超小型モビリティはシェア事業がビジネスの鍵に…フロスト&サリバン 森本氏

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米コンサルティング会社、フロスト&サリバンで自動車・交通部門のコンサルタントを務める森本尚氏はこのほど都内で行った都市間交通に関する講演で、超小型モビリティとカーシェアリングとの組み合わせることでビジネスチャンスが中長期的に広がっていくとの見方を示した。

森本氏は都市間交通に関して「郊外などの発達してきている地域ではなく、都市化が進んだ地域のモビリティ」と定義した上で、フロスト&サリバンが『アーバン モビリティ トリップ トラッキング プログラム』と名付けて実施した調査結果をもとに都市間交通で今問題になっていることを解説してみせた。

その調査の具体的な内容は「例えば自宅から会社に行く際に、どのような交通手段を使い、どれくらいの時間を要したかを、世界の主要23都市で、それぞれ平日、週末にそれぞれ50サンプル、それを1年間通して延べ約2万8000件のインタビューを実施した」という。

調査結果によると「それぞれの都市で実際にどれくらい移動に時間がかかったかを比較したところ、平日で一番時間がかかったのがメキシコシティで2時間34分。逆に一番短かったのはフランクフルトの1時間3分だった。週末も似たような傾向で、平日で2番目に長かったジャカルタが最も長く、2時間57分」としている。

ちなみに調査対象23都市に含まれている東京に関しては「平日の順位はちょうど平均値水準。週末ではグローバル平均の1時間58分よりも短い1時間30分だった」。

一方どのような交通手段を使っているかをグローバル全体でまとめたところ「車やバイクを使ったパーソナル移動が53%、鉄道など公共交通機関が26%、両方使うが13%、徒歩または自転車のみが8%。これは平日、週末であまり差はないが、どちらかというと週末の方が、より個人移動の割合が多くなっている」という結果になった。

都市別の内訳では「東京は公共機関を使う割合が高く、ロンドンやパリなどと近い水準になっている。モスクワにいたってはさらに公共交通機関をよく使っている。逆にほとんどパーソナル移動しているというのがヨハネスブルグ、ロサンゼルス、シアトル、クアラルンプール」となっている。

次に公共交通に関してどのような不満があるか聞いたところ「まず注目すべきはノーフラストレーションと答えたのがわずか7%で、ほとんどの人が不満を持っているということ。その具体的な中身は非常に混んでいるとか遅い、臭い、汚いということで、公共交通機関に対するイメージは良くない」という。

これらの結果をもとに森本氏は「こうした悪いところを補ってくれる、インテグレートしてくれるプレイヤーというのが都市交通で今後必要になってくるし、そうしたプレイヤーでてくるとみられる」と予測する。

さらに「電気自動車や超小型モビリティ、さらに交通流の制御、これは政府や自治体側が整備するインフラによって交通流をコントロールする。あとはカーシェアリングといったような車を共有する。こうしたソリューションが注目されている」とみる。

このうち超小型モビリティについてフロスト&サリバンが、セグウェイに代表される立ち乗りタイプ、車いす型、2輪車、4輪車と具体的な事例を挙げて、どれを使いたいかとを調査したところ「2輪、4輪でコンパクトなものについては約50%の人が使ってみたい、もしくは検討したいと答えており、一定の需要があると我々は考えている。また3割くらいの人は全く興味がないと答えているが、どちらかというと使ってみたい、興味があるという人の方が多かった。さらに使いたい状況としては通勤という答えが多かった」という。

また森本氏は「カーシェアリングビジネスも世界的に伸びている」とみる。中でも「日本でも急速に伸びており、世界の中で日本の会員数は米国に次いで2番手につけている。しかも日本での会員数は2011年に7万3000人だったものが、14年1月時点で47万人と、6.4倍に拡大している」と分析。

その上で「カーシェアリングを展開している各社とも今後も順調に伸びると予測しており、2017~18年までは今のペースを維持していくと考えている。日本の都市交通という意味では、東京を始めとする政令指定都市を中心にビジネスチャンスはある。ただしカーシェアリング事業単体で黒字を出している企業は今のところない。基本的には先行投資が大きく、会員を集めるための広告宣伝など経費がかかる。だが今後2~3年も非常に伸びていくので初期投資を回収する時期に入っていくので、黒字も見えてくる」と予測する。

ただ森本氏は「都市によってモビリティ自体が多岐にわたっているので、あるビジネスモデルを様々な都市に適用するのは難しい。その都市に応じたモデルを見極めて提供することが大事」とも指摘し、「交通移動に対するフラストレーションに対しては、超小型モビリティや電気自動車、あるいは燃料電池車といったソリューションにカーシェアリングを組み合わせたものは、都市交通においてある程度のビジネスチャンスが中長期には広がっていくとみている。さらに使用するエリアを限定すれば自動運転とも相性が良いとも考えている」と締めくくった。

《小松哲也》

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