宇都宮LRT、速達性向上策や市民の理解は…副市長に聞く

鉄道 行政
宇都宮駅東口に建つLRT計画の大きな看板。描かれているのはフランス・ストラスブールのLRTだ
宇都宮駅東口に建つLRT計画の大きな看板。描かれているのはフランス・ストラスブールのLRTだ 全 2 枚 拡大写真

宇都宮市で検討が進む「次世代型路面電車」こと軽量軌道交通(LRT)の導入計画。沿線企業の従業者アンケートでは、速達性が高まれば需要が増える結果が出たことから、快速運転も検討されている。速達性向上策や計画への市民理解などについて、同市の荒川辰雄副市長に聞いた。

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--宇都宮市では「ネットワーク型コンパクトシティ」を将来の都市構造として掲げていますが、これはどういったものでしょうか。その中でLRTが果たす役割、またLRTである必要性は。

荒川副市長(以下敬称略):東西方向の公共交通の「軸」の形成です。ネットワーク型コンパクトシティとは、宇都宮市を構成する各地域の拠点と都心部を公共交通で結び、連携・集約型の都市構造を目指す構想です。今後人口の減少や高齢化の進展が予想される中で、市民の生活の質を維持向上するとともに、行政サービスの質を維持し、提供の仕方を効率化することが狙いです。

基本的にネットワークを担う公共交通機関としては既存の鉄道や路線バスなどを想定しています。この中で、今回の従業者アンケート調査結果でも明らかになりましたが、東西方向の公共交通機関として、路線バスやBRTではピーク時の需要に対して輸送能力が不足します。そこで、一定の輸送能力と合わせて定時性も確保できる一方で、新交通システムなどに比べて建設費を抑えることができる路面公共交通を選択したわけです。

--市は当初、2013年に実施した企業ヒアリングの結果から、自家用車からLRTへの転換率は3.6%と試算していましたが、2014年に実施した従業者アンケートの結果では「快速がなくても利用する」が10.5%、「快速があれば利用する」人を合わせると、19.1%の人が自家用車からLRTに乗り換えると回答しています。この結果に驚きはありませんでしたか。

荒川:私は現場を見ているので驚きはありませんでした。実際に、従業員のうち20%程度の方が借上バスを利用して通勤している企業もあることを把握していましたので。これまで宇都宮市は市営交通を運営した経験がありませんので、市の職員だけで計画すると誤った判断をする可能性も高まります。

そこで、実際に軌道事業の計画や運営に携わった経験がある有識者や運輸事業者などさまざまな方に直接現地を訪れてもらい、助言をいただいてきました。便利な自家用車を利用している人が20%もLRTに乗り換えるわけがないというのが、多くの方々の最初の感想です。

しかし、たとえば清原工業団地を実際に訪れていただき、駅から駐車場まで自家用車で25~30分、そこから就業場所まで10~15分歩かなければならない実態を目の当たりにし、LRTならば天候や時間帯に左右されず駅から20分台で到着できることを説明すると納得していただけます。街区の構成が広大になり、建物と駐車場が分離して配置されると、自家用車が本来持つ利便性が大幅に損なわれる場合があります。気を付けていただきたいのは、今回の自家用車からLRTへの転換率は一般の市街地に当てはめることはできない点です。

--今年行われた従業者アンケートでは、速達性が向上すると需要が大幅に増加するという結果になりました。一方、現行の軌道法(路面電車や都市モノレールなど道路空間の「軌道」に適用される法律)の運用では、最高速度が40km/hに制限されているなど様々な規制があります。どのように速達性の向上を図っていくつもりですか。

荒川:今回事業費を260億円から412億円に大幅に見直しました。その主な要因は需要増による車両編成数の増加や新たな技術基準への対応などですが、この中には速達性向上のための線形や勾配の改良に必要な費用も含まれています。今後は、さらに三つの課題を解決していきたいと考えています。

一つ目は快速列車の運行です。停車する電停の数を減らして時間短縮を図ります。そうすると、前を走る各駅停車に追いついてしまいますので、途中2か所に追越線を設置できるかが課題です。二つ目は制限速度の緩和です。鬼怒川両岸の農用地の区間と工業団地内は実質的に自動車と並走しない専用軌道区間として計画しています。この区間については、40km/hとされている制限速度を緩和できないか関係行政機関と調整する予定です。

三つ目は車両の編成長の緩和です。追越線を設置しての快速運転と速度規制の緩和が実現すると、大幅に需要が増大することが明らかになりました。アンケート結果から導き出されたピーク時の需要をさばくためには、編成長30m級の場合2分半~3分間隔で走らせる必要があります。すると、車両の編成数が増加し、さらに多くの運転士を確保しなければなりません。輸送効率を向上させるため、40m級の導入の可能性を検討しなければなりません。(編注:軌道法では車両の長さが30mを超えると特別な認可を受ける必要がある)

--LRT計画に対する市民の理解は進んでいると思いますか。

荒川:市役所内部で検討した内容は、関係行政機関と調整したうえ、検討委員会でご議論をいただいています。その内容が毎回マスコミでも取り上げられ、近頃は市民からいつ着工するのか、早く宇都宮駅西側にも着手してほしいなどといったご意見も受けています。

そのような声を踏まえれば、LRTを導入するかしないかといった議論を越えて、いつどのように導入するのかといったことに市民の関心は移ってきていると認識しています。一方、一部にLRT導入にまだ慎重な意見をお持ちの方々もおられますので、具体的な疑問点を挙げていただければ、丁寧にご説明させていただきたいと思います。

(取材は9月末)

【荒川辰雄】1964年生まれ。1989年旧建設省入省。福井県、在タイ王国日本国大使館、高知県勤務などを経て、2011年国土交通省都市局街路事業調整官に就任。2013年4月から現職。

【宇都宮市のLRT計画】1995年、栃木県が主導して宇都宮市内と郊外工業団地の間を結ぶ公共交通機関として新交通システムの導入を検討したのがはじまり。2013年3月に宇都宮市は「東西基幹公共交通の実現に向けた基本方針」を策定し、中心市街地西側の桜通り十文字交差点からJR宇都宮駅を経由して宇都宮テクノポリスまでの15kmを全体整備区間とし、そのうちJR宇都宮駅東口から宇都宮テクノポリスまでの12kmを優先整備区間と位置づけた。

同年10月には、隣接する芳賀町が宇都宮テクノポリスから芳賀・高根沢工業団地までの3km区間を延伸し同時に整備することを表明。11月から両市町が共同で「芳賀・宇都宮東西基幹公共交通検討委員会」を設置し、現在検討が進められている。2014年年頭の記者会見で、佐藤栄一市長は今後のスケジュールとして2016年度着工、2019年度の開通を目指すことを表明した。

《小佐野カゲトシ@RailPlanet》

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