【インタビュー】「マツダコネクト」は日々進化、10年後を見据えナビ開発を…NNG代表

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インタビューに答えてくれたNNGのCEOPeter Balogh(ペーター・バロフ)氏 
インタビューに答えてくれたNNGのCEOPeter Balogh(ペーター・バロフ)氏  全 10 枚 拡大写真

新型マツダ『アクセラ』に搭載され話題を呼んでいるテレマティクスシステム「マツダコネクト」。その中核となるナビゲーションを開発しているのがハンガリーに本社を置く「NNG」だ。2014年中に日本オフィスを名古屋に置くと発表したが、日本市場にかける意気込みを、NNGのCEOであるPeter Balogh氏に伺った。

NNGの創業は10年ほど前で、現在は16社のカーナビメーカー経由で30以上のカーブランドに提供するまでに急成長を遂げた。全世界トップ10の自動車メーカーの内、7社がパートナーになっているという。

---:創業から10年で急成長されましたが、その秘密はどこにあったと思われますか?

Balogh:我々は幸運だったと思います。最初は消費者向けのPNDでナビゲーションをスタートさせましたが、当時の競合他社は(地図の表現として)見た目をあまりに気にしなかった。我々はゲーム会社としてスタートしたというバックグラウンドがあっただけに、「地図の表現や使いやすさにこだわるべき」との哲学がありました。それが結果としてユーザーに受け入れられ、ここまで成長できたのだと思います。

---:失礼ながらハンガリーからこれだけのカーナビメーカーが育つとは意外でした。

Balogh:仰るようにハンガリーは人口が約1000万人程度の小国です。国内市場はほとんどないに等しいわけで、だからこそ最初からグローバルな視点で開発を行うことを決めていました。(カーナビで使う)言語の問題もそうですし、文字についてもグローバルな視点で開発することが必須と考えました。社員数は総勢600人ほどですが、ビジネスは168か国で展開しており、NNGの純正カーナビシェアは欧州、北南米、アフリカに限ると26%(2013年)にまで達しています。

---:社員の方はハンガリー人が大半なんでしょうか?

Balogh:いいえ、ハンガリー人は全体の約半分ほどです。次いでイスラエル人が多く、ここまで成長できたのも、数学的な分野で得意なハンガリー人と、商業的な才能に富むイスラエル人とで力を合わせて努力した背景があったと思っています。今では、持ち株会社として、様々な国々から出資を受けているグローバル企業となっています。

---:ナビゲーションは、日本は地図から、欧州は矢印を使うスタイルからスタートしており、日本に参入するにあたって、その違いは感じていますか?

Balogh:その違いは大きく感じていますね。日本の地図は他のどの国にもないスタイルになっていて、とくに違っていると思うのが住所です。番地が必ずしも順番に並んでおらず、こんなスタイルは欧州ではまったく見られません。日本の住所配列を見て思うのは、インドがそれに近いな、ということ。日本は元の番地があって、そこから番地が派生することが多く、それが複雑な住所配列を作り出しているんだと思います。欧州は順番に並んでいるだけでとてもシンプルです。

---:そんな日本の地図だけにデータサイズはどうしても大きくなりがちです。NNG製ナビを採用しているマツダの新型アクセラに採用のナビでは4GBのSDカードに全国の地図データを収録しています。ずいぶんとコンパクトだな、という印象を受けました。

Balogh:NNGは世界で一番優れたデータ圧縮アルゴリズムを保有しています。たとえば我々は北米をカバーするのに1GBで済んでいますが、メーカーによっては16GB~32GBも必要としているところもあります。データサイズをコンパクトにする技術には自信を持っており、その技術が新型アクセラにも採用されているのです。

---:そもそもNNGが持つ優れた圧縮技術とはどんなものなのでしょうか?

Balogh:それぞれに得意分野を持つ複数のコンテンツを集約し、これを一つのエンジンで処理できる技術です。パートナーの要望にフレキシブルに応えることができ、しかも機能や動作の能力アップをスピーディに対応できるのがメリットです。

---:NNGが発表した内容によれば、これまでにもスマートズームやVICSなど24種類の日本向け機能を実装し、さらに今後1年間で25の機能を追加する予定と伺いました。参入して間もないこの時期に、ここまでの対応は驚きです。

Balogh:それを可能にしたのが、一つのエンジン、一つの技術を主体としてカーナビを開発していることです。NNGはそれをグローバルでの共通項としており、それをベースにクライアントの要望に応じたローカライズを展開している。それぞれに求められる機能とか、動作とかを進化させるのは一つの共通したエンジンで対応できます。それが機能や動作の能力のスピーディな進化へとつながるのです。そこから新たなフィーチャーも生まれ、それが(カーナビとしての)大きな決定項になると思っています。

---:新型アクセラでNNGが関わっているのは、ナビゲーションとしてのソフトウェアだけなのか、それとも測位精度に関してもサポートしているのでしょうか?

