【ホンダ CBR/CB650F 試乗】ベーシックの原点に立ち返ったパラレル4ミドル…和歌山利宏

モーターサイクル 新型車
ホンダ CBR650F(和歌山利宏)
ホンダ CBR650F(和歌山利宏) 全 65 枚 拡大写真

ホンダの中核となるミドルクラスのベーシックスポーツが、生まれ変わった。

ホンダは600ccクラスを人間にとってのジャストサイズであると考え、1987年にパラレル4の『CBR600F』を放ち、このクラスを浸透させてきた。そして、レース参戦を考慮して600Fを高性能化し、2003年にスーパースポーツ『CBR600RR』を登場させる一方、1998年にはストリート向きにネイキッドの『ホーネット600』をリリース。さらに2007年には、現行の600RRベースのエンジンを搭載する『CB600Fホーネット』に発展させ、2011年にはそれをフルカウル仕様とした『CBR600F』を追加してきた。

新登場の『CBR/CB650F』は、CBR/CB600Fの後継型だ。それも単なる拡大版ではなく、エンジンも車体も完全新設計である。しかも、進化の方向性として、多くのバイクが辿ってきたように価格上昇と引き換えにスポーツ的魅力を高めるのではなく、ベーシックモデルの原点に立ち返ろうとしている。

エンジンは、余裕のトルクを得るため、ストロークを3.5mm拡大。最高出力を600Fの102psから83ps(欧州向きは87ps)に抑え、扱いやすさを重視する。

フレームは、600Fではアルミ重力鋳造式のモノバックボーン式だったが、650Fはスチール製のツインスパータイプのダイヤモンド式だ。600Fのバックボーン式は、ハンドリングがナチュラルで、軽量でマスが中央部にあるメリットがあったが、これはコストも踏まえた現実的な選択と言える。

付け加えると、600Fはイタリア生産だったが、650Fはタイ生産で、そのことを前提にした設計を受けている。これらにより、価格を抑え、現実的に楽しみやすいモデルとしているのだ。ただし、国内モデルはタイではなく、熊本工場生産となる。600Fは正規販売されず、輸入車として流通していたが、新しい650Fは国内市販車として市場投入される。フルカウルのCBRとネイキッドのCBが基本を共用し、ライディングポジションの違いにより車両性格を絶妙に味付けしているのも、従来型600Fと同様だ。

さて、跨ったCB650Fは、世界戦略車らしく、ライポジもネイキッドの標準形である。ハンドルが国内専用車のように絞られていることも、ストリートファイターのようにワイドに開いていることもなく、アップライトに自然体で身構えることができる。足着き性は、このクラスとしては並で、良いと言えないにしろ、決して悪くない。ただ、跨り、傾いていた車体を起こすとき、600Fより重いと感じなくもない。わずかな重量増や、フレームのマスが外側に張り出しているせいだろうか。とはいえ、『CB400SF』をほんの一回り大きくした程度の感覚だ。

アイドリング回転のままでもスルスルと発進。力強い低回転性能のおかげで、バイクを扱うことに確信を持て、ホッとさせられ、低速での取り回しもしやすい。ハンドル切れ角が十分にあり、ステアリングの動きもニュートラルなので、その点でも扱いやすい。これはベーシックモデルにとっての基本のはずで、取り回しもスポーツなのである。低中回転域トルクは十分かつ過剰でもなく、街中にすんなり溶け込める。しかも、トルクは高回転域に向かってよどみなく立ち上がっていく。やはり、ストリート向きの特性だ。ただ、太いトルク感が災いしてか、鼓動を振動っぽく感じることもあるが、不快というほどではない。

コーナリングは、マシンに逆らうことなく、むしろ合わせるように、スロットルワークも含めてメリハリを付けていくのがいい。やはり、その意味でも、楽しさを訴えているかのようだ。マシンからインに向かって切り込んでいこうとする嫌いもあるが、それをも方向転換に生かす気持ちでいた方がいい。一方のCBRは、セパレートハンドルが装着され、グリップが前方低い位置にある。軽い前傾姿勢になるが、決して先鋭化しておらず、オールラウンダーと呼べるライポジである。そして、この前傾姿勢を生かし、積極的にタイミング良く前方に体重移動することで、旋回性を引き出していくことができる。その意味で、スポーツ性が高いと言えそうだ。

CBR/CB650Fは、趣味の道具にとどまらず、“使える”ことを第一義にしているバイクである。

《和歌山 利宏》

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