【ボルボ V40 T5 Rデザイン 試乗】V8並のトルク感、シャープで懐深いハンドリング…中村孝仁

試乗記 輸入車
ボルボ V40 T5 Rデザイン
ボルボ V40 T5 Rデザイン 全 19 枚 拡大写真

80年代より特にレースへ積極的に出場するようになったボルボ。当時から少しづつハイパフォーマンスカーを世に送り出してきたが、今回の『V40 T5 Rデザイン』は、史上最も完成度の高いボルボ・ハイパフォーマンスカーだと思う。

去年だって、V40 T5 Rデザインというモデルは存在した。だが、エンジンもトランスミッションも異なる。去年のモデルに積まれていたのは直列5気筒2リットルターボ。ボルボの5気筒エンジンといえば、91年にデビューした『850』に搭載されていたものだから、進化を続けたとはいえ、ベースはすでに24年近くたっている。機械と電気、電子部品は新しければ新しいほど進化の度合いが高い。とりわけ電子部品など、PCや携帯を見ればわかる通り、半年もたてば場合によっては過去の遺物になる。それだけ新陳代謝が激しいから、どうしても常に新しいものを追い求める結果になるわけである。しかし、エンジンの開発はおいそれとはいかない。

この最新のボルボに搭載されたエンジンは、Drive-Eと名付けられた去年ボルボが完成にこぎつけた自社開発の4気筒である。長い将来を見据え、今後はすべてこの4気筒がボルボ各モデルの心臓になる。勿論排気量を変えたり、シリンダーの数を減らしたりということはあっても基本はこれ。だから、生産性やコストを考え、使用部品の多くがガソリンとディーゼルで共有している。全パーツの25%は完全にディーゼルと同じものを使っているというから驚きだ。そしてこれをベースにターボを付けたり、スーパーチャージャーを付けたりして大きなモデルにも対応している。因みにツインチャージャーはすでに完成しているが、ボルボは何とこのエンジンにターボを3つも装着して450psも出すエンジンを開発しているというから恐れ入る。

単にパワーを出すだけでなく、効率もすこぶる良く、このクルマの場合245psのパワーと同時に、JC08モードで15.1km/リットルの燃費も達成し、平成27年度の燃費基準をも達成。取得税60%、重量税50%の減税措置が受けられるのだ。

もちろん、パフォーマンスに関しては当然ながら先代の5気筒を上回っている。そしてこのエンジンと組み合わされるトランスミッションは、従来の6速から8速に進化した。供給するのは我が国のアイシン。従来の6速もアイシン製で、試乗する限り横置きの多段トランスミッションとしては、やはり最高の出来栄えである。何を言いたいかというと、これより1速多い横置きの多段ミッションが、ドイツの会社で作られ、アメリカのモデルとイギリスのモデルに採用されているのだが、それよりも全然いいと言いたいわけである。

乗り出してすぐは低速で比較的突き上げ感のあるサスペンションに、これくらいは仕方がないのかな…と思いながら乗っていたのだが、そう感じたのはものの10分程度。すぐにこんなもんだろう…から、なんだ、OKじゃない。そして、この硬さは必要だよね…に変わっていった。

新しい4気筒ターボユニットは、低速から踏み込んで行った時のパワーの立ち上がり感が素晴らしく良い。最近、極低速からトルクが立ち上がるので、多くの場合性能が良くてもそれを感じさせないエンジンに仕上がっているケースが多いのだが、このエンジンは素晴らしくドラマチックな加速感を見せる。しかもパーシャル領域から踏み込んで行った時が凄い。この種のモリモリとしたトルク感はディーゼルならいざ知らず、ガソリン車だとまさにV8程度のトルクがないとなかなか味わえない。

これに応えるハンドリングも実にシャープで懐が深い。かつてボルボはボーリングカー、即ち「退屈なクルマ」とあだ名されていた時期があったが、今やそんなそぶりは微塵も見せない。

当然ながらアイドリングストップ機構、スタートストップシステムを持つのだが、燃費節減のため、スピードが7km/hに落ちるとエンジンを止めてしまう。13km/hで止めるスズキの例もあるが、問題も多かった。一方ボルボの場合、とりあえず問題は見つからなかった。とにかくかかるのが凄く早い。まさに瞬息でエンジンが目覚める。

仮想敵は『ゴルフR』だろう。メルセデス『AMG A45』と言いたいところだがあちらのお値段は658万2000円。こちらは436万円である。ちょいとパワーではゴルフRに負けるけど、お値段はこちらの勝ち。ホットハッチという使い古された言葉では物足りない上質感もある。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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