Balogh:GPS、スピードセンサー、ジャイロセンサーをそれぞれに加味して測位を割り出す方法もあれば、センサーを融合して割り出す方法もあります。車種によっては、ジャイロセンサーが搭載されていないものあり、組み合わせるヘッドユニットによって対応は異なってきます。新型アクセラでは、主としてソフトウェアでの対応が基本ですが、GPS、スピードセンサー、ジャイロセンサーを組み合わせた技術となっています。

---:実は新型アクセラのユーザーからは、特に都市部で利用するユーザーを中心に測位精度の能力向上を求める声が上がっていると聞いています。その声は届いておりますか?

Balogh:その件についてはすでに対応を行っているところです。ハンガリーから技術者が日本に常駐し、その解決のために一刻も早く改善すべく期限付きで努力している最中です。短期間で大きな改善を行うことをパートナーにも約束していますから、ユーザーの方には早い段階でアップデートできるようになると思います。

ソフトウェアのアップデートで機能そのものが進化していくわけで、その時こそ「マツダコネクト」がNNGのナビを採用した意味がハッキリとするでしょう。(カーナビに対する)ユーザー体験は今後大きく変化していくものと思っています。車内で体験できることは10年後は大きく変わっていくのは間違いありません。そうした状況下でもグローバルで展開する我々の技術がポイントになるはずです。

---:新型アクセラの目的地検索データは豊富に感じますし、地図の表現力でも今までにはない進んだ一面を感じます。ただ、市街地図は都市部では充実している感がありますが、地方ではデータを割愛しているような印象を受けます。

Balogh:それはないと思います。データを収録するにあたって、地図メーカーから頂いているデータはすべて漏らさず収録できています。ご質問のデータの差というのは、地図の「注釈(紐付け)」という面でデータを補え切れていない面があるのかもしれません。今後の改善点として挙げておきたいと思います。

---:先日の発表で、「NNGはあくまでホワイトラベルであって自身は明かさない」と仰ってましたが、NNGは今後も黒衣的な立場を維持していくのでしょうか?

Balogh:自動車業界の中では、ホワイトラベルとして私達の身は明かさない方針で行きます。自動車はもともと数万点のパーツで構成されていますが、それぞれのロゴが表に出てきているわけではありません。NNGもクルマにカスタマイズされた製品として供給を行っていくことにしています。クルマによって様々な動きがあると思いますが、我々が持つ技術をベースとして、カスタマイズ化によってすべての自動車メーカーにとって、欠かせない存在になれるようにしたい。これが私達の目標です。

---:日本でもそうなのですが、「カーナビはスマホで十分」と考えるユーザーが増えています。それは、価格が安いことや機能アップが簡単に行えるという利点が強調されているからだと思います。その状況に対してどう思われますか?

Balogh:ナビゲーション自体が大きく変遷を遂げていると思うし、確かにクルマの中にスマホが入ってそれで十分なんじゃないかとの声はあります。しかし、カーナビとして最終的な価値はどこにあるか、クルマとクルマをつなげるインテグレーション機能と、なおかつスマートフォンを取り込む技術と、これを両方実現していくことはとても重要なことだと思っています。

とくに安全性についてはスマホでは絶対に得られないインターフェイスがカーナビにはあります。マツダコネクトでは、ディスプレイ上で展開するのにタッチスクリーンやコントローラーを使う二つの方法を備えています。これらはすべて安全につながるものです。

---:仰るとおりだと思います。マツダコネクトの優れたインターフェイスには、カーナビを使う立場として高く評価したいものがあります。ただ、動作の緩慢さは改善して欲しいという想いもあります。

Balogh:そのように期待していただいているのは嬉しい限りです。我々もマツダコネクトに対して、その優れた一面を十分認識しておりますが、一方でユーザーがインターフェイスで違和感を感じる部分もあるようで、それに関して我々はやるべき作業がまだあるだと認識しています。

---:「マツダコネクト」に対するユーザーの期待は相当大きいものがあります。ぜひ、それに応えていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

《会田肇》

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