アトラスVロケット搭載 ロシア製ロケットエンジンを米国生産へ移行か 国防長官が検討を表明

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国防総省の防衛小委員会でロケットエンジンの米国内調達に「検討する」と回答したヘーゲル国防長官。
国防総省の防衛小委員会でロケットエンジンの米国内調達に「検討する」と回答したヘーゲル国防長官。 全 2 枚 拡大写真

2014年3月11日に開催されたアメリカ国防総省 防衛小委員会の予算公聴会で、チャック・ヘーゲル国防長官は、現在NASAや国防総省の衛星打ち上げに採用されている『Atlas V(アトラス 5)』のロシア製第1段エンジン「RD-180」を米国内で生産する検討を開始すると述べた。

アトラス 5ロケットは、2002年の初打ち上げから43回の政府系衛星打ち上げを成功させた、アメリカの主力大型ロケット。米基幹ロケット計画EELVにボーイング社のデルタ 4ロケットとともに採用されている。NASAの火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービター、冥王星探査機ニュー・ホライズンズ、国防総省のNROL防衛衛星打ち上げミッション、空軍のGPS衛星打ち上げなどを担ってきた。ロッキードマーチン社が開発を主導し、ロッキードマーチン・ボーイング合弁会社 ULA(United Launch Alliance)が政府系打ち上げサービスの運用を行っている。商用衛星打ち上げの場合は、ロッキードマーチン商用打ち上げサービス(LMCLS)社が運用を行う。

ケロシンを燃料とするアトラス 5ロケット第1段エンジン「RD-180」はロシアのNPOエネゴマシュが開発し、エネゴマシュと米プラット&ホイットニー社の合弁企業RD AMROSSを通じて販売、アトラス 5ロケットに搭載される。アメリカの防衛衛星打ち上げに使用されるロケットの基幹部品、第1段エンジンがロシア製であることに対しては以前から議論があった。3月初旬にも、もEELVへの参入に関して米上院で公聴会が開催された席上で、スペースX社のイーロン・マスクCEOが「ファルコン9ロケットはすべて米国内で開発、製造されたオール・アメリカン・プロダクトだ」と、海外製エンジンを採用したアトラス 5に批判的なコメントを述べている。

11日の公聴会では、アラバマ州選出の共和党 ロバート・アデルホルト議員がウクライナの状況について前置きしたのち、「米国内でパワーのあるロケットエンジンを開発できる力があると実証するべき時では」と質問した。ヘーゲル国防長官は、「ロケットエンジンとロシアとの関係について言及されているのですね」と確認した後に「この件について検討を開始すべき時だと考えています」と短く述べた。"検討"の詳細や時期については明言しなかった。

3月13日にこの質問についてロイターが報じた記事では、ULA社のマイケル・ガスCEOは、ULAが2016年まで2年分のRD-180エンジンを確保しているとコメントしたという。そのため、ただちにアトラス 5ロケットの打ち上げに影響が出るわけではないと見られる。また、プラット&ホイットニー社はRD-180エンジン製造に関するかなりの情報をすでに獲得しているといわれ、生産移行の実現性はある。しかし、アトラス 5製造を担当するロッキードマーチンは、主力部品である第1段エンジンの調達先変更という大きなリスクを今後強いられることになる。

《秋山 文野》

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