【アプリリア カポノルド 1200 トラベルパック 試乗】疲れ知らずのスポーツアドベンチャー…和歌山利宏

モーターサイクル 新型車
アプリリア・カポノルド 1200 ABS トラベルパック
アプリリア・カポノルド 1200 ABS トラベルパック 全 18 枚 拡大写真

現在、ストリートスポーツとして、そしてツアラーとして、特に欧州を中心に注目を集めているカテゴリーが、1200ccクラスのビッグ・アドベンチャーだ。

ゆったりとした車格とライディングポジションを備え、荒れた路面の走破性が良く、目の位置が高いおかげで視認性にも優れる。またエンジン特性も日常的な環境で強大なトルクを生かしやすく、オフロードを走る機会は稀であるにせよ、現実的に使えるバイクとして人気を博している。

エンジンは車輌性格に合った2気筒が主流だ。欧州有力メーカーの代表モデルは、BMWが『R1200GS』、ドゥカティが『ムルティストラーダ1200』、KTMは『1190アドベンチャー』、さらにトライアンフは3気筒エンジンの『タイガー エクスプロラー』をリリースしており、これらに加わるのがアプリリアの『カポノルド 1200 ABS』だ。

鋼管トラスとアルミ鋳造製のピボットを組み合わせたフレームに、90度Vツインエンジンを搭載する構成は、ストリートモタードの『ドルソデューロ1200』をベースとしており、スポーティフィーリングが受け継がれていることを期待させる。

ただ、跨がると大柄で足着き性に劣るとの印象は避けられない。シート高はドルソデューロの870mmに対し840mmを公称するが、シート幅が広く(その代わり、すごく快適なのだが)、足着き性はむしろ劣る。

公称850mmである他の欧州製モデルよりも劣っている印象で、しかもBMWやドゥカティはローシートが国内仕様車に標準装されることからすると、その点での劣勢は避けられない。これは、オプションで用意されるローシートに注目したいところだ。

ところが、いざ走り出してしまうと、むしろコンパクトな印象。ごく普通の大型ツアラーであるかのような錯覚に陥る。豊かなサスペンションストロークを持つ、大柄な車体ゆえのダルさがなく、タイトなコーナーもキビキビ走り抜けていく。その点で、性格的にムルティストラーダに近いものを感じさせる。

それにパニアケース装着車であるだけに、挙動を乱したとき少々その余韻が残るにせよ、すぐさま安定性を取り戻す。ドルソデューロという秀逸な素材のおかげもあろうが、この安定性に貢献していると思われるのが、スムーズなエンジンとカポノルドの大きな特徴でもある「セミアクティブ・サスペンション」である。

とにかく、エンジンはスムーズで扱いやすい。タイトなコーナーでの進入から脱出で、減速から加速がスムーズに繋がり、車体も安定。ビッグツインにありがちなトルク変動に気を使うこともない。燃料噴射装置に設けられた吸気圧センサーが、有効に生かされているようだ。また、そのエンジンはワイドレンジにフラットなトルクを発揮し、シフト操作に気を使うこともない。

そして、セミアクティブ・サスペンションは、走行状態に合わせて減衰力を瞬時に最適に変化させていく。低速走行で友好的に姿勢変化しても、速度が上がるに従い、走行条件によってしっかり踏ん張るようになり、スポーティかつ安定性も高まる。

BMWやドゥカティが、ボクサーツインやLツインといったアイデンティティを執拗に主張してくることからすると、このカポノルドは個性に乏しいと言えないこともない。でも、それゆえ快適で疲れ知らずで、スポーティにして扱いやすいことも、また事実である。

和歌山利宏|二輪ジャーナリスト
1954年生まれ、1975年にヤマハ発動機に入社し、様々なロードスポーツバイクの開発に携わり、テストライダーも務める。また、自らレース活動も行ない、鈴鹿8耐第5回大会では4位入賞の成績を持つ。現在は二輪ジャーナリストとして執筆活動、ライディングインストラクターなど多方面で活躍中。

《和歌山 利宏》

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