4月1日からの消費増税で、タクシー業界の一部にとまどいが広がっている。
消費税が5%から8%に引き上げられるため、タクシー事業者の多くは、運賃の引き上げを決めた。例えば、東京23区と武蔵野市・三鷹市では初乗り710円から730円に、大阪市では660円から680円に値上げする。
燃料費の高騰などで、消費増税転嫁を歓迎する流れがある一方で、個人タクシー事業者や運賃で差別化を目指す一部法人タクシー事業者は、実態にあった運賃設定ができないと反発を強めている。ある個人タクシー事業者は、こう訴える。
「利用者が減少し個人タクシーの大半は売り上げ1000万円以下の免税事業者。消費税分を転嫁をする必要がない。だから、710円の運賃を維持したいが、法律がそれを許さない」
大都市圏など全国155の地域は、タクシー事業者が従うべき料金の幅「公定幅」を、国土交通省が示す届出運賃制度だ。同一地域同一運賃ではないが、指定地域以外のように個別申請は認めていない。同省が消費増税を想定した公定幅運賃を示したのは、2月28日のことだった。
多くの個人タクシーが使う排気量2000ccを超える大型車運賃の4月1日以降の公定幅(初乗)は、東京23区などでは730円~770円。大阪地区では680円~700円と決められた。
そのため現行の下限運賃を採用している事業者は、消費税を支払う必要がない個人タクシーでも現状の運賃を値上げせざるを得ない状況に陥っている。
さらに、法律では、国交省が定めた料金の幅に運賃が納まっていない場合、事業者に対して変更命令が発令される。従わなければ60日の営業停止、さらに抵抗すると、最終的には事業免許の取り消しを定めている。
「値上げしないと法律で事業免許を取り上げられてしまう」と困惑する事業者に対して、同自動車局旅客課はこう解説する。
「運賃の選択は公定幅の中では自由だ。(事業者が)下限運賃にこだわる必要はないし、ペナルティは条文を守るためにある」