気分は4ドアの『TT』!? 単純ににスポーティということではなく、手のうちに置いておけるコンパクトなボディによる身軽さにそう思わせられた。
調べてみると、かつての最終型アウディ80(B4)~初代アウディA4(B5)あたりに近似したボディサイズ。ただし全幅は現代のA3セダンがグンと広いが、それでも謳われているように1800mmを切る。他方、意外にもA3ハッチバック(スポーツバック)より全高は45mmも低い。なので実車に近寄ると、ちょっとしたクーペかスポーツカーに乗り込む気分すら味わわせてくれる。
「スポーツバック」とはスキンがまったく別モノのスタイリングも思いきりがいい。とくに前から後ろまでパーン!と力強く通したショルダー(運転しながらドアミラーの視界でも見える)とその直下の凹みはポイントだ。突飛なラインは引かず、ディテールもシンプル。コンパクトだがカタマリ感で見せている。これくらいのプレーンさがアウディにはちょうどいいと思うのだが、いかがだろうか?
インテリアはスポーツバックと共通で、コンソールまわりはセダンとしては幾分かシンプル。後席もスペースは最小限。やや低めの運転ポジションがスポーツカー気分(=TT気分)を味わわせてくれ、ちょっと嬉しくなる。車内でネットと繋がる「アウディコネクト」やWi-Fi環境、独特の透明感のある上品な音を鳴らすB&Oのオーディオなど、有用な装備も充実する。
走りにも目を見張る。1.4リットルTFSIエンジン(140ps/25.5kgm)は7速デュアルクラッチとの組み合わせで、スペック以上のパワフルさと柔軟性をもつ。「アウディドライブセレクト」で4パターンの走行モードに切り替え可能。よりヴィヴィッドなエンジン(ミッション)特性が味わえたり、モードにより、気筒休止、コースティング、アイドリングストップを活用した、現代的な省燃費走行もできる。標準の“スポーツサスペンション”は、低速域で場面により引き締められていることが伝わる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。