【マツダ デミオ プロトタイプ 試乗】国産コンパクトカーの価値観が変わるかも…高山正寛

試乗記 国産車
マツダ・デミオ プロトタイプ
マツダ・デミオ プロトタイプ 全 24 枚 拡大写真

まずは現在のマツダにおけるブランド構築には欠かせない“魂動デザイン”の第4弾としての立ち位置。とはいえ、単にそれまでの『アテンザ』や『アクセラ』を前後からギュッと凝縮したのでは不格好になってしまうのは誰の目にも明らかだ。まさにここがデザイナーの腕の見せ所だろう。

普通フロントにインパクトがある分、リアはおろそかになりがちだが、横から見るとフロントからサイドを経てリアに流れるラインは最終的にグッと路面を蹴り上げるような力強さの造形だ。斜め後ろから見ると現行型の面影も残しつつ、明らかに鍛えられたアスリートのような筋肉美も持ち合わせている。正直、このデザイン、好き嫌いが分かれるかもしれない。しかし世界的にも認知度が向上している“マツダデザイン”はこの『デミオ』プロトタイプで一定の完成を見たと言っても間違いない。

試乗は1.3リットルと注目の1.5リットルターボディーゼル、1.3リットルには5MT、1.5リットルは6MT、そして両車に6ATを設定。もちろんすべてが「スカイアクティブ」の冠を持つ新開発ミッションである。実際の国内販売では少ないとはいえ、世界販売(『マツダ2』として)を考えるとMTは必要。両ミッションとも、ストロークが短く、節度感も十分だ。これに関しては海外で高く評価されるだろう。

1.3リットルは従来同様の軽快感ある吹き上がり、実用燃費も向上しているというから、主力ユニットとしては十分合格点が与えられる。そして注目は1.5リットルのターボディーゼルである。エンジンを始動すると、それがディーゼルであるとわかっていても遮音がうまく効いているのだろう、その音自体には雑味が少なく、ディーゼルのネガティブさは伝わってこない。

発進加速したら、もうこれは“未体験ゾーン”である。「何もそこまで回らなくてもいいのに」と思うくらい5000回転までレスポンス良くスッキリ吹け上がる点も素晴らしいがAT車の場合、低速域からトルクが十分すぎるほど発生しているのでアクセルのコントロールだけで追い越し、加減速がこのクラスとは思えないほどスムーズに行えるのだ。プロトタイプの試乗車にはパドルシフトが装着されていたが、これを使うことで適切なギアをセレクトすることでさらにスポーティに走ることも可能だろう。

ハンドリングに関してはパワステの味付けが中々良い。電子制御(EPS)全盛の時代ではあるが、ライバル車などが「どの領域でも同じ操舵感」なのに対し、切り始めとさらに切り増しした際のしっとりした手応えはチューニングの賜物だろう。これも従来のコンパクトカーのレベルを超えた仕上がりだ。

一方、足回りに関しては不満はないが、もう少しステアリング操作に対してクルマをイン側に向かせて欲しい。曲がるべき方向に対し、対角線上にあるリアサスがもう少し動きを良くすることでスパッとキレの良いハンドリングが楽しめる気もした。

最後に内装関係だが、シートの出来は見事である。サイズだけでなく着座感も上々、ディーゼルのエンジンからの振動吸収性も高い。日々腰痛と戦っている筆者から見ても面全体で包み込むこの作り方はマツダの新しい資産となりそうだ。同時にアクセルペダルが『CX-5』などと同様のオルガンタイプになっていることも好印象である。

また試乗車にはアクセラから導入したインフォテインメントシステムである「マツダコネクト」が装着されていた。システム自体を普及させるためにも標準装備の形を取ってくると予想するが(実際インパネのデザインもそれに合わせた非常にクリーンな印象)、正直アクセラで体験しているレベルではナビ機能は実用にはほど遠い。コンパクトカーでも新しい価値を付加したい気持ちはわかるが、レス設定も希望する。

よく欧州車と比較されがちだが、そういうことではなくデミオ プロトタイプは国産コンパクトカー市場に一石を投じる新しい価値観を持つクルマとして発売を楽しみにすることにしよう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

高山正寛│ ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ会員
1959年生まれ。自動車専門誌で20年以上にわたり新車記事&カーAVを担当しフリーランスへ。途中5年間エンターテインメント業界でゲーム関連のビジネスにも関わる。カーナビゲーションを含めたITSや先進技術のあらゆる事象を網羅。ITS EVANGELIST(カーナビ伝道師)として自ら年に数台の最新モデルを購入し布教(普及)活動を続ける。またカーナビのほか、カーオーディオから携帯電話/PC/家電まで“デジタルガジェット”に精通、そして自動車評論家としての顔も持つ。

《高山正寛》

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