【86 TRD 14R-60 発売】目指したのは“クルマと対話できる”車両

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86 TRD 14R-60
86 TRD 14R-60 全 19 枚 拡大写真

TRDが創立60周年を記念して10月6日に発売したコンプリート車両『86 TRD 14R-60』。車両価格は630万円で、限定100台。その価値はどこにあるのか「乗らなければ分かりません」とのことで、富士スピードウェイのジムカーナコースで試乗した。

エンジンはほぼベース車のまま

試乗する前に、まずは車両コンセプトについて、TRD 商品事業室 室長の清水一之氏と、技術グループ 主査の石橋 浩氏に話を聞いた。

清水氏によれば、今回の14R-60は、「ストリートからサーキットまで一本でつながった」モデルだ。エンジン本体はほぼノーマルで、最高出力はベース車と同じ200psだが、ステアリング操作に対してリニアに反応するなど、ドライバーとクルマが対話できる車両に仕上げたという。

それを実現するために目指したのは「バランスのとれた強固なボディ」だ。その根拠となったのは、TRDが研究用に作った高性能実験車両「グリフォン コンセプト」。86をベースに、エンジンは最高出力230psのライトチューンとしながら、シャシー性能と空力性能を突き詰めることで、筑波サーキットで58秒407を叩きだしたサーキット専用車だ。今回の14R-60には、グリフォン コンセプトで得た知見や技術がフィードバックされている。

ブレースによってボディをバランスよく徹底的に補強

一方で、14R-60はTRDこと、トヨタテクノクラフトの架装車両とはいえ、全国のトヨタ販売店で売られる車両でもある。架装以外の部分にはメーカーの新車保証が付くという点が、多くのチューニングカーと決定的に違う部分だ。だから土台となるボディには、防錆などの点からガセットの追加といった溶接による補強は入っていない。その代わりにボルト止めによるブレースを効果的に追加することで、86のポテンシャルを引き出そうという考え方だ。

ボディ補強に使われたパーツは全部で14種類。まずボンネットを開けると目に入るのが、フロントサスペションタワーVブレース。ノーマルの86はファイアウォールと左右のサスペンションタワーをつなぐスチールパイプがボルト止めされているだけだが、14R-60ではサスペンションタワーのブレースごとガッチリしたものに交換されている。

さらに前後サスペンションのメンバーやロアアーム等も補強。また、ノーマルの86ではトランクスルーになっている部分は、カーボン製パネルでフタをされ、ここにもV字型のブレースを追加。驚いたのは前後ウインドシールドを一度取り外した上で、高強度ガラス接着剤でボディに再び装着することで、ボディ剛性を高めていること。これはレクサス『IS F』の特別仕様車にも採用された技術だという。

ロールケージがない理由

その一方で、14R-60にはロールケージは入っていない。その理由について清水氏は「一般的なロールケージは(レース等の)レギュレーションで入れる意味が大きく、ボディ補強にはあまりならない。それに乗り降りもしにくくなるし、車重はなるべく軽くしたかった」と説明する。ロールケージは、同じくTRDが架装を手がけているナンバー付86ワンメイクレース参戦車両の「86レーシング」に標準装備されているため、この14R-60ではあえて装備しないことにしたのだろう。

車重については86の標準グレード「G」の20kg増、そして上級グレードの「GT」(いずれも6MT車)と同じ1230kgに収まっている。これだけブレースを追加しても重くなっていないのは、専用18インチマグネシウム鍛造ホイール、カーボン製ルーフパネル、専用フルバケットシートなどで相殺されているからだ。

エアロダイナミクスも極める

ボディ補強と並ぶもう一つの大きな柱がエアロダイナミクス。目立つところでは、カナード付のフロントバンパー、フロントフェンダーのカーボン製エアロフィン、そしてリアのGTウイングやディフューザーなど。それ以外にも、エアロ形状のカーボン製ルーフ、リアウインドウ下端の目立たないフィン(これが効果的だという)、リアトランクスポイラーを追加。シャシー底面にもエンジンアンダーカバーのほか、リアロアアームにカバーを付けて整流を行っている。

当然、これらはレーシングカーなどと同様、CFDを使って設計したもので、揚力を抑えてダウンフォースを発生させるほか、直進安定性も高める。清水氏によればサーキットはもちろん、今回のようなジムカーナコースや、走りだした瞬間からでも効果が体感できるという。

《丹羽圭@DAYS》

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