『ノア&ヴォクシー』がフルモデルチェンジを受け、魅力的な新型車が登場した。ハイト系ミニバンでは『セレナ』が好調な売れ行きを続けてきたが、モデルサイクル後半になったセレナに代わり、ノア&ヴォクシーが上位に立つのは確実だ。
新型ノア&ヴォクシーは、新パッケージングの採用で室内空間を拡大し、低床・低重心プラットホームで操縦安定性を高め、燃費性能を大きく向上させるなど、いろいろな意味で魅力的なクルマに仕上げられている。
低床プラットホームは大きなポイントで、これによって床面が85mmも低くなり、老人や子供が乗り降りしやすくなった。乗降性の向上には開口部の拡大も貢献している。また床面が大きく下がったので、全高を25mm低くしながらも、室内高を60mmも拡大できた。
全長やホイールベースの延長による室内長の拡大などと合わせ、ライバル車に対して弱点だった室内空間が逆に強みに変わった。
外観デザインは従来のモデルではヴォクシーとノアでやや差がある感じだったが、今回のモデルではノアが良くなったので、両者の差がほとんどなくなった。2段重ねタイプのヘッドライトを継承したヴォクシーの“ちょい悪”というか“毒気のある”外観は引き続き、独特の存在感を示している。
標準仕様とエアロ仕様があるのは今回も同じで、ワイドボディの3ナンバー車となるエアロ仕様は特に強い存在感が表現されている。
外観は全体に大きく見えるようになり、室内の広さをそのまま連想させている。これはセレナが採用していたデザイン手法だが、、ノア&ヴォクシーも見るからにミニバンらしいデザインになった。
搭載エンジンは直列4気筒2.0リットルの3ZR-FAE型。トランスミッションと合わせて基本的にキャリーオーバーながら、中身は大幅な進化を遂げていて、アイドリングストップ機構も採用されたことで、燃費をリットル16.0kmに向上させている。
ミニバンのガソリン車としてトップの燃費というか、セレナのSハイブリッドの最も燃費の良い仕様と同じ数値をガソリン車で達成したのだから、相当な頑張りの成果である。
走らせた印象も好感の持てるものだった。燃費のために走りを鈍くした感じではなく、普通に走って燃費も良いクルマに仕上がっている。アイドリングストップから再始動するときの振動や騒音については、セレナの方に一日の長があるが、ノア&ヴォクシーの仕様も不満を感じるほどではない。
安心感のある走りにも好感が持てた。新開発のサスペンションや低床プラットホームの採用による低重心化が操縦安定性の向上につながっている。背の高いミニバンではとかく挙動が不安定になりがちな部分もあるが、ノア&ヴォクシーの走りはとても安定していた。
新型ノア&ヴォクシーは装備の充実度も高く、ワンタッチスイッチ付きのパワースライドドア、携帯電話のおくだけ充電、進化型のインテリジェント・パーキングアシスト、オートマチック・ハイビームなど、クラス初、トヨタ初の装備がいろいろと用意されている。
残念なのは、先進緊急ブレーキが設定されていないこと。セレナがマイナーチェンジで搭載車を設定してきただけに、ノア&ヴォクシーにとって唯一ともいえる弱点である。
ノア&ヴォクシーには本格ハイブリッド(HV)車の設定もあるが、HV車は価格が高くなるのが難点。大抵のユーザーは、価格の面でも走りの面でもリーズナブルな性能を持つガソリン車で満足できるはずだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。