【マツダ CX-3 発表】「人とクルマの関係」を追求したニューモデル…誕生の裏側を探る

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マツダ CX-3
マツダ CX-3 全 32 枚 拡大写真

マツダは11月18日(現地時間)、北米ロサンゼルスにて新型クロスオーバー『CX-3』を発表した。『デミオ』と車体の基礎を共通しながらもその派生系ではなく、『CX-5』の弟分でもない、全く新しいラインナップだという同車。その使命と魅力とは一体何なのか。商品本部の富山道雄主査と、デザイン本部の松田陽一チーフデザイナーに聞いた。

◆セグメントにとらわれない自由な車

活況のBセグメントSUV市場。今回、マツダも満を持して投入という形に見えるが、「2012年の開発初期段階では、数車種しか存在していなかった」という。富山氏は「何かをベンチマークにして開発したというよりも、人と車の関係を徹底的に追求して、提供価値をとことん突き詰めた結果、この車に至った」と話す。その価値とは、“最先端のライフスタイルを提案できること”、“純粋にドライビング体験が楽しめること”、そして“パートナーや家族と刺激的な移動体験ができること”の3点。

そのために、SKYACTIV テクノロジーや魂動デザインの基本はそのまま踏襲し、さらにブラッシュアップしたデザインと使いやすさを追求したパッケージングを実現した。「ジャンルで言えば、クロスオーバーということになるが、既存の価値観の中でジャンルや形にとらわれることなく、全く自由な車を作り上げている」と富山氏は語る。

プラットフォームはデミオをベースとしつつも、全長+215mm、全幅+95mm、全高+50mmと拡大したボディは室内空間の広さや乗降性の高さを実現。重心を上げた分、サスペンションの取り付け位置なども変わっている。高くなった重心とロールセンターの位置を合わせることによって、高速でGがかかった状態でも車が安定するよう、きめ細かいチューニングを行った。さらに「デミオより一クラス上の車格帯をイメージしているため、それに見合う質感のある乗り心地を提供すべく、サスペンションブッシュに関しても手を入れた」(富山氏)。

◆日本仕様はディーゼルエンジンのみのワケ

注目すべきは、日本に導入されるパワートレインが、1.5リットルのディーゼルエンジンのみという点だろう。その理由を富岡氏に尋ねると、「次の時代のスタンダードとなるような車を生み出したいという中で、あらゆるシーン、使われ方においても満足の得られる車にする必要があった。街乗りでも扱いやすく、郊外でも安心して走れる。このコンパクトクラスで、そのようなダイナミクス性能を実現するために何がふさわしいか考えた結果」との答え。また社会性という面も忘れてはならなかった。環境性能も両立する持ち駒は何か…それが1.5リットルディーゼルターボエンジン「SKYACTIV-D」だったのだ。

「また、ディーゼルエンジンを採用することによって、我々がこの車で先鋭的な新しい提案をしているという一本の筋道を通すことができる。航続距離は実際に1000km以上を達成しており、ユーザーも安心して遠乗りできるし、街乗りだけで一日20km程度の走行であれば1か月間無給油で過ごせるという、経済性や利便性も提供可能だ」(富山氏)。

また、エンジンは一種ながら、FF・4WD・AT・MTの全ての駆動方式の組み合わせを用意した。MT設定の理由は「走りの楽しさを実感し、意のままに操りたいという方の希望に応えるため。エンジン効率や走りの良いところを選択してもらえる。AT任せというよりも自分が主体になって気分に合わせて走りたいという人の選択に対応した」(富山氏)のだという。

また、「トルクがあるので、MTでも運転が苦にならない。ルーズなクラッチのつなぎ方をしてもエンストするようなことはほぼなく、車が動いてくれる。非常にスムーズな走り出しが可能だ」とのこと。

4WDモデルは、アクティブコントロールカップリング方式の新世代AWDシステムが、本格的四駆として車両の安定性と走破性を保証する。

◆魂動デザインの可能性を示すブックエンドとして

デザインについてもその役割は明確だ。『ロードスター』の対極にある、ブックエンド。「魂動デザインの元となる“生命感”という軸はブレない。同じ生き物であるというシンパシーを感じて欲しいという思いは根底にある。その中でもロードスターは“艶”、“色気”を感じさせるスポーツカーとして、エモーショナルなデザインを施している」と松田氏は言う。

一方、CX-3が持つのは“凛”のイメージだ。「アスリートが試合前に臨む直前の姿や、動物が獲物を捉える寸前の集中した状態のような、凛々しさを表現した。『アクセラ』や『アテンザ』は、その中間で様々な表現を混ぜながらセグメントに最適なデザインをしているが、この車(CX-3)では一番端の部分をやりきった」(松田氏)。

そのため、直線的なラインで全体に緊張感を持たせた。リアビューはブラックアウトし、実際のサイズ以上の印象を与える。「通常、魂動デザインのDピラーは全体の流れを受け止めるような役割を果たしており、そのピラーをリヤタイヤに対してどのように力が入る配置にするか悩むが、今回はコンパクトな中で非常に伸びやかな表現をしようとした、というのがブレイクスルーのポイントとなった。よってルーフの流れは下に落ちず後ろに流れるようなデザインになっている」(松田氏)と明かした。

魂動デザインの中で“目”として重要な要素となるヘッドランプにも趣向が凝らされた。デミオから採用されたランプの中に固まりが刺さるような大胆なシグネチャーウィングの表現を踏襲。そのシグネチャーウィングの下面にLEDの4灯ランプを仕込んでいる。

「光源は一つだが、レンズの中を光が走り、一つのグラフィックとして見えるように均質な発光を実現した。アクセラは奥に点々とLEDが並んでいるのが分かるが、CX-3では線の固まりで見せている。眼光の鋭さが印象づくように処理をした」(松田氏)。

◆エモーショナルに訴えるインテリア

インテリアでは、デミオと同一の基本構造を逆手に取り独自性を表現した。

「実はユニークに変えられる範囲は10mm前後だった。その中で新しい形をつくらなければいけない。なので、大きな形は一緒にし、質感やユニークさを表現できる細部に徹底的にこだわった」(松田氏)。

メーターフードはソフトな表皮巻を採用した専用品を起こし、ステッチを入れ込んだ。ドアトリムにもアルミ質感のパネルを挿入。「シートにも細かい線が入っていたり、普通に開発をやっていたら、そこまでやるか! というようなところまでやらせてもらっている」と松田氏は笑う。

赤のステッチは「エモーショナル」を表現した。革のパイピング、布、ソフトパッドの樹脂やルーバーリングの塗装など、色々な素材が混在しているが、全て同じカラーを採用している。

「少し青に振ったような、大人もグッとくるダークレッド。その色を探すのに、100以上のサンプルを用意して厳選している。赤を使わずに綺麗にまとめるという手もあった。黒と白のツートンで綺麗に質感良く。しかし、それでは先鋭的なカスタマーに“何か新しいことやってるな”と感じてもらえない。もう一つ、我々から“このコーディネートはどうだ!”と言えるようトライした」と松田氏は語った。

《吉田 瑶子》

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