ハイトワゴン系の『eKワゴン』に対して、『eKスペース』は『N-BOX』や『タント』、『スペーシア』がしのぎを削るモアスペース系に属する新型車だ。
すなわち全高はeKワゴンの1620mmに対して1775mm。これはこのクラスでN-BOXの1780mmに次ぐ高さ。タントは1750mm、スペーシアは1735mmである。
もちろん、リヤは両側スライドドア。スライドドア開口部の寸法は幅590mm、高さ1235mmとクラスの平均値以上。ワンステップのフロア地上高は355mm（タント325mm、スペーシア340mm、N-BOX360mm）と、乗降性にこだわった高さである。
室内空間は室内高が1400mmとN-BOXと並ぶクラス最大値。身長172cmのドライバー基準で前席頭上に最大320mm（タント310mm、スペーシア270mm、N-BOX255mm）。後席は頭上に290mm（タント250mm、スペーシア250mm、N-BOX215mm）、ひざ回りに330mm（N-BOX 385mm、タント365mm、スペーシア315mm）もある。ほとんどボックス型ミニバン並みである。
注目すべきはフロアからシート先端までの高さ＝ヒール段差。その数値は355mmと360mmのN-BOXに並ぶ高さ（タントとスペーシアはともに330mm）。ここが高いほど座りやすく、降りやすいのである。
しかも後席のシート座面長は500mmと、中型セダンの前席に匹敵。ゆったりとした掛け心地が好ましい。
後席のスライド量は260mmとクラス最大（タント240mm、スペーシア170mm、N-BOXスライド不可）。後席の居住空間と荷室の奥行きのバランスは自在で、荷室奥行きは240mm～480mm（後席前端位置）の範囲で調整可能となる。
また、フロアとの段差最小限の荷室開口部の地上高は600mmと、このクラスでもっとも高いとはいえ（N-BOX485mm、スペーシア550mm、タント580mm） ステーションワゴンの平均値であり、重い荷物の出し入れや大型犬などペットの乗降にも無理のない高さと言える。
試乗した標準車のNAモデルは26.0km／リットルの燃費性能。後発なのにタントやスペーシアほどでないのは、開発陣によれば「燃費を追求するより走りやすさ、実用性を重視したため」とのこと。
実際、eKスペースの走りっぷりは素直で扱いやすさ抜群。パワステはeKワゴン同様、微低速から適度に重めで、50km／h程度からさらにビシリと引き締まり、安心感を増すチューニング（カスタムのターボモデルは全般的に軽め）。
eKワゴンと同エンジンながら、実は加速性能も街乗りシーンでは必要十分なレベル。CVTの最終減速比を加速方向に変更しているためだが、さすがにeKワゴンより100kg重いため、中間加速はやや緩慢。高速走行の機会が多いなら、カスタムのみに設定されるターボモデルを検討すべきだろう。
しかし、全高が1775mmあるにもかかわらず、カーブやレーンチェンジでの車体の姿勢変化は最小限（に感じられる）。ペースを上げても前輪の接地感が絶妙で、リヤもしっかりふんばり、想像以上に重心が低く感じられるのが好ましく、走りやすさに直結する。全車標準のフロントスタビライザーの効果は絶大で、車両安定装置＝ASCの介入も適切だ。
乗り心地はこのクラスの中では文句なく快適なほうだ。マンホールや段差の乗り越えもしっとりとこなしてくれる。巡行中の静粛性もなかなかで、80km／h以下であれば気になるのはエコスペシャルタイヤが放つロードノイズが主という具合。
絶対的パワーはともかく、扱いやすく、思いのほか快適で気持ちいい走りが味わえるのがeKスペースなのだ。
ちなみにeKスペースは正式なデビュー前の2月、ユーミンファンの聖地、Surf & Snow in naeba Vol.34 苗場プリンスホテルのブリザーディウム前に、ユーミンのラッピング仕様として展示されていた（アンティークゴールドメタリック／写真参照）。ボクも現場に居合わせたのだが、多くのユーミンファンがeKスペースの前で記念写真を撮っていた。ユーミンと三菱自動車は古くから関係が深いのである。
そんなeKスペースは犬を乗せるにも最適だ。シートには撥水（はっすい）加工が施され、リヤサイドウインドーには直射日光をやわらげ、室内温度の上昇を抑制するロールサンシェードを完備。ペットを後席、拡大した荷室部分に乗せてもクラス初のリヤサーキュレーターによってエアコンの風がしっかり届くからでもある（もちろん、子供を乗せるにも適切だ）。
