【BMW X5 35d 試乗】静粛性とスムーズネスを持ち合わせながら怒涛のトルクを発揮…中村孝仁

試乗記 輸入車
BMW・X5 35d MSport
BMW・X5 35d MSport 全 13 枚 拡大写真

ディーゼルエンジンが臭い、トロい、汚いはもはや過去の話。今や、最新のテクノロジーによってそれは地球環境を守り、エコカー減税の対象車なのである。そんなクリーンなエンジンを積む『BMW X5 35d MSport』が今回の試乗車だ。

このところ、BMWは急速にクリーンディーゼル車のラインナップが充実させている。しかも車種によっては半数以上がディーゼルというケースもある。何故か。やはり思うに一つは乗り易さ。そしてもう一つはランニングコストの安さだ。筆者自身過去2度、ディーゼル車を所有したことがあるが、同じ排気量ならばターボさえ付いていれば、乗り易さは圧倒的にディーゼルが上だ。それは豊かなトルクに起因する。そして輸入車の場合特に、ガソリン車だとハイオクガソリンが要求され、今の価格だとまずリットルあたり160円を超える。それがディーゼルだと130円台で済む。少なくともリットルあたり20数円は安いのだから、特にX5のような車重の重いモデルになると消費燃料も多いからランニングコストにはズシンと響いてくるのだ。これがこの手のSUVでは特にディーゼルが好まれる大きな要因だろう。

さて、X5は先代からこのクリーンディーゼルエンジンを搭載したモデルをラインナップしている。新しいモデルは旧型に対しパワーで+13ps、トルクでは20Nm上回っているが、そんなこと以上に感じられたのが静粛性の向上であった。もちろんエンジン単体での騒音軽減をもやっているだろうが、むしろその侵入を阻む遮音に力が入れられている印象が強い。おかげでエンジンをかけた瞬間から人によってはそれがディーゼルだと認識することも少ない。実際、我が家の家族を乗せてもそれをディーゼルと認識することはなかった。ガソリンユニットと比較して最大トルクは実に160Nmもディーゼルが上。だから、加速感は強烈の一言で600Nmの最大トルクを持つ4.4リットルV8を搭載する『X5 50i』に匹敵するといっても過言ではない。特に高速上では常に最大トルクの守備範囲でエンジンが回転しているケースが多いので、追い越しなどの際はひと踏みであっという間に加速していく痛快さを味わえる。これは本当に癖になる。そしてスムーズネスも6気筒ならでは。その気持ちよさは、最早ガソリン並みといっても過言ではない。これに怒涛のトルクが付いてくるのだから文句なしである。

トランスミッションは8速AT。BMW独特のPポジションをプッシュボタンでこなすフロアシフトを備えるが、そのためにDに入れる時もRに入れる時もレバー横につくプッシュボタンを押さないと入らない。慣れれば問題ないのだろうが、通常のATレバーに慣れていると、戸惑う。同様にBMWが始めたiDriveのダイヤルコントローラーも、慣れるまでにはなかなか時間を要する。今回は1週間乗ってみたが、それでも何度も間違える体たらく。特に地図のスクロールは階層が深すぎる。

ボディは旧型よりも大型化しているのだが、どうもドイツ系のモデルはスマートに作ることを心掛けているようで、ラゲッジスペースの使い勝手がイマイチだ。3人でゴルフに出かけてみたが、やはりゴルフバック3つをスマートに収納することが出来ず、結局シートを一つ倒す羽目になった。また、テールゲートは独特な上下分割型。正直言うと何故この形状にしたのか理由は今ひとつわからない。

ハンドリングはBMWらしくシャープそのもの。走り自体はダイナミックダンピンコントロールによって、その味付けを変更することが出来る。ロールはこの種の背の高いモデルとしては最小の部類で、気持ち良いコーナリングを敢行することが出来るし、不安感も少ない。一方でリアに設定されたセルフレベリング機構の影響か、はたまたエアサスペンションの悪さか定かではないが、時々妙なピッチングが入力されることがあった。いずれにせよ、このセグメントのトップパフォーマーの1台であることは間違いない。

パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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