【中田徹の沸騰アジア】ASEAN進出の上海汽車、壮大な計画と目標の行方は

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東南アジアにおける中国ブランドの新車市場シェアは2013年時点で1%に満たない。東風汽車や奇瑞汽車、吉利汽車などが進出済みだが、販売台数は伸びていない。ブランドイメージが芳しくないことが最大の理由だろう。

多くの中国メーカーがASEAN市場を攻めあぐむなか、上海汽車がASEAN攻略に乗り出した。先鋒を任されたのはグループ傘下の英国ブランドだ。

タイで上海汽車がMG6を生産開始

2014年6月4日、中国大手・上海汽車(SAIC)とタイ有力財閥CPグループの合弁会社、SAICモーター・CPがタイ東南部のラヨン工場で第1号車の『MG6』をライン・オフ。6月19日にタイ国内でMG6を販売開始した。今後、MGブランドの小型ハッチバック『MG3』『MG5』をラインアップに追加するほか、中国独自ブランドの小型トラックやバンを投入する計画で、数年以内に7~8車種を展開する形になる。マレーシア、シンガポール、インドネシア、オーストラリアなどの右ハンドル車市場への輸出も予定されており、ASEAN開拓のハブ拠点となる。

また、乗用車生産促進策「第2期エコカー・プロジェクト」への参加を申請しており、2018年までに新開発の小型乗用車を投入する計画。「エコカー・プロジェクト」は参加メーカーに年間10万台の生産規模を求めているが、SAICモーター・CPは既にチョンブリ県で80万平方mの工場用地を取得しており、2018年までに年産15~20万台の新工場(第2工場)を稼働する予定である。投資額は300~400億バーツ(1000億円前後)と言われ、実現すれば近年のタイでの自動車関連プロジェクトとしては最大級となる。一方、ラヨン工場(第1工場)はパワートレイン工場に衣替えされる計画だ。

現地紙「バンコク・ポスト」などによると、SAICモーター・CPはタイ新車市場でのシェア10%を狙っている。新工場の生産能力(15~20万台)だけをみれば妥当な数字だが、実際の競争環境を考えると極めて野心的に映る。目標達成に向けて、先述のように製品数を7~8車種に増やすほか、販売網の拡充を加速する考えだ。販売・サービス網については、2014年中に30ヵ所に増やす計画だが、シェア10%(年販15万台相当)を獲得するには少なくとも150ヵ所(筆者試算)は必要だろう。ディーラー選定には時間がかかるため、このことがシェア拡大の足かせになる可能性が高い。

MG6はブランドイメージ改善の旗振り役

タイ市場に投入されたばかりのMG6は、上海汽車傘下の英国MGが開発した小型乗用車。セダンとファストバックの2車種展開で、1.8リットルガソリンエンジンとDCTが組み合わせられる。Cセグメントのプレミアムカーと位置付けられ、価格は、セダンが84.8~112.8万バーツ、ファストバックが96.8万~112.8万バーツである。タイのCセグメントで約40%の市場シェアを持つトヨタ「カローラ・アルティス」の1.8リットル車(AT搭載)の価格は83.9~106.9万バーツで、MG6の方が僅かに高い。

MG6を含むMGブランドのタイでの販売計画は2015年1万4000台。ブランドイメージ改善のための旗振り役として英国ブランドを活用する一方で、シェア拡大の牽引役は中国独自ブランドの低価格製品ということになりそうだ。グループ傘下のブランドを活用し、多層的なブランド・製品展開を図ることで、タイ市場を攻略しようという考えだろう。単調な低価格路線でつまずいてきた多くの中国メーカーとは違うブランド戦略を採っている。

鼻息は荒いが…

1000億円規模の設備投資計画、タイ市場でのシェア目標10%…ASEAN攻略を狙う上海汽車の鼻息は荒い。タイ市場でのシェア目標達成はほとんど不可能だろうが、「エコカー・プロジェクト」が認可され軌道に乗れば生産規模を数万台レベルに伸ばすことは可能かもしれない。しかし、採算ラインに乗せ、投資した資金を回収できるまでにかなりの時間が必要だ。上海汽車には、辛抱強さも必要になるだろう。

《レスポンス編集部》

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