アメリカ人は"占星術"を科学的だと考えている?全米調査の欠点を指摘

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「18歳から24歳までのアメリカの若者の6割近くが占星術を『科学的』だと思っている」米国立科学財団が発表した調査報告書は、アメリカの科学教育の後退を示すデータだと懸念されている。しかし、この調査は「あるバイアスが含まれる」と指摘する声がある。

米国国立科学財団が2014年2月6日に発表した報告書「科学工学指標2014年版」では、米国民の科学への理解、意識を調査した第7章で、疑似科学に対する認識が報告されている。調査では、「占星術は科学的だと思いますか」と質問した。2012年、調査対象のアメリカ人の55パーセントが占星術を「まったく科学的ではない」と回答しており、「いくらか科学的」が32パーセント、「非常に科学的」が10パーセント、「わからない」が4パーセントだという。

前回調査の2010年には「占星術は科学的ではない」と否定的に回答した人が66パーセントで、1985年以来、長らく6割前後の割合を示しているという。しかし、若い世代では占星術を科学として肯定的に見る回答が増えており、2012年調査では18歳から24歳までの若者の58パーセントが「占星術を科学的だと思うか」という質問に「かなりそう思う」「強くそう思う」と回答した。報告書では、教育を受けた層ほど占星術を非科学的と考えるため、この数字は教育機会の減少を示すものと説明している。

アメリカの科学教育の危機、とこの報告書に懸念を示す報道が相次いでいるが、調査の欠点を指摘しているのがオールドドミニオン大学の心理学者リチャード・ランダース准教授だ。ランダース准教授は、自身のブログ「NeoAcademic」で、クラウドソーシングサービスを使った簡易調査により、NSF報告書の設問ではある点が見落とされているとしている。

ランダース准教授は、アマゾンのクラウドソーシングサービス「アマゾン・メカニカル・ターク(MTurk)」を使った簡単なアンケート調査を行った。MTurkでは登録者がごく少額の報酬でも調査に回答してくれる。全3問のアンケートは、1件あたり報酬5セント。100件のアンケートを集めても費用は5ドルですむ。

アンケートの設問は、
1.占星術という言葉を25ワード以内で説明してください
2.占星術は科学的だと思いますか?(NSF設問と同じ)
3.最終学歴を教えてください(NSF設問と同じ)
というものだ。全回答者100人のうち99人(1人は回答が判読できない記述のため除外)を集計したところ、およそ3割の回答者が「かなり科学的」「とても科学的」と回答し、NSF報告書に近い結果となった。簡易調査の方がやや肯定的回答が少ないのは、MTurk登録者は比較的教育を受けた層の割合が高いからではないかという。

次にランダース准教授は、1番の設問で「占星術の説明」が正しかったもの、間違っているものを分け、それぞれ科学的と考える回答の割合を確かめた。すると、まったく比率が変わる。占星術を正しく説明した回答で、かつ「科学的」とした割合は13.5パーセントに低下する。占星術の説明が間違っており、かつ「科学的」とした割合は20パーセント強となる。占星術の誤った説明として「占星術とは、星と宇宙に関する学問である」「占星術とは、銀河と星、その運動に関する学問である」「占星術とは星と他の天体の科学的研究である」といった回答が見られた。正しく回答した例としては「星と惑星の位置から運命や人生の出来事を判定しようすること」などがある。

この調査は、占星術を「科学的」と回答した人の中に、かなりの割合で「"Astrology(占星術)"と"Astronomy(天文学)"を混同している人がいるのではないか」というランダース准教授の疑問を確認するためのものだ。漢字の表記ではまったく異なるため混同することは考えにくいが、英単語ではよく似ているため、占星術を天文学のことだと思って回答しているというのだ。天体の観測写真やハッブル宇宙望遠鏡を念頭に置いて「科学的ですか」と質問されれば、多くの人が「科学的」と答えるだろう。

この先はランダース准教授の推測だが、AstrologyをAstronomyのことだと思ってしまう背景として、特に若者はそもそも「Astrology」という単語にほとんど接しておらず、なじみがないからではという。その理由として、印刷された新聞の購読が壊滅的に減った状況を挙げている。紙の新聞の多くが「星占い」欄を掲載しており、子供のころにそれに接するとAstrologyという概念への入り口となる。電子版ニュースサイトしか読まない現在では、そんな単語は見たこともないというわけだ。「印刷メディアの終焉は、思ったほど悪いことではないのかもしれない」とランダース准教授は述べている。

ランダース准教授の調査は簡易なもので、これによりNSFの報告書が間違っていると結論づけることはできない。とはいえ、隠れたバイアスの可能性を明らかにしたことで、今後の調査でより適切な設問につながるかもしれない。

《秋山 文野》

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