月にリベートに所得上限を設けたことは「適切な処置」として、「リベートを廃止することが理屈に合っており、財政的にも責任ある措置」としている。ただし、公立病院が医療負担増加に対応して設備や人員の拡大をする必要があるため、リベートを一挙に廃止するのではなく、段階的に縮小廃止することが望ましい」としている。

 しかし、これまでにアボット保守連合政権は民間医療保険保険料の6%強の値上げを認めたほかには高額所得者の負担増になる政策を選んでおらず、チェン報告書の勧告が現政権で取り入れられるかどうかは見通しがない。(NP)

保険リベート廃止で30億ドルの節約

《Nichigo Press》

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